中学校で授業アドバイス
- 公開日
- 2012/12/06
- 更新日
- 2012/12/06
仕事
昨日は中学校で数学の授業アドバイスをおこなってきました。2年生の外角の和です。
授業者は子どもをつなごうとはしていますが、つながったかどうかは意識していませんでした。子どもに説明させた後、正解かどうかを言わずに「これでいい?」「納得した人?」と問い返します。よい対応ですが、「いい」という声や子どもたちの挙手が有れば、それで次に進めてしまいます。これでは1問1答と同じことです。問い返すだけでは子どもがつながってはいきません。他の子どもを何人か指名して確認する。手が挙がらなかった子どもに納得できないことや困っていることをたずね、困っていることを共有して解決する。つながっているかを確認し、つなげるための次の手立てが必要になります。
友だちの説明に納得した子どもを指名して、もう一度説明させる場面がありました。指名された子どもは怪訝な表情で「同じことだけど・・・」ともう一度説明することに納得できないようすでした。「自分はわかったからいい」「わからないからダメだ」。そんな価値観が教室の中にあるように感じます。自分の説明で友だちに納得してもらう。友だちの発言を聞いてわかる。授業の中でこういう経験を積み重ね、一人ひとりが自己有用感を持つことが大切です。何を評価するかを意識して、子どもたちの価値観を変えていくことが求められます。「○○さんの説明でわかった人がこんなに増えたね」と正解したことではなく、友だちにわかってもらえたことを評価する。「○○さんの説明で納得したんだ。いいね。じゃあ、あなたの言葉でもういちど説明してくれるかな」と友だちの説明を聞いてわかったことを評価し活躍の場面を与える。こういう働きかけが必要になるのです。
三角形の外角の和が180°になることの説明を少し考えさせた後、「ひらめいた人いる?」とたずねました。パラパラと手が挙がりました。そこで授業者は「ひらめかなった人にはヒントをあげる」と説明を始めました。どうでしょう。数学はひらめかなければ解けない教科なのでしょうか。中学や高校の数学でひらめかなければ解けないような問題はまずありません。解くための考え方をきちんと身につければ、解けるようになるはずです。この場面であれば、「外角ってなんだっけ?」「今、外角についてわかっていることは何?」「三角形ついてどんなことを知っている?」「何が言えればいいんだっけ?」と子どもたち問いかけることで、既習の知識を整理し、それをもとに演繹的に考え、結論にたどりつくような活動が求められます。この他にも、帰納的に考えることや今までに使った考え方をもとに解いていくなど場面に応じた経験を積んでいくことが必要になります。解くための方法、アプローチを意識して課題に取り組ませることで数学的な思考力を身につけさせることが大切です。子どもたちに、「ひらめかなければ解けない」と感じさせるのではなく、「考え方を身につければ解けるのだ」と実感させるようにしてほしいと思います。
そのためには、ノートや板書に思考の過程が残るようにすることも大切です。なぜ最初にこのような式が出てきたのか、なぜ内角の和をここで考えるのかといったことが書かれていなければ、後から思考をたどることができません。残念ながら板書にも子どもたちのノートにも結論・結果だけで思考の過程は残っていませんでした。これも課題です。
ほとんどの子どもがわかったと手を挙げた後、「だいたい大丈夫そうだね」と練習問題に取り組む場面がありました。授業者は手の挙がらなかった子どもは机間指導でフォローするつもりだったそうですが、そのことを子どもには伝えていません。これでは、手の挙がらなかった子どもは、自分は見捨てられたと思ってしまいます。
最後の確認場面で、低位の子どもを指名しました。何人か同じような問題を答えた後なのできっと大丈夫と思ってのことです。ところが、答えることができません。そこで、「助けてくれる」と他の子どもとつなごうとしました。ところが、代わりの子どもが答えを言って終わってしまったのです。これでは助けたことになりません。肝心の応えられなかった子どもの状況は何も変わっていないのです。本人が自分で答えることが大切です。そうすることで初めて助けてもらったといえるのです。「ちゃんと聞いて答えてくれたね。ありがとう。助けてもらってよかったね」「助けてくれてありがとう」と2人をほめることもできるのです。
次の手立てがなかったり、おかしかったりしたため、結果として授業者の意図は達成できなかったのです。
子ども同士をつなごう、多くの子どもを活躍させたい。目指すところは決して間違っていません。しかし、そのための技術を断片的にしか理解していないために、結果はおかしなことになってしまっています。
授業後、一つひとつの場面を例に、できるだけ具体的に説明しました。真剣にかつ素直に聞いてくれました。とてもよい姿勢でした。一度に大きく変わることは難しいことです。時間はかかるかもしれませんが、どこか一つの場面でも変えることができれば、それをきっかけに変化していくことと思います。この日の授業がきっかけとなってよい方向へ変化してくれることを期待します。