12月20日(土)13:30より第9回12月セミナーを開催しました。
- 公開日
- 2026/01/06
- 更新日
- 2026/01/06
社会連携
12月20日(土)13:30~15:30に、201教室において実施しました。
コメンテーターとして、学び合う学び研究所フェロー 林 文通先生をお迎えし、小牧市立米野小学校 太田莉子先生の4年算数「図形」の授業を通して「学びを楽しむ授業づくり・学校づくり」をテーマに学び合いました。
今回は、26名の申し込みをいただき、講師を含め28名の方により学び合いを深めました。
セミナースケジュール
◇前半 提案授業について
1. 林 先生より(授業を構成するもの)
2. 太田先生より(私の願い、そして授業づくりは)
3. 小学校4年算数「直方体と立方体」の授業ビデオ視聴
(子どもはどこにつまずき、つまずきをどうやって乗り越えていくか)
・ テーブルで学びを共有する
休 憩 ・ 歓 談
◇後半 リフレクション
4. 全体で学びを共有する
5. 米野小学校の学校づくり
・学校長・研究主任・副主任へのインタビューを通して
◇前半 提案授業について
1. 林 先生より(授業を構成するもの)
会場の皆さんへ「授業を構成するものには何があるのか」テーブルで聴き合うように問いが出されました。各テーブルでは、自己紹介を含めて話し合いがはじまりました。
林先生は、「正解はないが」と話しながら、東京大学の藤江康彦先生の書籍から以下の5点を紹介されました。
① 学習者 ②教師 ③授業の「目標」 ④教材 ⑤教師の「願い」
上記のとおり最近の授業案やデザインの中には、授業で身につけさせたい教師の思いや願いが書かれることが多くなりました。
⑤の教師の「願い」には
→ 授業を通して、子どもにどのように育ってほしいか
→ 教師としてどのような授業を行いたいか
→ 「願い」は「目標」と似ているが別物
授業で子どもたちが到達すべきゴールではなく、教師として授業の中で大切にしたいと考えている物事や子供の成長に対する期待がある。と話され、事前に太田先生へインタビューした内容が示されました。
2. 太田先生より(私の「願い」そして学級づくりは)
多様性を認め合うことができる学級をつくりたい。
子どもの発言を受け取ることができる教師になりたい。
協力できる場面を意図的につくるようにしている。
苦手なところをカバーできる子どもを育てたい。
勉強だけなら家庭でもできる。人と協力してできるのは、学校とか集団の生活の場の良さである。
協同することが大事。協同する時は、同じ考えの者ばかりではない。違う考えがあるからこそ、新しい考えが生まれる。そういう良さを、子どもたちにわかってもらいたい。
多様性を認め合えないと、授業においても同じ意見に流されてしまう。さらには、違う意見が言えない雰囲気になってしまう。
いろんな意見が出て、それを考えていく過程も大切である。
それぞれ違う人の感性を受け止められる経験をさせたい。
これらのことを、授業だけでなく学級の中で創りたい。
太田先生からは、
「多様性を認め合える学級にしたい。授業においても同じ意見に流されないように、違う意見が言える雰囲気づくりに努めていきたい。そして、不安なこととして、学び合いは小学校だからできるのではないか?学び合いで学力がつけられるのか不安感を感じている。」と話がありました。
さらに、授業を視聴する前に、太田先生が予想する子どもたちの困りポイントとして、以下が示されて授業がスタートしていました。
・辺の長さがわからないだろう。 ・どこから書けばよいのかわからないだろう。
・面の数がわからないだろう。 ・展開図ができても、折ることができない子がいるだろう。
3. 小学校4年算数「直方体と立方体」の授業ビデオ視聴
早速授業ビデオを見てみましょう
→ 授業の善し悪しを見るのではなく、
① こどもはどこでつまずき、それをどう克服していくのか
② 教師はどんな足場架け(Scaffolding)をしているのかを見ていきましょう
