学園日記

激動の一年をふり返って

公開日
2011/12/22
更新日
2011/12/22

校長室


        激動の一年をふり返って
         −二つの漢字から−
     飛島学園飛島中学校長 位田 学

 あと10日余りで激動の平成23年が終わろうとしています。今年も飛島学園の教育活動に格別のご支援とご協力を賜りありがとうございました。
 さて、例年12月12日の「漢字の日」に、その年の世相を表す漢字一字が発表されますが、今年は「絆」に決まりました。
 私は、「水」と「絆」の二つの漢字で迷いましたが、第一候補を「水」としました。
 東日本大震災の津波による被害、台風による名古屋市や紀伊半島での集中豪雨、タイの洪水など、枚挙にいとまがありません。いずれも、マイナスのイメージばかりですが、実は「水」は私たちの生活にとって最も大切なものの一つです。
 水については、こんな名言があります。
 「水五則」といわれるもので、有名な備中高松城の水攻めを豊臣秀吉に進言した戦国武将黒田如水(孝高)の言葉とされています。
  水五則
  一、 自ら活動して 他を動かしむるは水なり
  一、 常に己の進路を求めて 止まざるは水なり
  一、 障害にあい 激しくその勢力を百倍し得るは水なり
  一、 自ら潔うして 他の汚れを洗い清濁併せ容るるの量あるは水なり
  一、 洋々として大洋を充たし発しては 蒸気となり雲となり雨となり雪と変じ
     霰(あられ)と化し 凝っては玲瓏(れいりょう)たる鏡となり而(しか)もその     性を失わざるは水なり
 この水の有り様は、人の生き様に通じるものがあります。この言葉を私なり解釈して、学園の生徒像にあてはめてみました。
  我流生徒五則
  一、 自分から進んで行動し、周りに好影響を与えられる生徒
  一、 目標に向かって自分を高められる生徒
  一、 困難に立ち向かい、それを乗り越えようとする生徒
  一、 正しく優しい心をもち、他人を許すことのできる生徒
  一、 臨機応変に対応しながらも自分を失わない生徒
 学園では校訓に「確かな未来を拓く」を掲げ、自分自身と自分の所属する社会の確かな未来を拓く生徒の育成をめざして、日々教育活動を行っています。生徒諸君には「水五則」のごとく生き、確かな未来を拓いていってほしいと願っています。
 また、飛島村は水とは深いつながりがあり、この村の歴史は「水との闘い」の歴史でもあります。今年最大の出来事である東日本大震災も、その多くは津波による被害でした。その意味では学園も今回の災害を教訓とすべき点が多くありました。例えば防災教育の見直しです。これまでは地震や火災中心の防災教育でしたが、学園で津波を想定した防災教育を取り入れています。
 第二候補は「絆」です。家族の絆、地域の絆、日本人の絆、国境を越えた絆など、様々な絆が紹介されました。災害は、いつどこで起きても不思議ではありません。この地方でも東海・東南海・南海の3連動巨大地震の発生が懸念されています。まず災害から身を守ること、次に発生から3日間は自給自足ができる備えをしておくことなど、災害発生に備えて今やるべきごとはたくさんあります。
 災害発生時は、自助(自力で)→共助(周りで助け合って)→公助(行政の助けで)という順でしか支援の輪は広がりません。いざという時に子ども達が共助の輪に進んで加われるよう、普段から村や地域の行事に積極的に参加させ、皆さんとの絆を強くさせたいと思っています。
 よく、日本人は熱しやすく冷めやすいと言われます。あれほど熱心だった募金活動も今は昔の感があります。しかし、今も津波や放射能の被害により、元の生活に戻れない人々がたくさんいることを忘れず、昨日と変わらない生活を過ごせることに感謝の気持ちをもたせることに学園では心がけています。
 最後に、来年の干支は「辰(竜)」です。昇竜のごとく学園にとっても皆様にとっても、運気上昇のよき年となることを願い、この一年のお礼とさせていただきます。

                         平成23年12月22日