子どもたちが見せる姿の変化から学ぶ
- 公開日
- 2015/10/30
- 更新日
- 2015/10/30
仕事
中学校で授業アドバイスを行ってきました。2時間かけて学校全体の様子を見せていただき、その後学年と懇談、個別のアドバイスをさせていただきました。
3年生はそろそろ受験が近づいてきたこともあり、全体的に落ち着いていました。しかし、授業者の問いかけに積極的に参加できる子どもと、できない子どもがはっきりしているように感じました。参加できない子どもも決してやる気がないわけではありません。むしろわかるようになりたいと思っているはずです。ただわからなくて参加できない子どもも結構いるように思います。どの子どもも参加できる、わかる、できるようになる場面をつくることが大切です。挙手だけに頼らず、聞いていれば答えられることを意図的に指名して発言させ、ポジティブに評価するといったことを繰り返すことが必要です。
学年団から進路指導面で悩んでいる子どもへの対応を相談されました。学年全体に対しては、進路面での悩みを「みんな苦しいことがあるよね」と個人のものとせずに共有することを意識してほしいと伝えました。一人ひとりの目標を達成するために、互いに支え合える関係をつくることが大切になります。
個々の子どもの悩みには、面談等で対応することになります。成績面での不安や悩みに対しては、下手に励ますのではなく、負の感情も含めて子どもの苦しさに寄り添う姿勢で接することが大切です。すぐにアドバイスしたり、安易に気持ちがわかるといった言葉をかけたりしないよう注意が必要です。「だめかもしれない」といった言葉に「大丈夫」といった言葉を返すと、自分の苦しさはわかってもらえないと心を閉ざすことにつながります。「そうか、だめかもしれないと思っているんだ。それは苦しいね」とまず気持ちを認めることから始めます。その上で、そう思う理由や気持ちを聞いてあげることをします。焦ってアドバイスする必要はありません。まずは気持ちをしっかりと受け止めることが大切です。その上で、どうすればいいのかを一緒に考えることをします。大切なのは、どうすればいいのかに自分で気がつくことです。子どもの口から言わせるようにするのです。1回の面談で結論を出すことはありません。無理をせずに、継続的に話ができる関係をつくることを優先してほしいと思います。また、担任がすべて引き受けようとする必要もありません。相性というものがありますから、気軽に他の先生とも話すようにさせてほしいと思います。担任にこだわらず、学年全体で対応するという姿勢で臨むようにお願いしました。
2年生は、気なる場面にたくさん出会いました。子どもたちの集中度や表情、態度が授業によって大きく変わるのです。子どもの活動量が多い授業では、とてもよい表情で一所懸命に先生や友だちの話を聞いています。逆に、先生が一方的に説明している授業では、顔も上がらずじっと我慢している状態です。子どもたちの持っているエネルギーは大きいのですが、それが内にこもっているように見えます。その反動が休息時間や放課後、校外などで表れることが心配です。授業中にいい形でエネルギーを使わせてほしいと思います。
同じ教科でも授業者によってスタイルが大きく違います。同じ子どもたちでも、授業者によって見せる姿が異なります。参考となる授業がたくさんあるのに、互いに学び合っていないように思います。先生の個性を否定するわけではありませんが、この学校で広がりつつあった、子どもの言葉を活かし、子どもを活躍させる授業スタイルが減ってきているように感じます。
また、同じ授業時間内でも、集中力が大きく変わることもありました。英語の授業で電話での会話を学習している場面のことです。ALTが英語でこの会話の”situation”を説明します。視覚的な情報もなく一方的にALTがしゃべっても”situation”は伝わりません。子どもたちは、ただボーっと聞いているだけでした。ところが、ALTと授業者2人で電話を掛ける場面になると、子どもたちの姿勢が変わります。体が前に乗り出し真剣に集中して聞き始めたのです。動きが出てきたので、内容を理解できそうになったからです。やる気がないのではないことがよくわかります。わからなければ、参加しない、参加できないのです。
先生方には、互いに授業を見合い、子どもたちの姿を見てほしいと思います。子どもたちのよい姿をみることで、何が大切なのかがわかってくると思います。
1年生は、以前に教師と子どもの関係ができる前に子ども同士の関係ができつつあることを指摘しました。そういう意味では、先生方が子どもとの関係を大事にしてきたことはわかります。子どもは気軽に先生に話しかけます。しかし、授業に直接関係ないことが多いのです。一部の子どもの無責任な発言を受け止めすぎる場面に多く出会います。そうなると子どもたちのテンションは上がっていきます。当然それについていけない子どもは、白けていきます。一人ひとりの子どもをよく見ることが必要です。また、子どもたちが主導権を握ろうとしている授業も目につきます。子どもとの関係をつくるのと、何でも受け止めることとは違います。授業に関係ない発言は無視をすることも必要です。子どもの発言や行動をきちんと評価し、よい発言や行動を増やすようにして、学級内の規律を確立することが大切です。子どもたちが楽しい学級より、安心・安全な学級をつくることが優先です。このことを意識してほしいと思います。
一つひとつの授業をじっくり見ることはできませんでしたが、面白い場面や考えさせられる場面をたくさん見ることができました。
理科のイカの解剖の実験で、子どもたちがとても集中している学級がありました。直接解剖をしていない子どもも真剣に見ています。ところが、結果をスケッチする場面になると集中力が落ちてしまいました。子どもにとっては、解剖することが目的化していたのかもしれません。教師から一方的に課題を与えられても、なかなか自分のものにはなりません。疑問や興味を持たせる工夫が必要です。イカの解剖であれば、「イカの内臓を見たことある?」「心臓はあった?」「どこ?」といったことを問いかけます。真剣に考える必要ありませんから、気軽に答えさせます。そこで、「じゃあ、イカの体の中にどんな臓器がどこにあるかかいて?」と子どもたちにイカの内臓がどのようになっているかをかかせます。知識なので考えてもわかりませんから、これもあまり時間をかける必要はありません。ただ、外部から見える口などを手掛かりに考えさせるといったことはしてもよいでしょう。グループで見せ合ってもいいでしょうし、全体で何人か紹介してもいいでしょう。ここで、「誰のが正解か、どうすればわかる?」と問いかけ、「一番確かなのは自分の目で見ることだ」と子どもたちと確認して、解剖に入るのです。こうすれば、子どもたちはこの課題に集中して取り組むと思います。また、「イカにも個性があるかな?みんな同じような構造だろうか?」と問いかけ、雄雌があるのかといったことも意識させることでスケッチの必然性を与えることもできます。
子どもたちが集中していたので、こんな展開を思いつきました。
同じ学級の違う授業、同じ教科、単元で異なる授業者の授業を比較して見ることができたので、たくさんのことに気づくことができました。私にとっても、学びの多い時間でした。研究発表が終わってから時間が経ってきました。これから人の入れ替わりも多くなると思います。この学校がこれからどういった方向に進んでいくのか、岐路に立っていると思います。今一度、互いに学び合うことを意識してよい方向に進んでほしいと思います。