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大学日記

4月19日(土)13:30より第1回セミナーを実施しました。

公開日
2025/05/01
更新日
2025/05/01

社会連携

  • 4月セミナー 全体共有
  • 4月セミナー グループ協議
  • 4月セミナー 講演

4月セミナー 全体共有

4月セミナー グループ協議

4月セミナー 講演




















4月19日(土) 13:30~15:30に、201教室において実施しました。

当研究所シニアフェローの名古屋大学大学院教授 柴田好章先をお迎えして「授業分析とは」をテーマに行いました。

 今回は、35名の申し込みをいただき、柴田先生を含め36名の方により学び合いを深めることができました。


第1部 柴田先生による講義と話題提供

私は、25年間を名古屋大学で過ごしております。今までに、主に小中学校の授業研究にかかわってきましたが、最近では、ほとんどが高等学校の授業改善やアクティブラーニングにかかわっております。

本日のテーマである「授業分析」について、二昔前であれば、定義・目的・対象・方法・結果・課題・意義・成果などをお話していました。しかし、大学の授業でも説明的な授業をすると学生から無言の反乱がおきるのが現状です。せっかく、大変多くの方々に集まっていただきましたので、テーブルや全体での学び合いを取り入れながら、結果的に「授業分析」とは、こういうことかなと掴んでいただければ幸いです。


◆ まずは、問いからはじめましょう。そもそも「授業とは?」を、テーブルで自己紹介しながら聴き合ってみましょう。(10分)

< ◎ファシリテーター柴田先生 ●参加者 >

◎ みなさんからご発言いただきます。

● このグループでは、一つの考えで完結するものではなくて、社会とつながるきっかけをと作ること。また、授業が終わったところで、学びへの意欲に火をつけられることと考えています。

◎ 素晴らしいですね。一昔前の大学では、教える人(教師)がいて、教える内容(教材)、教えられる人(学習者)の三者の相互関係と言われていました。時代と共に「授業」のイメージが変わってきております。

私は、授業とは、「【教材】を介した【子どもどうし】の学び合い」としています。

【教材とは】問題・課題・主題・話題 ⇔ 学習内容

【学び合いとは】AはBに学ぶ、BはAに学ぶ、相互関係

 授業研究とは?

 【子どもの学びの姿】を介した【教師】どうしの学び合い

  授業を研究する授業研究も、また授業である。

  ➡ 授業研究は教師が学び合う授業である。(楽しくなくてはいけない)

なぜ、研究?   ➡ わからないから研究する

なぜ、授業の研究?➡ 授業(教育実践)のわからなさ

授業(教育実践)も研究(教育研究)も「わからない」から「わかる」を目指す営み

〔日常の教育実践と授業研究の関連〕

・日常の実践の問題意識に基づいて授業研究を行う

・授業研究が日常の授業実践を改善する

大学と学校をつなぐ授業研究の意義と課題

〔授業研究会で大切にすること〕

・事前:授業者の意図、問題意識を理解

・観察:「おゃっ?」を大切に、子どもの学びを具体的・共感的に理解

・事後:手にしている事実から最大限の想像を、具体的な事実をもとに話し合う

〔教育の科学化をかかげた授業分析〕

・授業の内側(授業に含まれる諸事実)から授業展開過程や子どもの思考過程を説明しようとする。

・記録にもとづく授業分析の意義

1 私は、記録を通して授業で起こったことを知る

2 自らの授業像に照らし合わせながら、授業で起こったことをとらえる

3 授業記録から読み取ったものにもとづいて、自らの授業像を豊かにする

授業の中で登場する「言葉」に注目して、データとして分析することで、主観的、感覚的な捉えから科学化していく必要がある。


◆ 授業分析演習

「この幼虫は、ガかチョウか?」

 授業記録の説明を受け、Y49の発言「ガでもチョウみたいに糸はついいているけど」

 ・この発言をどう捉えるか? 省略されているものは何か?Yの気持ちは?

 テーブルで聴き合ってください。(5分)

全体共有< ◎ファシリテーター柴田先生 ●参加者 >

正解はないです。Iグループの方いかがでしょうか。

子どもの不安が隠れているのではないか。

その発言の前に、Yはガなんじゃないか。自分が知っていることに嘘がつけない。ガでもチョウのように糸がついている。

「けど」で終わっているということは、何か隠れていますよね。

Y53;ガでも、育てて大きくなったから、別にガでもチョウでもとちらでもいい。

決めつけないけど、洞察することが大切であると考えています。

  「けど」にも、いろいろな「けど」がある。

 結局、子どもの内面を深く見つめていくことが、教師にとってはとても大切なことになります。


- 休 憩 -


第2部 リフレクション・学びの共有  

< ◎ファシリテーター永井 ●参加者 >

柴田先生から、話題提供をしていただきましたので、「子どもの学びをどう見るか」についてリフレクションしていただきたいと思います。では、どうぞ

〇 グループでリフレクション 10分


〇 グループの学びを全体で共有する

新たな問いが生まれたり、こんなことを学んだりということを共有したいと思います。どなたからでも結構です。ご発言ください。

● 私は、教務主任という立場で、年度当初の授業研修の提案をしました。その時に「子どもの学びをとらえる力」を付けていこう提案をしたのですが、どうしたらその力がつくのか具体的になっていなかったと感じております。本日、柴田先生のお話を聞き、授業記録から、「けど」や「はい」などの言葉について、職員間で洞察することで、子どもの学びをみとる力が養われることになると学びました。

