数学教師としての引き出し=授業のネタを増やそう(月刊「数学教育」2025年4月号掲載)
- 公開日
- 2025/03/11
- 更新日
- 2025/03/11
教育情報
1 まずは教師が数学ネタを楽しむ
本書を購入していただき、まずは110本の数学ネタを楽しんでいただくことを願っています。
例えば、「3aは2aより大きいと言っていいの?」というネタがあります。こんなおもしろいネタはないと思います。ネタを楽しむには、まずは生徒の気持ちになることです。このネタが提示されたときの生徒の気持ちを想像してみましょう。
「3aは2aより大きいに決まっているのに、どうしてこんな簡単な問題を出すのだろう」「待てよ。これは『ひっかけ問題』かもしれない」「aという文字が怪しい」「いつもより先生がにこにこしている。何かあるぞ」
このような生徒の反応を予想すると、ネタのよさがわかってくるはずです。そして、こういう反応を授業で引き出すためには、どのような発問をするとよいかを考えます。生徒から素直な意見を出させようとすれば、「この問題を見て思うことを自由に発言してください。解答ではありませんよ。心に浮かんだことを遠慮なく発言してください」といった発問が考えられます。
私はこうした発問や生徒反応を考えることが楽しくてしかたがありません。この本では、こうした気持ちになるネタを発問を含めてたくさん紹介しました。ネタを楽しんでいるうちに、ご自身の定番のネタになったり、オリジナルネタが生まれてきたりするはずです。
2 ネタで数学授業力が高まる
本書を活用しているうちに、生徒から「最近の数学の授業はとてもおもしろいです」「数学の授業が隣の人やグループで話し合うのが楽しいです」といった声が聞こえてくることでしょう。
それはネタを紹介した、私と他の3人(芝田、山本、松井)が、生徒からそのような感想があったネタを厳選して掲載しているからです。4人とも悩んだり、考えたり、話し合ったりして数学の本質に迫っていく生徒の姿を見ることが大好きで、そうした姿が少しでも現れるように日々実践した成果を紹介しています。
110のネタを実践していただくうちに、ご自身の数学授業力が向上してきたという実感を得ることもできると思います。本書は多くのネタを紹介していることも特長ですが、ネタの背景にある数学的な見方・考え方を示していることも特長の一つです。
「このネタなら、こうした生徒の反応があるはずだ」と思って、生徒のつぶやきや話し合いに聞き耳を立てていると、「見つけたねえ。それは数学の本質なんだよ」「『正解ならいい』なんて思っていない話し合いがいいねえ」などと、これまでにない指導言を思わず発してしまうはずです。それは生徒が数学の本質に気づくことができるネタだからです。
授業で微笑む生徒の顔をたくさん見ることができるのは、教師の大きな喜びです。本書を通して、先生方にたくさんの喜びを提供できると思っています。ぜひご購入・ご活用ください。