大学日記

7月19日(土)13:30より第4回セミナーを実施しました。

公開日
2025/08/12
更新日
2025/08/12

社会連携

 7月19日(土) 13:30~15:30に、201教室において実施しました。

 コーディネーターとして、当研究所フェロー 後藤孝文先生を迎え、小牧市立桃陵中学校丹羽浩一先生の社会科の授業を通して「学び合う学びとICTの活用」をテーマに学び合いました。

今回は、12名の申し込みをいただき、講師を含め14名の方により学び合いを深めました。


セミナースケジュール

◇前半 提案授業について

   1.授業者より 1年社会「人々の生活と社会」

   2.ビデオ視聴

   3.テーブルでリフレクション

    ・ 授業から学んだこと

    ・ ICTの活用

   - 休 憩 -

◇後半 リフレクション

   1.全体で学びを共有する

    ・ 学び合う学びとICTの活用について

   2.コーディネーターより


◇ 提案授業について

 後藤先生から、本日のテーマ設定について説明がありました。コロナ下に導入されたタブレット端末が学び合いの授業ではどのように活用されてきたのかを、改めて考え学び合いたいとの確認がありました。

1.授業者より 1年社会「人々の生活と環境」

 久々の1年生の授業を持っております。今は幸せです。小学校からの指導のおかげで関わりが柔らかく、自然な聴き合いができます。授業をご覧ください。

2.ビデオ視聴(50分)

3.テーブルでリフレクション(10分)

 各テーブルにて、聴き合いをしました。


   - 休 憩 -


◇後半 リフレクション

1.全体で学びを共有する

〇 授業から学んだこと・学び合う学びとICTの活用について語り、共有する。

< ◎コーディネーター後藤先生 〇授業者:丹羽先生 ●参加者 >

◎ テーブルでの聴き合いから感じられたことをお話ください。

● 小麦の栽培について、通常はどの程度の降水量が必要なのか、子どもたちは理解しているのだろうか。栽培と降水量の関係を教えたり数値についての調査させたりする必要があると感じました。イタリアにおける雨温図が栽培に適しているのかが根拠を示しながら考えさせたい。振り返りのさせ方について、次へのつながりの意識はどうだったのか。導入の資料について、パスタの消費量が出てきて正直驚きました。ICTの活用については、後藤先生がどう話されるのか楽しみです。

● 19分に、B2が資料4についてどう思う?とのグループで会話しています。29分では、他のグループへの「つなぎ言葉」を使うことで他のグループへ共有させている。そして、問いかけ言葉「違う考えありますか?」へ発展して、学びが広がっていきました。グループでの話し合いでは、聴き合うことができるが、人の考えについて「どうしてそう考えたの?」と訊ねる、訊き返しがないので、この時点ではなかなか深まっていかない。ICTの活用については、私が拝見した他の学校の実践では、タブレットの画面を立てて使い、コミュニケーションの壁になっていることがあるが、この授業では、画面を寝かせつながりが切れていない。しかし、他のグループの学びとのつながりが生まれる工夫が欲しい。

● 子どもたちは、話し合いに慣れている。集中力を切らすことなくよく続けている。社会科の授業では、資料の扱いが大切だと感じているが、この授業では、資料を限定してしまったことで授業の話し合いを狭めてしまったのではないかと感じます。せっかく、子どもたちはいい疑問を多く持ったのですが、そこからの探究になっていかないことが残念でした。

◎ 資料の与え方について大切な問題です。どうでしょうか。

● 資料をどう提示するかは大切で、今回は効果的だったと感じます。だから、資料の選定は重要だなと感じます。ICTの活用について、最近拝見した授業では、すぐ個別最適な学びへむかい、子どもが孤立する学びになっていく傾向がありました。その方向は向かうべきではないと思います。最後に振り返りですが、手書きをした言葉を消しても薄く跡が残っているというような思考の痕跡が確認できる。キーボードにはそうしたことができない。ビデオでは3人ほど手書きの生徒がいましたが、振り返りをどうしていくのかが問題と感じました。

◎ 丹羽先生の授業では手書きの生徒は3人いました。どちらでもよいということですか。

○ 3人は、タブレットを忘れた生徒です。(笑)私は、手書きした文章はたどたどしいけれど味がある振り返りがいいと思います。ただ、データとして蓄積されていくデジタルの魅力も感じます。

● ノートを使うのは、手書きをさせたいのですか。

〇 私は紙に書かせたいというこだわりがあります。

◎ ICT活用という点からどうでしょうか。

● ICTを使うという点からいうと、タブレットを使うほうがいいと思います。タブレットを使う意味は、子ども同士をつなぐことです。一人ひとりの疑問やアイデアが他の子どもに広がっていかない。そこが問題だと思います。同じグループの子ども以外とどうつながるのか。それができるのがタブレットであり、使うことで同じテーブル以外の他者とつながり、他者の考えを検索することができる。こうしたことは対面活動よりは広がりがあります。

● 今、私が担当している生徒は、なかなか他の子どもの学びを見ようとしません。私は、「他者参照をしなさい」と言います。他者からよく学びなさいと言っています。それが、できるのがICTだと思います。この授業では、子ども同士がとてもよく話し合っています。しかし、最近、私は「対話が探究を妨げていることがあるのでは」と感じています。一人ひとりの子どもはいい疑問を持っていますが、対話することでその疑問の探究ができないことがあります。そんな状況が生まれているのではないか。そうならないためには、一人ひとりの学びが見える必要がある。つまり、個人の課題をはっきりさせることです。そこで、タブレットペンを持たせ、タブレット上にどんどんメモをさせています。