逐語記録も配布され、授業を視聴しました。
・ テーブルで学びを共有する(感想交流)
休 憩 ・ 歓 談
◇後半 リフレクション
4. 全体で学びを共有する
< ◎コーディネーター 林先生 〇授業者 太田先生 ●参加者 >
◎ 私は、大学生のころから、子どもがどんな風に認知発達していくのかに興味があり、小学校の授業を見るのがとても面白いと思っていました。そこで本授業をご覧いただきました。人によって気づきや気になることが違います。テーブルで話題になったこと、学ばれたことについて、授業者へお伝えいただければと思います。
● 子どもの関係性が非常に柔らかい。見取り図をお互いに回し合う。「わからない」に対して、応ずることができていました。
◎ この関係性はなかなか生まれません。太田先生が一年かけて作り上げてきたことです。
● 四人グループの学び合いが、クラス全体に広がってきた。一人ひとりの学びをよく見て、全体で学んでいった。そんな学び合いの機会が複数回ありました。また、最初からジャンプ課題でスタートしたにもかかわらず、学びから落ちている子どもがいない。子どもたちが「前に出ていいですか」との発言があり、説明したいときに、子どもからこの発言が出て、周りもよく聞いている。こうした関係性はなかなか生まれないと感じました。すばらしい。
● 3年目の若い先生が、このような足場架けができ、子どもの学びをファシリテートしていて素晴らしいと感じました。これは、事前に子どもたちが「どこで躓くのか」を予想され計画されていたからだと感じました。
◎ まだ3年目ですから、初めてもつ4年生の授業計画です。周りの先生方の支えがありましたが、よく考えられています。
● わたしもすごい先生だなと感じました。Zさんが、わからなさが言えたり、最後に自分の間違いに気づきみんなの前で言えたりしたことがすばらしい。太田先生が、あれだけ準備をし、授業の中で支えているにもかかわらず、間違いに気づけず、展開図を切り離してから、できていないことに気づく子どもがいました。いったい何が必要だったのかを考えさせられました。
◎ そうですね、何が必要なのかを考えさせられました。最初に立方体の長さは4センチと言っているにも関わらず、辺の長さがわからない子がいた。「見取り図と具体物が同じ?」と言っている子どもがいた。この実態をどう考えるか。
● 難しい課題にも関わらす、学習内容が分かっていなさそうな子どもが自力で解いている。隣の支えている子どもは、自分で解きたい子どもが考えられるような言い方をし、深入りをしていない。Zさんが自分のやり方でやってみると言っている。そうした子どもを育てていることがすごい。
◎ 途中の班活動で、Zさんの前に座っているAAさんが発言することに対して、Zさんは「私はこう思うんだよね」と伝えている。ところで、指摘のあったIさんとJさんの対話について、「学び合いだったのか」「教え合いだったのか」、皆さんどう思われますか。お隣と話してください。
● 僕が見ていた感想ですが、Jさんが選択して、Iさんが受容している。Iさんは教えていなかったように感じています。Jさんは教えてもらって書いているのではないと感じます。
● IさんがJさんにいろいろアプローチしている。Jさんがやりたがっているから見守っている。余計なことを言わずに、Iさんと一緒に学んでいるように受け取りました。
● IさんとJさんが学習活動として教えて、聞いてをしている。JさんがIさんの話を聴いているだけではなく、自分から反応して学習を組み立てている姿があった。Iさんはそれを望んでいたのか、Jさんは望んでいたのか。がすごく気になっていました。Iさんは教えるという手段で学習活動を進め、Jさんは聞いて反応するという手段で学習を進めている。はたして、この二人が望んでいるのか。意義を分かっていることなのか。気になりました。学び合いは、授業の展開からして意図されているものなので、授業者が意図して進めていきますが、学習者が意図して進んでやっていることなのかで変わってくると感じました。
