6月21日(土)13:30より第3回セミナーを実施しました。
- 公開日
- 2025/06/27
- 更新日
- 2025/06/27
社会連携
6月21日(土) 13:30~15:30に、第3回セミナーを実施しました。
コーディネーターとして、当研究所フェロー 倉知雪春先生を迎え、模擬授業者として、本学の卒業生で、屋久島おおぞら高等学校の荒金将梧先生におこしいただき、参加者全員でオンライン授業を受け、「少経験者の実践研究会」をテーマに学び合いました。
今回は、6名の申し込みをいただき、講師を含め7名の方により学び合いを深めました。
① 模擬授業
〇通信制高校とサポート校の仕組み
・サポート校ってなに?
・通信による教育を受ける
・高卒資格取得の条件
・在籍期間3年間以上 ・74単位以上の修得 ・特別活動30時間以上
〇おおぞら高校における授業について
・ZOOMを使用した全国オンライン授業 ・サポートキャンパスで対面or自宅から出席
・配信スタジオから授業を実施 ・授業は授業者、機材サポート、教室担当で進行
・特別授業も実施
参加者がそれぞれスマホでZoomに接続して、授業準備をしました。
〇荒金先生による模擬授業 (言語文化 史話—三編「曹公戦於白馬」)
・授業ルールの確認、出席コードの確認がありました。
・挨拶をしてスタート
史話「曹公戦於白馬」を読む。(テキスト248~249)を開く
本日のテーマ「後漢末期を生きた曹操という人物の生き方や考え方を知ろう」
ノートにテーマが書けた生徒はリアクションボタンを送信。
・まずは、この物語の時代背景を聴く
・今回の戦いで、勝敗を分けるものは何だったのでしょうか?
三択で、チャットで予想を送信する。
・白馬の戦いについて、本文の前の状況について図を使った説明を聴く
・今回の戦いは、どんな結果になるでしょうか。予測する。
・書き下し文のルールをあげてください。
いいですね。みなさん、チャットを送ってくれていますね。
・ここで、文法事項をノートにとってもらいます。
比況 「如・若」/「使役形」について
・続きの書き下し文を読む。・自分の考えをチャットで送信する。
・今回の戦いは、どんな結果になるでしょうか。選択肢を選び、答えをチャットで送信。続々と来ましたね。
・白馬の戦いのその後について説明を聴く。
< 休 憩 >
〇まず、荒金先生より通信制教育の現状と課題について説明を聞く。
VUCA時代と呼ばれていることもあり、将来の夢などないという生徒が大半いる。しかし、「どんな大人になれたら幸せですか?」という質問には多くの生徒が解答(=価値観)を持っている。実現して生き抜く力を身に付ける。
〇おおぞら高校の特徴
“好き”を見つける マイコーチ(登録商標):担任が選べる
“好き”をつなげる
“好き”をカタチにする いろいろな活動が準備されている。
〇荒金先生が教師になってみて感じること
① 自分の中で教育に対する想いをもつ
② 教師の前に“大人” そして“人”であること
③ 誰に対しても、コミュニケーションは大切です
④ 生徒の特性を理解したうえでのサポートが重要
⑤ 大学の学びが現職でも役立つ
〇今後の通信制教育の在り方について
☆ 約10人に1人が通信制高校に在籍している
☆ 10年前と比較して、60.8%増加
☆ 卒業後の進路先は大学 進学が増加
☆ ZEN大学などの通信制 大学への進学者も増加
☆ 企業の通信教育参入
☆ スクールカウンセラーや養護教諭などの不在の課題
☆ 発達障害やグレーゾーンの生徒への理解
☆ 進路先が未決定で卒業
☆ 期日までの課題提出
☆ ある程度の自由が認められているからこその
卒業後の自立が問われる
② グループディスカッション
< ◎コーディネーター倉知先生 〇授業者:荒金先生 ●参加者 >
◎ 参加されて、どうでしたか。
● 私は、現在社会人ですが、大学院へ行こうかなと思っています。授業づくりが至らないところがあり、このセミナーに参加して学んでいます。また、通信制の学校のことをあまり知らないので、知りたいと思い参加しました。
◎ 本日はお話を聞いて、なるほどねと感じましたね。
● おおぞら高校を選ぶ生徒はどんな人が多いですか。
〇 通信制授業だけでは心配で、通学もできる学校だから選んだという生徒が多いです。
◎ スクーリングはいつですか。
〇 年間を通じて屋久島へのスクーリングが設定されています。
● 本学に入学する学生の4割が通信制の卒業生です。大変増えてきました。また、そんな学生は目的をもって進学してきます。学力差について、おおぞら高校ではどうでしょうか?