● 5月のこの時点で、これだけ話し合っている姿は素晴らしい。しかし、一人ひとりの疑問が、そのまま終わってしまっている。授業40分の生徒の会話に「降水量が少ないから、小麦がいっぱい採れる」と語っているが、本当にそうなのか感覚だけで話しています。イタリアは国土が南北に長いので、ローマの気候だけで語っていることの曖昧さを明らかにしていく必要があります。「なぜ。これ、ほんと」という探究の活動を育てていかないと、なんとなく話し合っていれば、グループ活動が協働的な学びになっているという誤解を生みます。そんな危機感があります。

● 授業の学びは、段階があります。年度当初は、資料の読み取りをしっかりとらえさせる。その後、資料と資料のつながりから思考させるなど、段階を追って育てていくものです。1時間の授業ですべてのことができているのは、望みすぎです。

◎ この授業では、ジャンプの課題がないと思うのですが、皆さんはどう思いますか。

● 今回のセミナー資料には、指導案がついていたので見ていると、この単元構成では温帯の気候を1時間で学んでいる。皆さんのお話を聞いていると、1時間の授業に多くを望みすぎているではと感じます。深い学びへ到達させたいのは当然ですが、教科担任は大変です。この授業では疑問を残せばいいと思います。ここで、残った疑問を、小牧であれば「マイ探究」の追求の種にすればいいのではないか。また、振り返りのことについて、一人ひとりの生徒の記述した振り返りは、どう扱ったらいいのか。考えてみましょう。毎時間記録する「振り返り」は生徒の財産です。本人に返すべきですね。こうした扱いはどうなっているのか。

● 小牧市の場合は、個人のデータは卒業しても見ることはできます。また、卒業時には自分のドライブへ移すこともできます。

● ICTの授業というと、資料集の資料と提示した資料との違いがどうかということを考えました。1年間の授業の流れから捉えると、先生から限られた資料をもらう段階から、自分から調べるために自由に資料を探究するという段階へ移っていくのがICTの活用という点ではいいのではと感じました。

 授業としては、それぞれ、パスタづくりの疑問を考えていくなかで、39分に、先生が、今日の課題に戻しました。そこで、学びが集結しているなと感じました。

◎ 皆さんの考えを聴いて、なるほどなと感心しながらお聞きしました。最後に自分なりにまとめたことをコメントさせていただきます。


2.コーディネーターよりのコメント

① 学びの作法を学ぶ

 アッと驚く資料と興味を引く提示

 一つの発問から、生徒の考えをつなぐ

 グループの学びを多用し、時間をたっぷりとっている

 「わからない」から広げる

② 学びを深める

 ジャンプの課題を考える

 ジャンプの課題のねらい

 学びの深まりの鍵になる「見方・考え方」につながる課題に

③ 一人一台端末の有効性

 圧倒的な情報量 日常的な利便性 情報共有の有効性 学びの個別最適化

④ 一人一台端末のへの不安

 大量の情報を処理できるのか

 浅い学びになっていないか・リアルな学びになっているか

 対面コミュニケーション能力が育つのか

 言語能力が育つのか  

今の現状・経験が今の子どもたちにとっての原風景になる

⑤ デジタル化への不安

 デジタル導入の教育先進国で、成績低下や心身の不調、フィンランドが神の教科書を復活⑥ 提案授業のICT活用から学ぶ

 課題の提示

 教師が4つに絞って提示

 振り返りをタブレットへ記入

 パスタの現物を見せる  ➡  リアルな学びも大切に

⑦ ICTの力で学び合う学びを支える

 ☆これまで培った授業の基本は不変

 ☆他者参照は有効だが  ➡ 形成的評価・見取り(個への対応)しやすい

 ☆振り返りが充実しやすい

 ☆学びの道具としての活用方法

 ☆はじめに、授業デザインありき

 ★子どもの学びを省察し、探究し続けなければならない課題


3.丹羽先生の振り返り

 前任校から、資料を限定した授業をやってきました。本日、皆さんのお話を聞きながら、やはり生徒が、自分から外へ出ていき資料をさがす探究の学びがとても大切であると感じました。そうした学びが自分の生活に密着していると感じます。今は、長年モヤモヤしていたものが、かなりスッキリしました。今日いただいた言葉を、整理して明日からの授業に生かしていきたいと思います。


参加された方からの振り返りを紹介します。

◆今日のセミナーで学習した中で重要だと思ったことは、学び合う学びにICTをどう活用するのかということです。授業動画については、無駄のない授業のように感じた。すぐに本題に入り、グループで学び合う時間もたっぷりとあり、生徒にとっては安心して学べる時間になっていた。そのため、各グループでは、様々な疑問や、思考が出ていていた。これらの疑問や思考を蓄積することができると、次への学びや探究につながるのではないかと期待できる授業になっていた。ICTをどう活用すべきかは、まだまだ明確なものは見えてこないのが現状だと思う、ただ、PCを使うための授業にだけはしてはいけないと思う。ここを、もう少しみなさんと一緒にいろいろな観点から考えていきたいと思える時間だった。