◎ 今の発言、ぜひ大学での研究対象にしていただきたい。学校現場では、学んでいるようで教え合っていたり、一見教え合っているようで、実は深い学びをしていたりすることもあります。私が名古屋大学院生の時に、学部生に「グループ活動をやってきてどうだった」と質問したことがあります。答えは「嫌だった」が多くありました。「なぜ」と尋ねると、「自分で考えたいときに話してくる」「自分の考えを無視して、考えを一つにまとめようとする」と返ってきました。名大に入学する学生は自分で考えたい人が多い。学生とって自分の考えを阻害されるような経験から、グループ活動をマイナスに捉えていることが分かりました。こうしたイメージを持っている教師もいらっしゃると思います。
あの教室の子どもたちは果たして「嫌々学んでいるのか」学びの中でお互いに必要に思っている関係性、互恵的な関係が成立しているのかを考えながら見ていくと、ぱっと見、教え合いに見えるが、学び合いじゃなかったのか。と思えてくる。そこがおもしろいところであり、挑戦していきたいところだと思います。
● この教室には、四人グループを見ていると、ペアでの教え合いや尋ね合いになっていることが多い。ペアから斜めの関係に発展していくともっと学び合いになっていく。
● Jさんからの「わからなさ」をIさんにぶつけられるかにかかっていると感じました。そうすればもっと学び合いになる。
● 授業記録の169に「えっ?」があります。この「えっ?」は前の発言、「あっているけど・・・」をうけての子どもたちの反応です。授業記録を読み合う中で「えっ」という発言に対してよくないという感想を持つ方もいます。しかし、この「えっ」と言えることがとても大切であると思います。授業者の「目標」は<展開図が書けるようになる>ですが、「願い」は<多様な違いを大事にしよう>です。<違っていていい。認め合うことを大切にしよう。>としています。このセミナーの冒頭で授業者から「学び合いは中学校でできる?」ということに関連して、中学校で「えっ」と言うことができるでしょうか?もしかしたら、言われたら次の日から学校に来られなくなったら?(爆笑)という関係性。私が今、務めている中学校の探究の時間に、「自分はこう思いました。」の発表に対して、「それって、本当にあなたのやりたかったこと?」と辛辣な対話がありました。大丈夫かなと思いつつ、何とか関係性をぎりぎり保ってやっています。
「今の子どもたちの傷つきやすさ」と教師の支えをもって「違っていていい」というところのバランスをどうとるか。こうした互恵的な関係性を小・中・高にどう築くか。職員室も含めて、「えっ」といわれてもやっていけること。これからの社会をつくっていく大切なことだと思います。
◎ 「えっ」の一文字でそこまで考えられることに、驚きました。(爆笑)確かに、この「えっ」は人を傷つける「えっ」ではない、気づきの「えっ」ですね。
映像から見えてくる教室の学びの姿として、いくつか示します。
・抽象画としての見取り図と実際の長さの違いのハードルの高さ
・空間認識のできない子どもにとってのジャンプ課題
・友達の説明と自分の作図がつながらない ・作図する経験が新たな認識を生む
・仲間の気づきをお互いに共有する文化がある
・教師は「つなぐ・戻す」に専念している
このように感じましたが、太田先生どうでしたか。
〇 自分が意識的にやっていたこともあったのですが、皆さんからいただいたご発言や自分で見返してみたことから、改めて多くを学びました。何も考えずにやっていたことが多かったなと感じます。自分が考えていなかった視点をいただいたので、今度に活かしていきたいと思います。また、やっぱりそうかと納得できたことは続けていこうと思いました。ありがとうございました。
◎ ダン・ローティ(Dan C.Lortie,1926-2020)の著作に『スクールティーチャー』1975があります。その中で以下の4点が紹介されています。
①観察の徒弟制 ②卵のパッケージ構造 ③精神的報酬 ④風土病的不確実性
この中で、卵のパッケージ構造について皆さんと考えていきます。
