4月25日(土)13:30より第1回セミナーを実施しました。
- 公開日
- 2026/05/08
- 更新日
- 2026/05/08
社会連携
4月25日(土) 13:30~15:30に、201教室において実施しました。
当研究所シニアフェローの名古屋大学名誉教授 的場 正美先生をお迎えして 「子どもが進める授業を支える教師の考え」 ― 新城市立新城小学校4年社会科「私たちのくらしと道」を通して ― をテーマに行いました。
今回は、38名の申し込みをいただき、当日欠席があり、的場先生を含め37名の方により学び合いを深めることができました。
第1部 的場先生による講義
的場先生の経歴は、複数の大学・大学院で学ばれ、複数の大学で教鞭をとられ、現在も複数の学会の要職を務めてみえます。これまで諸外国(ドイツ・韓国・ブルネイ・インドネシア・北京)の授業研究をされました。最初に、五つの視点から講義を受けました。
① 授業を研究する立場と視点
授業者が「俎板の鯉」の授業研究から教職員の参加型の授業研究へ
教師の指導から子どもたちの問題解決学習へ
〇的場先生の授業研究への関心
・協働し、平等に参加できる学校の授業研究
・子どもを抽象的な個性としてではなく「異なれるものを異なれるものとして」追究する。
・授業を記録する叙述方法の開発➡中間項(発言記録だけでなく子どもがどう考えているのかも含めて)※記録を安易に概念化しない。概念化は飛躍がある。
➡ 多様な視点からアプローチができる授業研究!
② 日本の授業研究:過去と現代
・授業研究の衰退:1980年代(校内暴力、不登校、教師の多忙化)
・新しい学問領域の登場:1990年初期(認知心理学、エスノグラフィー)
・授業研究の再発見(Lesson studies、校内研究による学校づくり)
③ 世界の授業研究と授業分析の意義
・学校改革や教員の質向上に関心の強い研究
専門家共同体(アメリカ)学校改革(イギリス)学びの共同体の導入(インドネシア、中国)
・理論的関心の強い研究
バリエーション理論(ブルネイ)アクションリサーチ(イギリス、スウェーデン)客観的解釈学(ドイツ)
・日本の校内研修としての授業研究
TIMSS(授業の質が高い、校内研修)ビデオ研修(Lesson studyとして認知)WALS(世界授業研究学会)の設立
〇授業分析の意義と課題
・捉える事実の客観化 ・概念化への飛躍の保障 ・コトバによる分節化
④ 授業研究・授業分析の示唆と課題
・教育学との関係
・授業研究の実践的課題
授業を通して直面している諸問題の解決の試み、明日の教育実践の可能性
・実践研究としての課題
・研究手法の開発課題
・授業分析の課題
授業現象の記述言語(記述言語学)を開発する
・研究主体の形成
〇他分野と授業研究 (心理学、言語学、哲学)
〇授業分析からの示唆
解釈は、社会的であると同時に個人的である。
解釈は、動く主体が、動く対象―主体もその対象に内在するー動的性格。従って、解釈されたものと解釈される事実には絶えずズレが生じる。
⑤ 本授業実践の背景
・12次総26時間の授業(1991年10月実施:2月の授業記録)
・授業研究の特徴
複線型学習指導案 単元構造のチェックポイント 座席表 抽出児の設定 授業展開の分節わけ 教師と子どもの発言率 子どもの発言段階
・本授業が12分節にわけられ、各分節がどのようにつながり、展開していくかが図で示され、説明がありました。授業者は抽出した児童が授業の中でどのように変容していくかについて教師の支え、介入について事前に説明を受けました。
2部 授業ビデオの視聴(40分間)
用意された授業記録を読みながら、子どもたちの発言の様子などについて 視聴
休憩をはさんで、テーブルごとに感想交流をする。(15分)
3部 リフレクションと学びの共有
< ◎ファシリテーター的場先生 ●参加者 >
◎ 「授業者の発言回数と介入箇所」について、この授業の発言総数は334発言の内、教師の発言は37発言である。割合は11%。この学校では、「教師の発言回数が50%を切れば、子どもた多くしゃべるだろう」と考えています。教師の発言のほとんどが確認であり、後半に一回の説明がありました。それでは、各グループから発言を聴かせてください。
● 中学校の教師です。圧倒されました。本音でぶつかっている。それは、きちっと調べたうえで話しているからでしょう。途中はDとJの対立場面があったのですが、子どもの発言は最初は私的な「安全」などからはじまり、99番では「市役所の方の発言」へ視点が変わってくる。232番の発言では「市役所の人は願いを訊く」で「はぁ」となり、258番で「法律に基づいてやっているんだよ」から考えが変わってきた。最後、DとJともに「もう少し調べなくては」となり次の学びの意欲につながっている。子どもたちだけで授業が進んでいくことにすばらしさを感じました。
● このテーブルでは、公共福祉と個人の尊厳について語りました。293番の発言から「みんなのために行動した」この辺りから、みんなのために行動した。みんなのために動かなければいけない。といった考え方になっていった。福祉的な考え方と自分の抱えている問題との関係について考えが進んでいったように感じました。
● 子どもたちの話し合いのレベルが高い。最初の話し合いのなかでアンケートが共有されていたのか。感情的な発言から「私は嫌だ」になっていた。みんなの共通の資料からこう考えたい。同じものを見ながら意見が交流する状態にはなっていなかった。しかし、後半は「洋服屋さんは」というように事実をもとに話し合いが進むようになった。最終的には、当初否定していた考えや情報が必要になっていき、学びが絡み合ってきた。
