日記

教師は子どもの発言を復唱しない方がいい?

公開日
2010/06/30
更新日
2010/07/05

授業ワンポイントアドバイス

「教師が子どもの発言を復唱するとよいですよ」というアドバイスをすると、「子どもが教師の発言を聞けばよいので、友だちの発言を聞かなくなるのでは」と質問されることあります。実際に「教師は子どもの発言を復唱しないように」と指導している地区もあります。本当のところはどうなのでしょうか?

まず大前提となるのが、教師が子どもの発言を復唱するときには、子どもの発言をできるだけそのまま復唱することです。例え間違いや不完全な答えでも、そのまま復唱することで、子どもは教師が自分を認めてくれたと感じるのです。復唱することの意味は教師が子どもを認めているという安心感を教室に作ることです。
ところが、教師は子どもが間違いのときには無視したり、逆に期待した答えに近いことを言ってくれると、今度はどんどん自分の言いたいことを足してしまいます。

「観察していてどんなことに気づいた。Aさん」
「泡が出た」
「他にはない」
「Bさん」
「白くなった」
「そうだよね。Bさんが言ってくれたように、石灰水の中に通すと白く濁ったよね」

これではAさんは「自分はダメだったんだ」と思いますし、Bさんも「あれ、自分の言ったことと違う。間違っていたのかな」と不安になります。自己有用感を持てませんし、教師との関係も作られません。
また、まわりの子は先生の言ったことが正しいと思うので、Bさんの発言を認めなくなります。

「観察していてどんなことに気づいた。Aさん」
「泡が出た」
「なるほど、泡が出たんだ」
「それってどこから出たの」
「ガラス管から」
「ガラス管からでたんだ。ガラス管から泡が出たときに気づいたことない」
「うーん」
「いいよ。じゃあ誰かAさんの代わりに答えてくれるかな。Bさん」
「白くなった」
「白くなったんだ。何が白くなった」
「石灰水」
「なるほど、石灰水が白くなったんだ」
「Aさん、どう」
「うん、思いだした。水が白くなった」
「そうだよね。水が・・・白くなった」
「石灰水が・・・」
「石灰水が白くなったんだ」
「じゃあ、AさんとBさんが言ってくれたことまとめてくれる人」

このように、子どもの言葉をそのまま復唱しながら、深めていくやり取りをすれば、子どもも達成感を持てますし、まわりの子も教師の言葉に反応しながら、友だちがどう答えるかを真剣に聞くようになります。

もちろん、いつも教師が復唱するのではなく、他の子に復唱させたり、評価させたりするなど、友だちの発言を聞く価値を持たせる工夫も必要になります。
教師と子どもの関係をつくるのに、子どもの発言を教師が「そのまま」復唱することは有効なことです。一律に「いい」「悪い」ではなく、学級の状況に応じて、教師が意図的に復唱を活用していただければと思います。