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大学日記

5月17日(土)13:30より第2回セミナーを実施しました。

公開日
2025/06/02
更新日
2025/06/02

社会連携

5月17日(土) 13:30~15:30に、201教室において実施しました。

 当研究所フェロー 中川 行弘先生をお迎えして「特別支援教育を標準装備に」をテーマに行いました。

 今回は、14名の申し込みをいただき、中川先生を含め15名の方により学び合いを深めました。


<中川先生のファシリテートによる授業ビデオ視聴>

 小学校4年生のある教室における学びの背景を探りたいと思います。まず、本日のテーマに関わる文章をご覧ください。

〇 特別支援教育は、うまくいかない部分がある子どもに従来の指導法やテストの実施方法を根本から見直し、子どものもてる力を最大限に引き出す教育です。従来の指導法やテストの実施方法は、公平性を欠いていた可能性がありますし、特別の支援を必要とする子どもに心理的負荷をかけ続けてきたともいえます。特別支援教育は、先生方の「対応力」を広げていく可能性を秘めた教育であるともいえます。

〇 特別支援教育は多様な子どもの学びを研究する分野です。学びがマッチしていないときに、バリエーションが増えることで救われる子どもが増えます。特別支援教育はもはや一部の対象児のためのものではありません。すべての子どもの「わかる」「できる」「自信を持てる」を支える、いわば「標準装備」だと捉える発想が大切です。

 ご覧いただいた文章は、2年前の雑誌に掲載された抜粋ですが、学び合いにとって大切にしている言葉です。

 今日のセミナーの私の問いは「この学級・この授業において動きや変化の背景を探る」です。後出しじゃんけんは嫌なので、何度もビデオをみて、浮かんだことを先に紹介します。


〇 この学級・この授業において動きや変化の背景を探る No1

☆「学び合う学び」の日常←昭和からの脱却

 私も子どもも学びたい学び 先ほどまでの自分は自分じゃない

  聴く  待つ  佇む  引き受ける  つなぐ(つながる)  ゆずる  もどす  

  安心(内的)・寛容性(外的)<心理的安全性>→さらなる探究と協同へ 

☆主体性のない子どもはいない←本来の姿に回復

 養護(である)と教育(になる)の一体的保育 環境による教育

  共同注視・共同注意   音読・共感・想像(読み描き)・社会性

  やどかりで遊ぶ→やどかりと遊ぶ→やどかりになる


〇 この学級・この授業において動きや変化の背景を探る No2 

☆教育の専門家としての振る舞いとケア

 心の動きをみとる人間性・身体性、教養と専門性、経験

  学校は知性を育み、理想を追求する公共空間

   家ではできないけど、家ではしないけど、休み時間とはちがうから

  医療 福祉 教育   理論と実践の往還

☆同僚性←子どもも、先生方も でも目的化しない

  自分ですることとひとりですることはちがう

    人類の生き残り戦略は「連係プレイ」     

                 学びの協同(学習指導)

  ケアの協同(特別活動・発達支持的生徒指導)

<具体的には> 

 〇最大の要素は「先生のまなざしと仲間のケア」

 〇温かい学級づくり・授業づくりがベース

 〇振り返り(リフレクション)・単元が軸、国語は音読量

 〇子どもの授業・子どもによる環境構成

 〇べっちょり型、ペア・グループが機能

 〇座席の地理的位置とパワー、つながり

 〇高い課題  親にはなれないが… 作品との出会わせ方

 〇デジタル教科書・ビデオ撮影の効果

 〇日常授業短時間ライブ研究(同僚性)

 〇友達?


 この私の問いや浮かんだことをともに考えてくださってもいいですし、先生方が発見したこと、ご自分の問いの中で生まれたことや知見や見識を教えてくださっても結構です。ともに聴き合い、学び合い、学びたいと思います。よろしくお願いします。

 本日は6月の国語「一つの花」と同じクラスの3月「初雪のふる日」を視聴します。特に、5名の子どもの学びの変化に注目して、授業ビデオをご覧いただきます。

(5名の子どもについて、背景となるエピソードの紹介を受けました)

授業を見ていただいた後にグループで共有していきたいと考えております。それでは、どうぞ。(40分)


 ―― 休 憩 ――


< ◎ファシリテーター中川先生 ●参加者 >

◎ グループで共有してから、全体でお話しいただきたいと思います。学び合う学びでは、質問なしですが、どうしても訊いてみたいことはありますか。

● 初雪のふる日は教科書に載っていますか。

● 教科書に掲載されています。

◎ みなさん、テーブルで自己紹介しながら聴き合ってみましょう。(15分)