● このテーブルでは、授業研究会で授業記録をどう読むかを質問し、聴き合いました。本校では、神奈川県の浜之郷小の研究協議会をモデルとして、子どもの学びの姿を語り合っています。本日の授業記録から学ぶことが、なかなか難しいのが現状です。ぜひ参加されている先生方の実践をお聞きしたいです。

● 学校ではないのですが、東海国語教育を学ぶ会についてお話します。授業ビデオを持ち寄って、子どもの姿について語り合っています。ぜひ参加をお願いします。私は、年に一度は授業記録を作成します。そうすると、自分ではできているつもりでいた授業でも、改めて見返すことで「この子どもを見逃していたな」と感じることがあります。本日の柴田先生がおっしゃったように客観的にふりかえることが大切だと感じています。

● 私が23年前に東海市で行っていた実践ですが、授業後一時間で授業記録を作成し、同じ記録を見ながら、語り合っていました。教師にとって子どもの発言から学ぶものは、大変に多いと感じております。

◎ 学校へお邪魔すると、提案授業をその場でタイピングして、その後の研究協議までには印刷されてモノが配られるという研究協議があります。しかし、時間が短く深い読み取りが難しいですね。

● 今日お話を聞いていて、授業記録から学ぶことは楽しいなと感じております。私が教務主任をしていた学校では、その場でタイピングしたものを手掛かりにしながら話し合いに挑戦しました。しかし、最近の学び合いの授業では、グループでの学びが多いので、なかなか聴き取れません。グループに一台ボイスレコーダーを置き、授業後に発言記録を作り分析をしました。やはり、こんなにも複雑なことを話しているのかと驚きました。

● 私は、3年目の教師ですが、研究授業で何を見たらいいのか。全く分からない状態です。また、授業で発言がつながっていた、盛り上げっていたね、と言われても、授業は1時間で終われば、次の授業では別の内容に移っていきますので、授業検討をどう生かしたらいいのかもわかっていません。しかし、今日のお話の中で、子どもの言葉から分析する意味が分かりました。

● 私は、昨年までNHKの職員として全国を飛び回っていましたが、どうしても教師になりたいと思い今年新任として小学校に赴任しました。本日のお話の中で、教師が子どもの可能性を遮っていることがあるとの指摘を受けて、そうだなとしっくりきています。子どもの主体的な学びを支えて授業記録から学び合う研修にも挑戦したいと感じました。

◎ アラニ先生お話しいただけますか。

● 私も、本日はたくさん学びました。まず、洞察ですね。私たちは、身体で授業をしている、それは無意識に。だから振り返る機会がなければ、自分の授業はずっと正しい。周りはおかしい、になる。もう一度戻らないと、教師は学べない。柴田先生がおっしゃったとおり、人はイメージ先行で動きますね。記録を読むことはしんどいですよ。だから、ビデオを見たくなります。なぜ、ビデオを見たいか。具体的な世界(子どもの世界)へ戻りたいからです。楽だから、具体性の思考になりたい。

イメージとイメージを語り合うと印象になってしまう。子どもの学びの事実をどう見るか。背景を洞察することの大切を確認したい。

 授業の様子を見てみるとアクティビティがあるが学びがない授業があります。授業記録を読み返してみると、グループでは雑談になっていることがあります。

今日の柴田先生の講義のキーワードを整理すると、「裏付け」「記録」「事実」「事象」「語る」「洞察」などきちんと整理して学んでいきたいと感じました。

◎ あっという間に、時間がたってしましました。最後に、柴田先生からまとめのお話をいただきたいと思います。


〇 柴田先生からのリフレクション

 今のディスカッションの関わることについてお話をします。これ(写真提示)は、先ほど紹介のあった東海市と同じような授業研究をしている学校の授業検討会の様子です。授業が終わった後に、授業記録を拡大したものを見ながら話し合っているものです。

次にご覧いただいている画面は、また別の学校のもので、私が先生方の研究協議の様子を文字おこししたものです。研究協議では実に丁寧に語り合って見えます。かなり具体的な子どもの事実にもとづき、教師間が語り合っています。子どものグループを教師が分担して観ていくことで責任をもって協議することができます。一方、学校によってはタブレットを使い研究協議をする学校もありますが、それぞれがそれぞれの画面を見ていることで、先生方が孤立する懸念もあります。やはり全職員が同じ資料を見て視線を合わせて協議することがいいなと感じています。授業研究の進め方について、各学校でいろいろと考えていただければいいなと感じております。


参加された方からの振り返りを紹介します。

◆今日のセミナーで学んだことの中で重要だと思ったことは、科学化です。

授業における子どもの姿を捉えるには、授業記録が重要となり、そこにある事実をどう解釈するのかということはとても難しいけれども、協働して行うことに楽しさがありました。「けど」に着目することで、一人の子どもの学びが見え始め、そこに関わる子どもの姿もより強く見えてきました。教師は身体で授業をしている、それは無意識に。だから振り返ることが必要で、そこでやっとわかってくるというご意見にも心打たれました。

生まれた問いは、どのような記録があるべきなのか、逐語記録には何がどこまで必要なのか、ということです。音楽をフィールドとしているため、音が欠かせず、その音を生み出すものや人の動きも、言語でのやり取りがメインとなる科目とは少し異なると感じています。また学びの機会をいただけますと嬉しいです。ありがとうございました。