子どもたちの発表で成長を感じる
- 公開日
- 2023/03/30
- 更新日
- 2023/03/30
仕事
私立の中高等学校で探求の時間の発表と前日の発表準備を見させていただきました。
中学校のリハーサルでは、子どもたちの状態がバラバラなことが気になりました。グループ単位で発表のリハーサルをしているのですが、聞いている生徒がどうにも集中していません。コメントも先生が中心で、生徒からの積極的な質問や意見はあまり聞くことができません。また、発表からはこの活動のゴールがどこなのかがよくわかりませんでした。聞いている人にどうなってほしいのかが伝わってこないのです。
リハーサルということもあってか、生徒の顔が手元のタブレットからほとんど上がっていないことも気になりました。授業などで発表の機会はたくさんあるはずなのですが、発表の基本的な姿勢がまだ身についていないのでしょうか。こういった基礎的なスキルは意識して育てることが求められます。
学年によっては、発表を真剣に聞かず、終わった途端に動きはじめる生徒が目立ちました。前の方で集中して聞いているのは、もう準備が終わって余裕のある生徒たちで、先生の目が届いていないところでごそごそしていた生徒は、まだ準備に追われて作業を続けていたのかもしれません。
発表前日のリハーサルでは、修正する時間がたりません。完成度よりも修正する時間を優先したスケジュールにするとよいと思います。具体的には、発表をよりよいものにするために、準備作業を完全に止め、互いアドバイスし合う活動時間を早めにとることです。
今回、発表後の発表者の表情がさえないことも気になります。生徒に聞く余裕がないことも一因でしょうが、どの学級でも先生が発表を評価していることが影響しているのではないでしょうか。先生が合否を判定している学級もあります。仲間に同じ目線で評価されることで表情も変わってくると思います。また、友だちにアドバイスをすれば、それを受けて友だちの発表がどうなったかの変化も気になります。子どもたちをつなげることを意識した活動をデザインすることが大切です。
高等学校は1年生が発表しますが、1学級の事前準備の様子を見ることができました。中学校と比べて子どもたちのエネルギーが高いことを感じました。自分のこととして主体的に取り組んでいるように見えます。高校は個人での発表ということもあるのかもしれませんが、忙しそうに作業に追われていても、楽しそうな表情であるのが印象的でした。文化祭の準備を楽しんでいるのと同じような印象です。
中学校と高等学校の違いがどうなるのか、本番が楽しみになりました。
当日の発表は、午前は高等学校、午後は中学校でした。
高等学校では、進行も生徒が行っています。保護者や周辺の中学校の先生など参観者も多いのでその場にいる先生は口を出したくなりそうですが、多くの先生が生徒を信頼して任せているのが素晴らしいと思いました。
発表は時間の制限もあり、一見内容が薄いように見えるものも多いのですが、実は深く調べたり考えたりしていることが生徒同士の質疑応答でわかりました。しっかり聞いている生徒が多く、発表後すぐに手が挙がり、発表で触れてないことを突っ込んだり、発表者がどう考えているのかを具体的に問いただしたりしています。それに対して発表者は的確に答えることができているのです。発表には表れていないこともしっかり調べて考えていたのです。こういった場面をたくさん見ることができました。発表者だけでなく、聞く側の意識がしっかりしているからこそ成り立つことです。ある先生は、生徒たちが、聞く側がしっかり聞いてくれないと発表する側の意欲が高まらないことに、発表する機会を通じて気づいたのではないかとおっしゃっていました。こういった力は探求の時間だけでつくものではありません。多くの教科で経験を積んでいることが推測できます。学校全体での取り組みが成果として表れてきているのを感じました。
発表テーマもバラエティーに富んでいました。「男女の恋愛観の違い」「新成績制度が評価として機能しているか」「クッキーのバターを変えてみるとどうなるのか」・・・、まさに多種多様です。子どもたちの視点の豊かさを感じさせてくれます。
発表を聞いていた感じたことは、アンケートの処理やグラフ化などICTを自然に使いこなせている反面、データの分析などはまだまだ甘いというか、統計処理などの知識が不足していることです。よりしっかりした根拠を持って論を展開できるようになるためには、色々な知識やスキルが必要です。そのことに生徒が気づいて学びを深めてほしいと思います。そういった視点からも、教科横断での学習が大切になってきます。次のステップが見えてきたと思います。まだ1年生なので、これからの成長が楽しみです。
ただ気になったのが、当日欠席の子どもがいることです。あくまでも憶測ですが、発表が苦手、準備ができていないといった理由で休んでいるのかもしれません。上手くいかなかったり失敗したりしても大丈夫、恥ずかしくないと思えるようにまわりが支えられるようになることを願っています。
中学生はリハーサルと比べると、発表の表情がよくなっていました。顔を上げて発表できる生徒も増えていました。おそらくリハーサルでは発表を仕上げるのに精一杯で余裕がなかったのでしょう。聞く側の態度もリハーサルと比べると格段によくなっていました。
発表全体に感じたのが、結果、結論の発表が中心で、その課程や根拠といったものが語られていなかったことです。探究活動の観点として今後意識できるようになるとよいと思います。
参加された外部の方と先生方とでの交流会が持たれました。その会の最後に私から少しお話をさせていただきました。
子どもたちは素敵な姿を見せてくれましたが、単に探求の時間だけでついた力ではなく、各教科での取り組みやいろいろな活動を通じて子どもたちが育った結果です。そしてこれは、単に今年度から新学習指導要領に対応したから実現できたのではなく、新学習指導要領が発表される以前から、これからの教育に求められる力を校長が明確にし、それを実現するために先生方が学校改革に挑戦し続けた結果、実現しつつあることなのです。表面的な活動の形に目を奪われるのではなく、本質を踏まえた取り組みがこれからの時代を生きぬける子どもたちを育てることにつながることをお伝えしました。
この日は、子どもたちの成長した姿をたくさん見ることができました。今年度最後の訪問でしたが、とても充実した時間でした。