数学の教師は数学の勉強をしない?
- 公開日
- 2012/09/05
- 更新日
- 2012/09/06
独り言
中学校の数学の授業アドバイスをするときに感じるのは、数学的な背景やその意味をわかっていないまま授業をしている教師が多いことです。自分は問題が解けるから数学がわかっていると勘違いをしているようにも思えます。
自分の教科に対する自信が大きいのでしょうか、他の教科と比べて教科の内容を深く勉強している方が少ないように思います。社会科の教師は常に最新の情報(地理や政治経済だけでなく歴史も新事実が出てきて変わる)や資料を探していますし、理科なども実験の工夫(新しい機器や素材がどんどん出てくる)や、新しい事実(科学はどんどん進歩していますし、身近に新しい応用例もどんどん出てきます)に対応する必要があります。国語も扱う文章が時代とともに変わっていきます。
ところが数学だけは恐ろしく古い内容を扱っています。というか、現代的なものを扱うためにはその基礎となる知識が必要となるために、まずはそこからというわけなのですが・・・。最新の数学が教科書に登場することはまずありません。しかも、中学校(高等学校も一部)では厳密な証明は求められません。基本的なこと(基本的・シンプルなことほど難しい)に関しては、なんとなく納得、説明で済まされることが多いのです。定義も曖昧なままのものが多いようです。
関数って何?
1次関数のグラフはが直線になることはきちんと証明したの?
平行線と直線が交わってできる同意角が等しいことは、平行線の定義からきちんと証明している?
実数って何? 有理数とは? 循環小数と非循環小数の違いはどこからくるの?
2(x+1)=2x+2と2(x+1)=1の=は同じ?
確率って何?
なんで連立方程式には{ がつくの?
・・・
中学生への説明の前に、数学教師は数学的に正しく定義でき、証明できるのでしょうか?
教科書の説明はそのことがわかった上で中学生にどう説明すればよいかを考えて作られています。中学生と同じレベルで理解していては困るのです。記述の背景にあるものを教師がしっかり理解していてほしいのです。
このことは、社会科を例にして話をすればわかると思います。たとえば、第1次世界大戦について教科書の記述と同じレベルの知識しかなくて教壇に立つことは考えられませんね。教科書には書かれていない背景や事実を知っているからこそ、何が重要か何をそぎ落とすといった判断がどのようにされているか、作り手の思いもわかるのです。わかった上でどう授業を進めるかという自分の考えが持てるのです。
数学は問題を解ければいいのではありません。それは学習の一つの結果なのです。定義一つとっても、矛盾のないもの、扱いやすいものにするための試行錯誤があるのです。そういう思考を大切にしてほしいのです。
教科書では凹多角形をあつかわないことをいうのに、具体例を1つだして、「このような多角形」としています。なぜ凹多角形といわないのでしょうか。それは、中学生のレベルではきちんと凸、凹を定義するのは難しいからです。では、星型多角形は?
視覚的になんとなくわかることもきちんと定義しようとすると大変です。逆に定義を考えることでそのことの持つ本質が見えてきます。少なくとも、教師はそのことを理解してほしいのです。
私の専門が数学だから数学教師に厳しいのかもしれません。しかし、他の教科の教師と比べて、どうしても甘さを感じることが多いのです。問題の解き方を機械的に教えている、覚えさせていると感じる教師が多いのです。その延長では高等学校でつまずいてしまいます。数学の教師だからこそ数学とは何かについて深く考え、教科書の背後にある数学の世界をしっかりと理解して教壇に立ってほしいのです。