学校という組織は、物理的にも心理的にも、教師が個々の教室という“セル”に閉じこもりがちな構造をしている。各教師は隣の教室に近接していながら、実際には自分の教室の内部で完結して仕事をしており、他の教師の授業内容や方針にはあまり干渉しない。日本の学校もまた、ローティの指摘に当てはまる面が多いと研究者たちは指摘している。 具体的にいうと…
授業は「自分のクラスのこと」として閉じがち。
職員室では日常的に会話するが、授業内容までは共有しない。
研究授業や公開授業などの特別な機会でしか他者の授業を見ない。結果として、「協働的な学び合い」よりも「個人努力型の授業改善」が主流になる。
それでは、卵のパッケージ構造を打ち破ろうとしている米野小学校の実践を紹介します。
5. 米野小学校の学校づくり
〇 学校長へのインタビューを通して
1.目指すは、『職員が自走する学校』(本人の言葉)
→子どもがやる気になる授業を、先生方がいかにやる気になって作ってくれるか
2.職員からは「気遣いの人」と呼ばれている
(職員談)→自分も気遣う人になろうと思う →仲間の授業を気遣う気持ちにつながる
→職場の仲間に対して無関心でいられなくなる
3.「授業どうだった?」が、日常会話の中にある/授業のことだけ問う人ではない
職場は生活の一部でもあるからこそ、日常ことを大切に考える
4.応援上手(否定をしない)
校長は「仕事をやらせている」と言う but 職員は「後押ししてくれる」と言っている
→「やってごらん」が次の「やりたい」を生んでいる(職員談)→自走する職員
〇 研究副主任へのインタビューを通して
大前提として、「授業は楽しくなければいけない」
→ 能力の高い低いに関係なく、どの子も楽しい授業
間違いの素晴らしさ、人と違うことの素晴らしさを伝えたい
→ 違いは不安ではなく楽しみ
グループにおいて、「話してごらん」ではなく、「何が違うの?」と問いたい
互いに授業を見合う体制づくり/共有ノートを使った感想交流(蓄積する文化)
→ 授業を見に行くが、共有するところはまだ難しい
今年のテーマは「対話」/対話の場面を意図的に造ろう
→ 授業だけでなく職員の間にも…
来年は、「違いを楽しむ」を職員全体で共有したい
月1回の木曜6限(フリータイム)を有効活用していきたい → 学年で単元構成を!
〇 研究主任へのインタビューを通して
役割としてふられたからやっているのではない<学校の環境が人を変える>
→ 授業について対等に語り合える学校だから、「やりたい」と思うことができる
グループの力を引き出そうという米野小の取り組みに共感した
子どもを見れば、この学校がずっとやってきたことが理解できる/継続したい
ICTを活用し、非常勤やALTの先生方も巻き込んだ学びの共有を目指す
来年は学年で単元構想を考えたい
→ 他クラスの提案授業であっても、一緒に考えているので自分事となる
→ 授業づくりを個人作業にしたくない(悩みの共有)
→ これをやることによって生み出したい「学校の文化」を明確に示していくことが課題
教室でも、職員室でも、人と人をつなげるポジションでいたい
6. 参加された方からの振り返りを紹介します。
◆ 今日のセミナーで学習した中で重要だと思ったことは、追究意欲が続く課題を設定し、子どもをよく見て繋ぎ、時として戻すことがいかに大事であることが授業ビデオと意見交流で実感できたことです。
3月の実践ということで1年間かけて、子どもたち相互の関係性と高めてきたことがうかがえた。「わからない」を発信できる子どもたちと寄り添う子どもたちの姿が見えて、見ていて気持ちいい授業でした。先生は教えることより足場掛けに徹していたのも素晴らしいと思いました。最後の全体リフレクションで4人グループの中のペアでの学びを、4人に広げるといいというご指摘は勉強になりました。林先生からダン・ローティを引用して「卵のパッケージ構造」を紹介していただいたことも勉強になりました。自分が関わる学校で、積み重ねの共有なくゼロに戻ってしまわないよう心掛けていきたいと思います。