○ 本当に幅が広いです。小学校、中学校にとどまっている生徒もいます。
● 大学進学の割合は、どんな程度ですか。
〇 だいたい3割程度です。
● 私は漢文が大好きなんです。本来の漢文のおもしろさを伝える授業について、授業として楽しくできることが大切だと考えますが、いかがでしょうか。
〇 僕自身、やりたいことが多くあるんですが、全国の生徒に対応する授業を考えると、システム化がおきますね。その中で、授業者と生徒が相互に楽しく授業ができるかという点について試行錯誤しているところです。
◎ どうしても、一方通行の授業になりがちなんだけども、チャットや質問を多様にすることで、工夫をしているなと感じましたね。
● 通信高校出身者や工業高校出身者は、漢文を履修していないという学生がいました。それでも、教員志望の学生がおりました。
〇 当校は、特定の科目だけに特化していることはないですね。
三者面談をしていると、大学進学については総合型選抜を進めています。
● 本学のカリキュラムを4年間履修していれば、教員採用試験に十分対応できると思います。
◎ 荒金先生の話の中で、大学の学びが役立った、とありましたが、どういうことですか。
〇 大学のキャリヤ教育での内容や、論文の書き方が高校の授業に役立っていますね。
◎ 大学教育は、いわゆる人間教育の一環として、成果を上げているということですね。
おおぞら高校のキャッチフレーズに「どんな大人になると幸せですか」とありますが。
通信高校の進学者が増えていることは、不登校の生徒が増加していることと関係しているように思いますね。
● 「どんな大人になると幸せですか」に対して反応できる生徒が多いとのことでしたが、どんな形式でされていますが。
〇 個人面談が一番最初の機会でしたね。その後、折に触れて個々の生徒と話しています。
③ 倉知先生からのコメント
・通信制高校の現状について
文部科学省の学校基本調査から2020年と2024年を比較して、通信制高校に通う生徒が6.3%から9.1%に増えているのは、通信制高校に対するイメージがマイナスではなく、不登校を経験した生徒にとって学びやすい環境(学びの多様な工夫)として注目を集めていることが分かる。
保護者や生徒に対して、現状の学校制度や体制に合わない生徒に対して、第2・3選択肢ではなく、第1選択肢として選ばれている。新しい学校らしさとして楽しんでみたいというニーズを叶えているのではないか。
通信制高校が増えている理由として、個別の支援に対する手厚い対応が考えられる。また、保護者の意識が、子どもの特性を考えている方向へ変化してきていると捉えられる。
メディアの報道にも通信制高校がよく登場し、明るい雰囲気のイメージをつくっている。
さらに、信頼される学校が増えてきていることから選ばれる理由になってきた。
負のイメージのレッテルを張らないことが、これから求められているのではないか。
さまざまな背景を持つ生徒が通う通信制高校にとって、安全安心な居場所として機能していることが分かった。
④ 荒金先生の振り返り
こうした場所で授業や話をさせていただくのが初めてでしたが、とてもいい時間だったと感じています。皆さんからいただいたご意見を持ち帰って、整理をして明日からの教育に活かしていきたいと感じました。
参加された方からの振り返りを紹介します。
◆今日のセミナーで学習した中で重要だと思ったことは、zoomの授業の中で、話の内容を予想したり、漢文の内容をまとめたりといったクイズがあったことです。リアクションのボタンを押すことで、参加しているという気持ちになりました。
何十回とzoomの授業を行いましたが、受けることは初めてで、生徒の気持ちがわかり、良い勉強になりました。三国志の授業の中にあったクイズで、頭が活性化しました。一方的な講義ばかりですと、ぼんやりと聞いてしまうことがありましたので、大事なことだと思いました。
また、通信制高校が今後増えていくことが予想されます。生徒にとっての良い授業を保証することが課題だと思いました。