日記

考えさせたいことに時間を使う

公開日
2016/09/20
更新日
2016/09/21

仕事

前回の日記の続きです。

1年生の国語の授業は、5W1Hを意識して文をつくる場面でした。
子どもたちは発言意欲が旺盛です。「楽しかったことを思い出してみて」と言うと、口々にしゃべり始めます。授業者はしばらく子どもたちの様子を見ていましたが、落ち着いてきたのを見て、「先生は……」と自分のことを例に話し始めます。子どもたちは思い思いの姿勢で話を聞いています。背筋が伸びた姿勢ではないのですが、聞こうという意志を感じます。これはこれで、なかなかよいと思いました。話し終わると子どもたちが一斉に拍手をします。この学級では発言に対して拍手をすることがルールになっているようです。
続いて順番に全員発言させます。ほとんどの子どもたちは発言者の方を向くことができています。こういった授業規律もしっかりしています。授業者は一部の集中できない子どものそばに立って進行します。なかなかよい対応だと思います。授業者は簡単にコメントをして次に進むのですが、発言が終わるたびに拍手が起きるため、子どもたちにはよく聞こえていなかったように思えます。形式的な拍手がちょっとじゃまに感じました。最後の方になると、授業者のコメントもなくなり、子どもたちの集中力が落ちてきました。「時間がないので、今回は拍手をしなくてよい」と拍手は省略して、その代り、簡単な評価だけは一言ずつ全員にするとよかったでしょう。また、全員に発言させると単調で、だれやすくなるので、意図的にテンポアップを図るようにするとよいでしょう。
最後の方で、うまく話せない子どもがいました。授業者はとばして次に進みますが、その子どものそばにずっと座っていました。最後にもう一度、声をかけると発言してくれました。なかなか粘り強い対応でした。
授業者は「みんな楽しかったことを発表してくれたけど、先生、もっと詳しく知りたいな」と語りかけます。「知りたいな」という言葉で、子どもたちの意欲を高めます。「いつ」「どこで」と間を空けながら問いかけると、子どもたちから「何をした」と言葉が返ってきます。授業者が板書をしようと黒板に向くと、「いつ」「どこで」「だれと」といった声が上がってきます。なかなかよい反応なのですが、つぶやいているのは一部のテンションが上がっている子どもです。中には身を乗り出して声を出す子どももいます。ここはいったん、しゃべるのをやめさせて、全体の場で共有することが必要だと思いました。
「いつ」「どこで」「だれと」「何をして」「どう思った」と板書して、「もう一つ、今回は絵を描いてもらいます」と次の作業の説明をします。それを聞いて、一部の子どものテンションがまた上がります。テンションの上がりやすい子どもがこの学級には多いようです。
「教科書にお手本が載っています」と教科書を開かせます。子どもたちはすぐに行動しますが、その間多くの子どもが何かしらしゃべっています。しかし、授業者が「心の中で読んで」と指示をすると、落ち着いて指示に従います。子どもたちのコントロールができていることに感心しました。つぶやくことで上手くエネルギーを発散できているのかもしれません。ただ、学級全体が落ち着かない状態になる危険性があるので注意が必要です。「いいこと言ってくれたね」とつぶやいた子どもを指名し、全体に対してきちんと発言し直させることで、話を聞く雰囲気をつくるとよいでしょう。また、発言する子どもではなく、聞いている子ども評価するようにすると落ち着いてくると思いました。

6年生は町の紹介をするパンフレットについての国語の授業でした。
子どもたちはグループの形になって、町を紹介するいろいろなパンフレットを見て特徴や工夫を考えていました。個別にノートにまとめていますが、パンフレットを交換する以外あまりかかわっていません。目標が、子ども同士がかかわり合う必然性のあるものになっていない可能性があります。自分たちがパンフレットつくる時の参考にするのでしょうが、パンフレットがだれに対して、どのようなねらいなのかを意識しないと、ただ気づいたことをまとめるだけになってしまいます。
グループの状態から元の座席に戻して、全体で発表します。構成について気づいたことから指名して発表させます。挙手は数人です。構成について書いた子どもがそれだけ少ないのでしょうか。ちょっと気になります。こういう場面では、まず、何ついて書いたのかの情報を先につかむようにするとよいでしょう。「○○について書いた人?」「多いね」「△△は?」「意外と少ないね」というように、項目ごとにどのくらいの子どもが考えを書いたかを把握しておくと、指名することや子ども同士をつなぐことがしやすくなります。
子どもの発表を板書してから、実物投影機でそのパンフレットを映して授業者が説明します。時間の関係もあるのでしょうが、子どもに説明させたいところです。子どもたちは説明を聞く前にすぐに板書を写します。友だちの考えを理解することよりも写すことを優先しているように見えました。
折り方についての発言がありました。他の折り方がなかったかとつなぎます。「3つ折り」「4つ折り」に続いて、「なんかこういうの」という発言が出てきます。細長く折ってあるのです。授業者は、「こういうのだった人?」と発言者にパンフレットを全体に対して見せるように指示します。先ほどまではあまり反応しなかった子どもたちが、一気に体の向きを変えます。いろいろな折り方があることを共有して、「折り方だけでもこれだけいろいろある」とまとめて続きに進みます。
表現の工夫について、「わかりやすいように写真が載っている」という意見がでます。授業者は「写真が載っているパンフレットを見た人?」とつなぎます。ほとんどの子どもの手が挙がります。「文字だけのパンフレットしか見ませんでしたという人?」と続けて聞きますが、もちろん誰も手を挙げません。「どのパンフレットにも写真が使ってある」とまとめ、「何で写真が使ってあるんでしょう?」と問い返します。これまでは工夫について理由は聞きませんでしたが、ここで初めて聞きました。しかし、発表者は「わかりやすいように」と理由を言っています。無視されたように思うかもしれません。
子どもたちは、先ほどの作業中には理由を考えていません。すぐに手が挙がる子どもは半分もいません。多くの先生は、作業に時間を使い、考える場面ではすぐに答を求める傾向があります。この時間の比率を変えることが必要です。
最初に指名された子どもの発言は、「言葉ではわかりにくいものを説明しやすくする」と先ほどの子どもの理由と同じような内容です。すぐに「いいです」とハンドサインが上がります。「他には?」と他の意見を求めると、一人の子どもの手が挙がります。「文で表わせないものを……」という意見に対して、ハンドサインはほとんど上がりません。理解するのに時間がかかっているのでしょう。授業者は「どちらもあるね」と板書しますが、ここは子どもたちが理解する時間を取りたいところでした。授業者が「どちらもある」と結論を板書するのではなく、子どもたち同士で納得させるようにしたいものです。
写真を載せる理由はそれほど難しくはないでしょうが、先ほどのパンフレットの折り方などは、その理由をしっかりと考えさせたいところでした。折り方は利用される場面を意識して決められています。歩きながでも見やすくするのか、全体を把握しやすくするのかといったことを考えることは、パンフレットを実際につくる時にとても大切な視点を与えてくれます。こういったことをグループで考えさせることが必要でした。また、子どもたちのパンフレットはグループによっても違います。それぞれのパンフレットのねらいと工夫を関連づけてグループごとに発表させて、共通な点と異なる点について比較してみても面白かったでしょう。
あらかじめ自分たちのつくるパンフレットのねらいが明確であれば「どの特徴や工夫が参考になるのか」ということをグループごとに話し合わせてもよかったかもしれません。
子どもたちに何を考えさせるのかを明確にし、そこに時間を使うように授業を組み立てほしいと思います。

この続きは明日の日記で。