『新算数科:教材開発の理論と実践』
- 公開日
- 2007/09/27
- 更新日
- 2007/09/27
志水廣:書籍紹介
自慢の本です。教材開発をするときには、これを見てほしい。
教材開発は一種のひらめきによるため開発法にあたる理論がなかった。
本書では筆者自身の教材開発の体験を振り返り、いくつかのパターンを
整理してひらめきが出るまでのマニュアル化を実現。開発事例と実際の
授業の流れを多数解説。教師の教材開発の支援を目指す。
http://www.meijitosho.co.jp/shoseki/shosai.html?bango=4%2D18%2D533317%2D7#mokuji
これからの算数教育の方向として基礎・基本の確実な定着から一歩踏み出してそれらをどのように活用するかが問われてくる。そのためには,教師の手作りの教材が求められる。ただし,教科書を離れた教材がすべて良いかとなると,それは違う。教科書の内容を十分に吟味した上で,また学習指導要領の内容を熟知した上で教材開発に取り組むことが肝要である。このあたりのことは,『算数力がつく教え方ガイドブック』(明治図書)に書いたので見てほしい。
問題はその次である。その次には発展や活用の教材を子どもたちに与えたい。できれば,手作りの教材を与えたい。
さて,ここで考えてほしいのである。ではどうすれば算数科において教材開発ができるのかということである。教材開発した事例集は多くある。教材開発をしたい。だけど,開発法にあたる理論がないのである。この事実については現在にいたってもそうである。なぜなら,この教材開発法については算数教育界においては一種のひらめきにあたることなのでなかなか解明できずにいたのである。では,まったく教材開発の方法について手がかりがないかというとそうではない。
あるとき,私自身の教材開発の体験を振り返ってみた。すると,その中に教材開発の方法としていくつかのパターンが存在することが分かった。たとえば,数値を変えてみるとか,□を使ってみるとかすると新しく教材が開発できるのである。そこで,これらを整理してまとめることにしたのである。なお,ひらめきの部分については,その教材を思いついたときの状況を説明してみることで読者の方々に理解してもらえるのではないかと考えた。これなら執筆可能である。
大学に転任してからも教材開発についての問題意識はあった。これが第Ⅲ章と第Ⅳ章である。第Ⅲ章では,「教材開発の方途」について述べた。さらに,第Ⅳ章では,大学の研究報告でまとめた2つの論文をのせた。すなわち「算数科における教材開発の定義の研究」や「算数教育における電卓の活用教材の開発」である。大学より転載許可がおりたのでここに公開できることとなった。特に「定義の研究」は新しい教材を開発する上での構造について触れている。タイトルはとっつきにくいが,中身は事例から生み出された視点の法則からなっている。あなたが教材開発をするときにきっと役立つはずである。
実践面については,第Ⅱ章で多くの開発事例と実際の授業の流れを解説している。志水が実践したものである。ぜひ教室の授業で試してみてほしい。子どもが沸き立つはずである。
今回,教材開発について理論と実践の面からまとめることができた。このことは,私にとってもまた算数教育界にとっても大きな意義をもつ。後者については,時代の流れが発展や活用に向かうときに,この本が教師の手作りの教材開発の支援となると考える。
最後になったが,今回のまとめを薦めてくださった石塚嘉典氏に感謝したい。本を作る時間的な余裕のない現在,氏の励ましがなかったら日の目をみなかったと思う。ありがとうございました。
平成19年3月吉日 /志水 廣
[志水 廣の公式ホームページ]