 ―― グループ協議 ――


◎ まず、各グループでお話して、困ったな、訊いてみたいな、といことはありましたか。

● このグループでは、座席のことが話題になりました。6月の授業は、そろそろグループにしたらどうかなという考えがでましたが。

◎ 授業者にきいてみないとわかりませんが、思い起こすと、授業者は最初からグループにしようと思っていたように思います。でも、子どもたちがべっちょり座席が大好きで、この座席で学ぶのをなかなか手放さなかった記憶があります。そもそも、この教室には支援の必要な子どもが多くいます。ですから、低学年でよく実施しているように座席を寄せて、関われるようにしようとしました。黒板の近くへ全員がより、黒板を舞台として使おうとも考えていました。

● Eくんは、6月の授業ではしゃべることができない子どもかなと感じました。しかし、3月の授業では手の動きを使いながら友達に伝えようとしていた姿を見て、この子どもにとってはこの伝達手段が欠かせないことだと感じました。

● 私は6月の授業では、Mさんがなかなか読めていないのを見て、隣の女子が教科書の言葉を指で刺しながら話をして共同注視して学んでいました。また、先生は読めていないなと感じると音読に戻し、テキストとの対話を指示します。友達の読みを聴きながら、その読みを足場に自分の考えをつくっていくことができていました。テキスト、友だちの読み、自分の読みを絶えず往還しながら三つの対話で学ぶことを繰り返しているので、3月の学びの姿ができたように感じました。

● 6月の座席では、グループになるためには、前に座っている子どもが後ろを向いて話をしていましたが、四人グループの隊形になっていてもよかったのかと感じました。

● 明らかにDさんが気になり見ていました。6月には、他の子どもに手を使って友だちを遮るようなところがありましたが、3月のDさんの変容と隣の女子のかかわりが実に素晴らしい。また、Gさんは6月には全く関われないし学べていなかった。3月には明らかに目の表情がかわり、穏やかに学んでいた。私の学校の授業研究会で、ある方が発言されたのですが、子どもたちのグループでの関わりは、実は、先生が生徒に関わる姿と一緒だねと言われました。まさに、この教室でも、そうした営みがあったと感じました。

● 日頃から、この先生は誰も捨てないというメッセージを発しているのではないでしょうか。

● Dさんの変容がすごいなと思いましたが、周りの子どもの変容もすごいなとおもいました。Dさんの隣の女子の対応がすごいなと思いました。さらに、このようなケアのできる子どもが育っていると感心しました。また、何の指示もないのに、自然発生的に振り返りを書きはじめて、しかも、よく書けている。

● 注目する子どもたちの周りの子どもの支えが素晴らしいなと感じています。我々は、ケアできる周りの子どもをどう育てるかが大切だと改めて感じました。学ぶ隊形にも関係していることです。

● 先生が丁寧に見守りながら進めている。授業中、勝手に鼻紙を捨てに行く子どもを、先生はちゃんと見ている。授業とは関係ない絵を描いている行為も受け止めている。新任の先生でありながらすごいな。こうした先生の関わり方が6月から3月にバージョンアップしている。子どもたちの学びは多様で教科書の挿絵などから学んでいる。音読も回数を重ねるたびに真剣味がみられるようになった。こうした小さなことの積み重ねがつながりながら学ぶことができる教室を生むことを学びました。

● この教室の学びは、ペアが機能している。四人グループになっていても、3月のDさんは、ペアで学んでいる。人間関係がうまくできないような子どもは、ペアの学びがうまくできるようになると、四人グループになっていくのが分かりますね。Gさんの四人グループは全員が乗り出して学んでいますよね。こうしたグループは四人が学んでいるなと感じます。

● まったく同じことを感じながら見ていました。Wさんの「簡単に言えばどうかな」という発言に対して、Oさんが「かんたんに言うと、お父さんは、最後に、ゆみこと、笑顔を見られたからうれしかったと思う」と発言し、Iさんの違った考え方が複線となるような学びが進んでいきます。この時の多様な考え方、関わりは、子どもたちが気になったことから学びが焦点化していくことになり、子どもたちが物語を構成していく様子だなと見ていました。

◎ 私は、学びの教室を担当しているのですが、授業中ペアでつながれない子どもが多くいます。休み時間に気の置けない話ができない子どももいます。そんな子どもたちを見ていて、「たたずむ」「引き受ける」「つながる」「つながれる」も。学び合う学びで大切だと感じています。もう1点、この学校の素晴らしい点として、この2つの授業に映っていましたが、普段から教室を訪れる仲間の先生がいます。「どうやって授業やっている?」という会話がごく自然にできています。こうした日常が同僚性や専門性を育てているなと感じていました。


参加された方からの振り返りを紹介します。

◆今日のセミナーで学習した中で重要だと思ったことは、教師の心持ちです。

 支援が必要な子は、教師が支援をしてなんとかしなければならないと思いがちでした。ただ、今回のセミナーで、子ども同士の関わりが大切というのを学びました。教師が関わるよりも、より親密により生き生きと関われる姿に感銘を受けました。

 また、支援生徒をなんとか変えなければという焦りを感じながら接していましたが、そうではなく、少しずつ変えていけばいいという気持ちになりました。決して見離さずに少しずつ変わるきっかけを与え続けるとDくんのような表情に変わるといいなと思います。