大学日記

1月24日(土)13:30より第10回1月セミナーを開催しました。

公開日
2026/02/19
更新日
2026/02/19

社会連携

 1月24日(土)13:30~15:30に、201教室において実施しました。

 講師・コメンテーターとして、東海学園大学 教授 横山 真理先生をお迎えし、「図形楽譜づくりによる音楽鑑賞の授業」をテーマに学び合いました。

 今回は、19名の申し込みをいただき、学び合いを深めました。


セミナースケジュール

◇前半 理論とワークショップ体験

1. 「構成活動」を原理とした音楽授業の理論と実践(20分)

2. 図形楽譜づくりによる音楽鑑賞の体験(40分)

 休 憩 ・ 歓 談

◇後半 授業分析とリフレクション

3. 「構成活動」における見えない世界への洞察

4. 授業分析(30分)

5. 交流リフレクション(20分)


◇セミナー前半

1.「構成活動」を原理とした音楽授業の理論と実践

 最初に、横山先生より理論的な講義を受けました。

(1) 旧来の音楽科授業の何が問題なのか。

 従来の考え方における問題点を整理し、子ども(個)の内面と表現の豊かな世界に共感できる音楽科の授業へ刷新するねらいを語られました。

(2) 新しい音楽科授業の理論

 「構成活動」を教育方法の原理とした音楽科授業として、内面と表現の運動モデルについて語られました。

(3) 新しい音楽科授業の実践として

 (構成活動の定義:「社会的状況において、衝動を起点に、心身を使って相互作用することを通して外部世界に作品を構成し、そのことと連関して内的世界を構成する活動」と定義されている(小島律子(2017)「構成活動」『音楽教育実践学辞典』音楽之友社)。「構成活動」の考え方に基づく3つの授業実践(中学校特別支援学級における横山氏自身の実践を中心に)の紹介

 ① 紙相撲遊びから打つ楽器による音楽づくりに連続させた授業

 ② 琴(和楽器)を使った音楽づくりの授業

 ③ 図形楽譜づくりによる音楽鑑賞の授業<さくら変奏曲>

 

2. 図形楽譜づくりによる音楽鑑賞の体験(40分)

 進め方

― 教材曲 宮城道雄作曲/林千恵子編曲<さくら変奏曲> ―

 ① 主題(主旋律)の図形を決め、選択理由を説明 5分

 ② 映像による鑑賞(演奏/林千恵子)4 分

 ③ 録音を聴きながら図形楽譜をつくる(一段・四段・五段)1 5分

 ④ 作った図形楽譜をグループで交流 15分

 ⑤ 紹介文を書く 5分

 参加された方全員が、上記の流れによるグループワークを体験しました。活動①では、3~4名のテーブルごとに、指定された色紙(〇か□)から各自が選び、色(黄か青)を選んで台紙に貼りました。一人ひとりが選んだ理由をグループで交流しお互いのワークシートを覗き見ながら、言葉を交わしていきます。その後の全体交流では、グループの代表者が、自分の選択理由を話しました。言語化された理由と色紙が貼られた台紙を見ながら「なるほど」の声と穏やかでリラックスした雰囲気が広がっていきました。

 活動③では、音源(一段・四段・五段)を聴きながら、別の色紙を切ったり、貼ったりする活動が進みます。各段の変奏を聴きながら、各自が浮かんだイメージを切り絵しながら貼っていきます。参加者は子どもに戻ったように、真剣に取り組む人、グループメンバーの作業を覗き見る人、様々な反応で楽しい時間が流れます。

 音源は、繰り返し流され、作業はどんどん進みます。しかし、イメージと作業のギャップから「うまくできない!」「あなたの作品すごい」など、各テーブルからは様々な反応が聞こえてきます。

 活動④では、各テーブルで思い思いの感想交流が、和気藹々の雰囲気のなかで進んでいきます。各自が言語化し、人の話を聴き、次第に自身の内面が開放されていくのを感じました。