● 教室の子どもたちがかわいらしいなと感じています。お互いを否定しているのではなく、意見が対立している。日本においてお互いの否定から議論ではなくケンカになっていくことがありますが、この教室にはお互いの意見が対立する文化が育っている。よき発表をしようとするのではなく、自分の言葉で語っている。私は「無駄」という言葉が気になっていました。教師の「何が無駄なの?」という問いかけから「努力したのに」「せっかく買ってもらったのに無駄になる」から「その気持ちが無駄になる」という発言をした子供がいました。教師の短い問いかけ「それってどういうこと」によって言葉が生成されていく働きかけがすごいと感じました。
● 教師の出(タイミング)について話し合われていました。わたしも「無駄」という言葉が気になりました。「嫌だ」「無理」という言葉に着目して授業を見ていました。授業のテーマが面白く「民主主義とは何か?」について「ひとり、みんなで、市民、市役所」といった言葉から考えていた。Dさんが強烈ですが、授業の後半に変容していく姿にこの授業の魅力があると思いました。
● まず、この教室で話し合われている問題が、実際の社会で大人が直面する問題に近しいことです。そのことに価値がある。公共の福祉と個人の権利の鬩ぎ合いを扱う授業が、今現在の教室でできるのか。について考えさせられました。最初「無駄」か。でないか。から「嫌か」そうでないかに移り、対立していた構図から、288番の「嫌だけどおもっていたひとがいるけど、変わっていった人がいる」というグレーな考え方が表れて、価値の問い直しをしていく展開が素晴らしいと感じました。
● このテーブルでは、この動画以外のもう少し広く知りたいことについて、副島先生に聴きまくる話し合いになりました。(笑い)この学校では、一つの単元を30時間で作っている。こんなことが現代で可能なのかという疑問がわきましたが、長く単元を学ぶことで、とても大切なことを学ぶことができるのでこういう考え方もあっていいと学びました。私たちは、カリキュラムを重視して何時間完了かで運営していますが、カリキュラムは基本であり、子どもたちが豊かに学ぶことができれば、柔軟に考えていくことができると学びました。
● 肯定的な子どもたちが出ている。DとかJは、一歩間違えれば教室で浮いてしまう存在ですが、そうならないということは、学級の雰囲気が素晴らしい経営がある。一歩引いて参加する子どもやガイド役を任されていた子どもは、この授業をチャイムでまとめてしまう見事さに、教師顔負けの存在でした。また、教師の出場について11%とありましたが、最後、「何を調べようとしている」と論点を整理されていて、次回の方向づけまでされ、ヒントまで準備されています。先を見通した授業デザインに感心させられました。
● 全体として、事実にもとづいた発言が多いと感じました。239番の願いを込められた発言が出て、258番の教師の発言から法律を考えた発言を生んでいます。最初は「無駄」かそうでないかの発言から「嫌」について変化していますが、309番の発言では「嫌だけど無駄じゃない」という発言を生んだこと
◎ 的場先生からのリフレクション
この後、授業者が出張でいないときにも、子どもたちだけで授業を進めていきます。また、朝の会で、ある子どもが「第2東名ができるよ」ということを調べ発表し、「自分たちの街はこの後どうなるのか?」について学級で話し合い、結果をもって「この街がこうあって欲しい姿の考え」を市役所へ提案して、この授業は完結しました。
私がこの授業者にインタビューをした中で、「子どもたちがお互いに非常に拮抗し合う。拮抗が続けば続くほど、それを見つめる子どもがいる」拮抗する子どもの存在がとても大きい。それを見つめる子どもが、心を揺さぶられ、問題解決を自ら進めていく。という授業観を持っています。「拮抗状態が続くことを契機に」拮抗状態を見つめる子どもに、さらなる調査根拠づくりの支援をしているのです。
Dさんは、いつもJさんの意見に反論できず、泣かされていたんです。自分で意見が言えるようにするために、朝の会や授業で司会者を任せました。他の子どもの意見を聴けるようにしたのです。そうすることで、Jさんの言いなりにならない強い子どもに育てたのです。
授業の板書では、意見の対立が表現されています。をれを見た子どもは考えることができます。
授業の良さ、新しい記号が生まれるとき、その授業の中に新しい概念が潜んでいるということです。記号が生まれるということは、今までの記号では知りえないことがあるということです。新しい記号を発見するということは、その授業の中に新しい発見をしていくことです。同じような授業であれば、同じ記号でいいですよね。いくつ記号をつくればいいのかというと辞書をつくるほどですよね。本日はここで終わります。
参加された方からの振り返りを紹介します。
◆ 今日のセミナーで学習した中で重要だと思ったことは、教師の出 よく聞き、よく見極めて、どんな言葉でどのタイミングで、働きかけるのかということを考えました。拮抗というのがひとつのキーワードだなと感じました。
1991年にすでに学びの授業をしていたという事実に驚きました。教師のもつ、深い専門性と、豊かな人間性、子どもとの信頼関係が授業に現れていて、元気と勇気をもらえました。グループや他の参加者の先生方とお話しできたこともとても励みになりました。ありがとうございました。