授業アドバイスと講演
- 公開日
- 2012/05/29
- 更新日
- 2012/05/29
仕事
昨日は、中学校で授業アドバイスと講演をおこないました。授業アドバイスに手を挙げる先生が7人もいて、とても充実した時間を過ごせました。
この学校は文部科学省の研究指定を受け、その軸足を授業に置き、協働学習を進めようとしています。グループやペア活動を取り入れ始めていますが、そのポイントがまだつかめていないようでした。
何人かの先生と授業を見ながら、その場で子どものようすを解説しましたが、授業のスタイルの基本が、まだ教えること中心から脱却していないようでした。子どもの活動が止まると、すぐに先生がアドバイスしたり、ヒントを説明したりしてしまいます。どうしても教師がしゃべりすぎるのです。また、課題のありようにも苦しんでいるようです。グループ活動に入っても、子どもたちが何をしてよいかわからない状態をよく目にしました。課題が自分たち共通のものになっていない、課題を解決するための見通しを持てていないのです。課題を共通のものにするためには、子どもたちが疑問を持つところから出発し、その疑問を全体で確認することが必要です。そのことが意識されず、教師が一方的に課題を提示してしまうので、何をすればいいのかわからなくなってしまうのです。課題解決の見通しに関しては、グループ活動の経験がまだ少ないので、グループ活動を始める前に全体で話し合うことや、グループ活動が止まっている状態で一度止めて、結論ではなく、何をやったか、どのようにアプローチしているかを発表させるなどの手立てが必要になります。課題を解決するために必要な知識や資料も教師自身が明確にしていないように感じました。知識を教えるか資料を与えるかとは別に、これらを意識できていないと子どもの状況に応じて適切な対応ができないのです。
講演前に1時間、数学の公開授業がおこなわれました。学区の小学校の先生もお呼びして、この中学校が目指す授業を伝えるものです。
ポイントを絞った導入。明確な課題提示。子どもが安心して話をできる柔らかい雰囲気。子どもの言葉をつなぎ、子ども自身で問題解決していく展開。子どもの発表の時の立ち位置、ちょっとしたつぶやきなど、ぼんやり見ていると気づかないような、細かところにも工夫が感じられるものでした。講演をやめて、解説したくなるような授業でした。以前からよく授業を見る機会のあった方ですが、この数年の進歩は素晴らしいものがあります。
授業の終盤で指名した子どもがずれた発言をしました。このとき、その発言を子どもたちで修正させました。そのため、本時のゴールである、文字を使って式をたてるところにたどり着きませんでした。この判断には賛否両論があると思います。そのことがわかっていて、あえて子どもに返すというところに、授業者の強い思いを感じました。こうして鍛えていくことで、より高い課題に挑戦できる子どもたちに育っていくと思います。次の機会にどのような子どもの姿を見せてくれるか楽しみです。
私の講演は、協働学習を支えるものとして、子どもの受容の仕方、教師の聞く姿勢、子どもへの外化の働きかけなどを中心に、公開授業の場面とできるだけ関連づけて話させていただきました。限られた時間の中でどれほどのことを伝えられたかわかりませんが、参加された方の授業を見直す機会になれば幸いです。
先ほどの授業者は、若手を中心に多くの先生方を巻き込んで、互いに授業を見せ合い、授業について話し合う機会をつくろうとしています。先輩としてよきアドバイザーになろうとしています。授業見せていただいた2人の若手の数学の授業はこの先生のよい影響を受けていることがよくわかります。公開授業はその前に見た若手と同じところでしたが、そのとき気になった場面を意識して見せていたように感じました。またその若手も、そのことにちゃんと気づいて、自分の授業に生かそうとしていました。よき先輩と後輩です。
この日授業を見せていただいた先生方に共通していたのは、子どもたちを受容しようとする姿勢と授業をうまくなりたいという向上心、アドバイスを受け入れる素直な態度でした。これだけで間違いなく授業はよくなっていきます。その上に一緒に学ぼうとしてくれる素敵な先輩がいるのです。彼らの今後の成長がとても楽しみです。私もとてもよい刺激を受けました。ありがとうございました。