 活動⑤では、紹介文を書く。横山先生は「鑑賞の授業にはゴールがある」と話され、そのゴールが教室仲間へ紹介文を書くということです。宮城道雄作曲の文化的背景を入鵜f資料から知り、エピソードも含めて紹介文を書く。皆さんも書いてみましょう。「音源を流します」聴きながらお書きください。あっという間の前半が終了です。


 休 憩 ・ 歓 談


◇後半 授業分析とリフレクション

3.「構成活動」における見えない世界への洞察

 前提:子どもは動きながら考える。子どもの心の動きは見えないし、変化する。

 多様な音楽表現の在り方を視野に、〇言語による音楽表現 〇音による音楽表現 〇身体による音楽表現 〇造形による音楽表現 が大切にされます。


4. 授業分析(30分)

 前提:音や音楽を媒体とした表現が中心となる音楽科授業の特徴をふまえる

 〇 どのように記録するか 〇 何を分析資料とするか 〇 どのように分析するか

 〇 分析結果をどのように記述するか

 「実践の授業分析は、大変困難な作業であるが、子どもとその場にいて、学びを組織する実践者が分析する意味は大きい」と述べられました。

(1) 授業ビデオを視聴 それでは、皆さんには「分析資料」をつくる活動を体験してもらいます。授業場面をご覧ください。(岐阜県A中学校特別支援学級)の授業動画の視聴

 授業で活動したある生徒の図形楽譜と振り返りが紹介されました。

(2) 「逐語記録に基づく授業分析」の方法論に依拠した分析―解釈による質的分析―

 言葉・演奏・行動をテキスト化した授業記録(分析資料)の作成をテーブルごとに進める。

各テーブルに準備された授業動画を何度も聴き直して、記録を取っていきます。なかなか骨の折れる作業でした。


5.交流リフレクション(20分)

(1) グループリフレクション

◎ 今日の視点は、「音楽科授業の分析において、内面(思考・イメージ・感情)と表現の連動過程のおける見えない内面の世界をどう洞察するか」でした。各テーブルで、交流してみてください。(10分)

(2) 全体で学びをリフレクション

 < ◎コーディネーター 横山先生 ●参加者 >

時間が来ましたので、各テーブルのどなたか代表をご紹介ください。

● 私たちのテーブルでは、心の中にあるものがなかなか言葉になっていません。しかし、体験し、モヤモヤしているものが、形になることで言語化できる。音は消えていってしまうので、消えていってしまうものが、ここに図としてピタッと着地していることで、私たちも振り返ることができる。また、モヤモヤしている自分でもよくわからないものが教師の呼び水によって、すっきりとした言葉になっていくことが大切だなと感じています。しかし、未だ私たちはグルグルしています。

● 私たちは、すごく楽しかったです。子どもたちは作ること自体に楽しさがあるので、「これが果たして音楽に結びついているのか」という疑問を持ちました。しかし、図形を作成した後に、もう一度曲を聴きながら作品を触っていくことが音楽に触れていくことになっていると感じました。私たち小牧市の音楽科では、音楽を形づくる要素と曲想を結び付ける研究をしてきました。鑑賞においては、音楽的要素と身体表現を往還させながら学ぶ授業にも取り組みました。本日、ご紹介いただいた造形活動と音楽鑑賞の往還のすばらしさも感じ、子どもによっては、どの媒体を使いながら音楽を学ぶのがいいのかを考えさせられました。

● 図形楽譜を使うことで、音楽に苦手意識がある子どもも楽しく学ぶことができたと感じています。今回のワークショップの活動を体験させていただいたおかげで、横山先生がされたように、色紙の形や色は制限しないと、子どもたちの混乱が起きるのではないかとの話がでました。後半の授業記録の作成では、1分程度の記録ができました。現在のAI時代では逐語記録を簡単に作成することは可能だと思いますが、今回のように泥臭く授業を見ていかないと、私の中でしっくりきません。見落とし部分が出てきてしまう。時間がかかっても、丁寧に見ていくことが大切かなと感じました。実際に記録おこしをやってみて難しいなと感じたのは、子どもの行動や判断をどのように表現するのか。グループワークをするときに、ビデオをどのように撮影するかが課題だと感じました。

