日記

アクティブ・ラーニングについてお話しをする

公開日
2016/10/07
更新日
2016/10/07

仕事

私立の中学校高等学校で、アクティブ・ラーニングについての講演を行いました。今年度から、各教科で積極的に取り組もうとしている学校です。1学期に見せていただいた授業をもとに、特にグループを活用した授業のポイントを紹介しました。

「次期学習指導要領に向けたこれまでの審議のまとめ(素案)」をもとに、「主体的・対話的で深い学び」というキーワードについて説明しました。特に高等学校での学習の過程の改善を意識していることを強調させていただきました。
審議のまとめでは、教師が教えることを否定しているのではなく、どのようにかかわるかが大切であると言っています。アクティブ・ラーニングの視点について、「深まりを欠くと表面的な活動に陥ってしまうといった失敗事例も報告されている」と、暗に、現在巷間で言われたり、行われていたりするアクティブ・ラーニングが表面的なもので、目指すべき「深い学び」につながっていないと批判しています。このことを意識して、幅広い視点で子どもの学習過程をとらえ直し、授業改善を進めてほしいことを伝えました。

実際のこの学校の子どもたちの授業での様子をビデオで観てもらいながら、ポイントの解説を行いました。子どもたちがグループでの学習に取り組んでいる姿は非常に積極的なもので、彼らのポテンシャルが先生方が思う以上に高いものだと確信してもらえたと思います。子どもたちの可能性を信じてほしいと思います。
最近私が知った意思決定のプロセスにOODAというものがあります。Observe(観察)、Orient(情状況判断)、 Decide(意思決定)、Act(行動)のサイクルを繰り返すというものです。これを意識することで、授業改善のプロセスが明確になると思っています。
授業に当てはめると、「子どもたちの現状を知る」⇒「子どもたちにどんな力をつけるのかを判断する」⇒「そのために必要な活動と目標を考える」⇒「子どもたちが活動し、自身で評価する」といった流れになるのでしょうか。まず子どもたちの状況をしっかり見ることから始め、今子どもたちにつけたい力を意識して授業を組み立てるということです。

子どもたちが主体的に取り組むためには、子ども自身が疑問を持ち、解決したいと思うことが大切です。それほど簡単なことではありませんが、このことを意識することが大切です。
この学校は、まずグループを活用することから始めていただいています。教師がかかわりすぎず、子ども同士をつなぐことを考えて授業に臨んでほしいと思います。。
実際の授業のビデオを観ると、子どもたちは自分たちが一生懸命取り組んだ時は友だちの発表を真剣に聞こうとしています。一方で、発表に続いて先生がコメントをすると集中力が落ちてしまう場面も同じ授業で観ていただきました。子どもたちの様子からいろいろなことがわかることに気づいていただけたと思います。
グループ活動の後の発表に時間がとられるという悩みをよく耳にしますが、全部のグループを順番に発表させることにこだわる必要はあまりありません。一つのグループの発表の後に、「同じようなことを考えたグループ」とつなぎ、それらのいくつかに簡単に発表させ、その上で、他の考えがあるグループに発表させるとよいでしょう。同じような考えを整理して聞くことができるので、時間の節約になりますし、また、焦点化もしやすくなります。
先生の仕事は、子どもたちの発表や考えを交通整理することと、その内容を教科の見方・考え方の視点や、メタな視点で価値付けすることにあります。一方、先生が子どもたちの発表をまとめると、「結局はそれが正解か。じゃあ写せばいい」と考える子どもが出てきます。そうではなく、「友だちの発言を聞いて自分の考えに付加する」「それまで出てきた考えを子ども自身にまとめさせる」ようにするとよいでしょう。どうしても板書をしないとまとめられない子どもがいるというのなら、子どもに発表をさせてそれをそのまま板書すればいいと思います。不完全であっても、「足してくれる人?」と他の子どもの考えも付け加えていけば、立派なまとめができます。子どもは先生のまとめは無批判で写しますが、友だちの考えはいったん自分で吟味をします。こういった過程が大切になるのです。

先生方には、非常に熱心に話を聞いていただけました。この学校で実際にアクティブ・ラーニングに取り組む先生が増えてきています。その中で、少しずつ授業改善に取り組もうという雰囲気ができてきていると思います。次回の訪問でどのような授業に出会えるのか、とても楽しみです。