令和4年度 新たな課題に対応した人権教育研究推進校としての実践報告について
- 公開日
- 2023/04/17
- 更新日
- 2023/04/17
令和4年度 人権教育研究事業
令和4年度、本校 明石(あかし)市立 大観(たいかん)小学校は昨年に引き続き兵庫県教育委員会と連携して人権教育研究事業に取り組みました。
今日的課題とされる人権問題(児童虐待、DV、障がい者、外国人、インターネットによる人権侵害、性的マイノリティ、新型コロナウイルスなど)に正対し、課題に対する効果的な指導内容・方法などの実践的な研究を行ってまいりました。
研究成果の実践報告(教科、道徳、特別活動、総合的な学習の時間の4領域を中心に)を以下に記載しますので、よろしければご覧ください。
明石市立大観小学校
校長 田中 秀夫
教頭 鍵山 弘史
主幹教諭 松本 創
教諭(人権教育研究推進教員) 高妻 俊彦
明石市教育委員会 学校教育課 学校指導係
主任指導主事 今市 伸
—令和4年度 新たな課題に対応した人権教育研究推進校としての取組—
1 研究当初の児童生徒の状況と課題
昨年度より人権教育の取組を行ってきた中で、今年度は更に社会問題を皮切りに知識的側面から児童の思考を深めたいと考え、学校教育における人権教育の活性化を図りました。具体的には、教科・領域における学びの系統性や専門性を保ちつつ、人権の今日的課題とされている内容を単元計画に取り入れることで、児童が「自分ならこの課題についてこう応える」という展開から児童の思考の深まりを高めた授業づくりを行ってきました。
今日的人権課題を前に、「誰もが暮らしやすい社会づくり」のために、児童が課題解決を図る授業展開を構想しました。そのためには、人権諸課題を自分ごととして捉える態度や、仲間と協働して多面的・多角的に物事を分析・整理し、解決につながる見通しをもつ力や、学び方や習慣を養うことが重要と考えました。そこで、本校では4領域を通して、国際的な人権課題(戦争と平和)、LGBTQ+(多様な性と社会の在り方)、 ネットモラル啓発(情報活用能力の育成)、高齢者と地域がつながる暮らしやすいまちづくりを核とした単元構想を行い、主体的に人権諸課題を解決しようとする児童を育んでいこうとしました。
2 研究テーマ
「未来に向かい今をたくましく生きる子どもの育成 〜自らをみつめ仲間と協働する授業の構築〜」
3 ねらい
児童の自尊感情・自己肯定感を高めるとともに、他者の多様な見方や考え方を受容し合いながら、公正公平な態度で合意形成を図り、共により良い社会を構築しようとする意思をもった人間関係を築こうとする態度を育てる。
4 具体的な取組
(1)研究の概要
(2)各領域における取組
ア 教科における取組
・取組の概要(様式2)教科
・指導案(教科)
・授業の成果物(教科)
イ 道徳における取組
・取組の概要(様式2)道徳
・指導案(道徳)
・授業の教材文及び成果物(道徳)
ウ 特別活動における取組
・取組の概要(様式2)特別活動
・活動内容の報告(特別活動)
・QUテストの結果及び考察(概略)特別活動
エ 総合的な学習の時間における取組
・取組の概要(様式2)総合
・指導案(総合)
5 成果と課題
(1)成果
1点目の成果は、学校行事や特別活動、総合的な学習の時間における活動において、児童自身が目標に正対して自主的に取組を行えたことであります。自分という存在が他者のために役に立てるように思いやりの形を工夫したことが、自信につながる場面として見受けられました。こうした出来事や経験は児童の自尊感情や自己肯定感を向上させ、人権感覚を磨く要因になりえると考えます。特に学校行事(運動会・音楽会など)は、他者との協働なしには成しえないことが多くあるため、仲間と楽しむだけでなく、認め合い、たたえ合い、励まし合うことが成長のきっかけとなります。自分の伸びが目に見えて分かる機会なので、コロナ禍の状況でも学校行事や特別活動、総合的な学習の時間の環境づくりは、たとえ縮小化しても質的向上に努める必要があることを感じました。
2点目の成果は、今回研究した4つのうちの2つの領域である「教科」と「道徳」について、人権の今日的課題となる内容を吟味し、授業の展開や教材について外部の専門機関と連携して授業づくりを行うことができたことであります。専門機関と連携することで、教員だけでは気付くことのできなかった専門的知識や内容における配慮事項、目標に迫るための切り口の変え方など、授業の展開をより専門的・社会的に拡げることができ、切実で課題提起に値する教材文の作成につながりました。実際の授業において児童の議論が白熱し、当事者の思いを何とかして自分たちが汲み取って解決したいという気持ちが伝わってきました。
(2)課題
課題については、教職員の人権感覚向上のためのアップデートが必要なことであります。今回LGBTQ+について理解を深めるうえで、学校教育活動の中にはまだまだ配慮が行き届いていないことが明らかになりました。こうした現状は当事者を思い悩ませ、人格の形成に重要な児童期においては弊害となる可能性があります。これらを解決するためには、教師が現行の取組を見直し、吟味したうえで最適な対応ができるように努める必要があります。さらに、人権課題の解決に関する単元作成の難しさも明らかになりました。人権教育について、大人の視点だけを切り取って進めるだけでは、授業をより深みへと導くことは難しいことが分かりました。教員が教材の価値や内容について十分に教材研究を深め、「何を」、 「いつ」、「どのように」学ばせるのか、スモールステップを踏んだ計画的かつ教科横断的なカリキュラムマネジメントが必要であります。
2年間に渡り人権教育の研究を進めてきたことについて、今後とも喫緊の人権課題に正対した解決方法を探るための授業の提案をして参ります。
今後とも、本校の学校教育活動にご理解ご協力のほど、よろしくお願い致します。