● 実際、私自身が図形楽譜の作成を体験してみて、のめり込んでしまったので、子どもたちもきっとそうだろうなと感じました。話題になっていたのは「動きながら考える」という活動の中で、音が形になったり、消えていくものが可視化されたりする。小学生の学びを見ていると、思考するときに内言が呟きになりながら考えています。本日の体験はまさに、子どもたちが手を動かしながら考えていることを味わうことができたと思います。

 私は数学科ですが、子どもたちが算数の思考の中でどうなっているかと考えてみたとき、数学的事象を立式するときには、まず、子どもたちは図を使って考えています。そうすることで、量的なあるいは空間的なイメージがつかめてわかっていく。図と思考の往還が生まれていることに気づき、本日の芸術教科の学びとの共通点を改めて学びました。

● 図形楽譜の意味が分かりました。本日のワークショップで私が作成したものは、変奏ごとのイメージ画であって楽譜ではありません。しかし、授業ビデオで拝見した子どもたちのつくっている作品は、楽譜ですよね。Aくんの頭の中にある曲が立体的に表現されていて、だから説明するときに、部分部分を押さえながら、「今ここの部分、今ここの部分」と曲の流れを追いながら説明をしている。これは、楽譜なんだな。画面で切っていないでつながっている。こうやって可視化されるとすごいことだと思います。うまく言語化できない子どもがいる中で、逐語記録だけだったら、言葉で出たことだけしか記録できないが、本日の体験で、画像を見ながら、この絵を差し込みながらとか、子どもが動作したことを記録しながらしていくと、より具体的にこの授業の動きが見えてくる逐語記録ができると感じました。

◎ 今日は、私の研究紹介の導入ということで、活動を詰め込みすぎたなと感じます。本日の内容を2回に分けてすることで、ディスカッションがより活発になったのではないかを反省しています。授業分析では、記録を取って分析しないとわからないことがあるのですが、「何を記録・分析するか」が一番大事だと感じています。授業資料の第一次資料は実践そのものですね。化石分析では、発掘した本物の化石が第一次資料です。授業分析では、現場の授業の場で分析はできないので、録音・録画を肖像権に配慮しながら収集します。録画にしても、自分の見たいものだけをアングルにして切り取って記録します。そうすると第一次資料から遠ざかる。それを逐語記録にすることでもっと離れる。そうした三次資料のようなものから分析をして分かったように論文化することは本意ではありません。(会場大笑い)ですから、授業記録を丁寧に落とし込んでいくかに拘らないといけないと感じています。

 AIによる授業記録テキストはできるかもしれませんが、果たして自分にとって意味があるでしょうか。時間がかかっても、自分ならではの記録を作っていくことは、自分の授業を見る目を養うことになります。本日はありがとうございました。


6.参加された方からの振り返りを紹介します。

◆ 今日のセミナーで学習した中で重要だと思ったことは、子どもたちの内面をどのような方法を使って表現できるようにするか、またどのように見取っていくかについてよく考えました。

 図形楽譜がどのようなものか、体験をすることで少し理解ができました。子供の視点で取り組んでみると、非常に楽しく夢中になりました。ただ、イメージを1枚で表現するような形で作っていたため、映像で見たように部分や流れを表現すると言う形でも、図形楽譜に取り組んでみたいと思いました。

 授業記録では、話した言葉だけではなくて、演奏や行動も含めて記録することに苦戦しました。苦戦をしながらも、丁寧に繰り返し何度も見ることで、目の前の授業に近い授業記録に少しずつ近づいていくのかなと感じました。

 小学校教員の立場でも、研究をする立場でも学びの多いセミナーでした。ありがとうございました。