実りの多い授業研究
- 公開日
- 2013/09/17
- 更新日
- 2013/09/17
仕事
前回の日記の続きです。
英語の授業研究は3年生の、丁寧にたずねる表現 ”Would you like … ?” の学習でした。授業者は講師の方です。今年度の英語科の授業研究のトップバッターです。講師の方が最初に授業研究に挑戦してくださるその意欲に、まず感心しました。
「食事を勧める」という ”situation” で授業は進んでいきました。授業者は、「丁寧な」たずね方ということを強調して”Would you like …?” を説明します。そのこと自体はよいのですが、丁寧でない言い方と比較することでコントラストをつけることが必要と感じました。「丁寧な」と「食事を勧める」というだけでは ”situation” はうまく伝わりません。「友だち同士はどうたずねればいい」というような、使い分ける場面をつくればよかったように感じました。
ピクチャーカードを使いながら全体練習をするのですが、どうしても口が開かない子どもがいます。3年生ともなると学力差がかなりついていて、全員の口を開かせることはとても大変なことです。しかし、教師が全員参加を目指していることを活動の中で子どもたちに伝えなければ、参加できない子どもは見捨てられと感じてしまいます。このことを意識してほしいと思いました。
子どもたち同士で会話をする場面がありました。一方が “Would you like some more?” と自分のカードに描いてある食べ物の絵を見せて勧めます。それを受けて、”Yes, please.” 、“No, thank you.” のどちらかで答えます。相手を変えて次々練習をします。授業者の意図は、決まりきった言葉を言うのではなく、好き嫌いなど自分の考えで答を選ばせることをさせたいということでした。また、答を聞くことで友だちの嗜好がわかるといったコミュニケーションも意識していたようです。子どもはカードを見せて “Would you like some more?” と言った後、返事を聞くとすぐに次に移ります。中には、返事をろくに聞かない子どももいます。子どもたちのテンションも上がり気味です。この会話に相手の言葉を聞く必然性がないことが原因のように思われます。絵を見れば、相手の言葉を理解しなくても返事ができる。返事を聞かなくてもそれで会話は終わり。聞かなくても活動は成立します。自分の言うべきことを言えば済むので、あまり考える必要がありません。テンションも上がってしまうのです。
このことについて検討会でも話題になりました。ある先生は、ただ ”Yes, please.” 、“No, thank you.” だけでなく、もう1文 “I like … very much.”、”I’m full.” などをつけてはどうかという意見が出てきました。話す内容を高度にして考える必然性を高めようということです。こういう工夫は大切です。授業者も同様のことを考えたようですが、子どもたちの実情を考えると、もう1文を付け加えさせるのは難しいと判断したそうです。大切なのは、文の内容を高度にするよりも、簡単な文章でいいので聞く必然性を高めることだと思います。勧めるものは事前に決めておいてもいいので、絵を見せずに “Would you like some more … ?” と聞かなければ答えられないようにする。相手の答に合わせて、”Oh, you like ….”、”Oh, you don’t like ….” と返す。これだけでも、充分に相手の言葉聞く必然性が出てきます。” Oh, you don’t like …, do you?” として、”Yes. I’m full.” などと、子どもの力に応じて発展させることも可能です。また、勧められる側の子どもに、お客様か友だちか相手との関係を選ばせてもよいかもしれません。それによって “Would you” と丁寧に聞くかどうかを選ばせるのです。
面白かったのは、先ほど口を開かなかった子どもが、この活動のあととてもよい表情をしていたことです。実際にうまく活動できたかどうかは観察できなかったのですが、友だちと何らかのかかわりを持てたことは間違いありません。子ども同士の人間関係がよいことがうかがえます。
この時間の主課題は、食事を勧める場面で5文の会話文をつくるというものです。子どもに会話文をつくらせるというのは授業者にとっては初めての試みだったそうです。こういう挑戦をしてくださることはうれしいことです。授業研究を通じて互いに学び合うことができます。
子どもたちは、会話文をつくろうと一生懸命なのですが、微妙にテンションが上がっていきます。本来のねらいである英文をつくる以前に、会話そのものをつくることにエネルギーが使われているのです。こういう状況はテンションが上がる傾向があります。
このことについても、検討会で話題になりました。子どもが会話文をつくりやすいように、“situation” を具体的にすることに時間をかけているという方がいらっしゃいました。子どもたちがその “situation” にしっかりと浸ることで、自然に言葉が生まれてくるということです。そうすれば、その言葉を英文に直そうという意欲もわいてきます。スキットも体を使ったとてもリアルなものになるそうです。なるほど、納得させられる話です。慣れないうちは、具体的に ”situation” を与えておくのも手です。紙芝居を用意して、会話の部分を空白にしておく、音声をカットしたビデオを見せるといったやり方です。その ”situation” にふさわしい会話文をつくらせるのです。
子どもたちがグループで発表し合います。楽しそうにはしているのですが、ただ発表して終わりのようです。互いの活動を評価し合う視点が明確になっていないのです。
この点について、子どもたちの英語活動の何を評価するかを明確にする必要があることが、楽しい授業という今回の授業者の目指す授業像とあわせて話題となりました。「『楽しい』にはレベルがある。そのレベルを上げていくことが大切である。そのためにも、授業者が子どもたちの活動を積極的に評価する必要がある」という意見が出されました。その通りだと思います。これに関連して、子どもたちがグループに分かれて活動している時にどのようにして全体を評価すればいいのかも話し合われました。教室の真ん中に入って見るという意見に対して、斜め前から見るという考えが若手から出てきました。全体を見て、必要に応じて移動するというその説明に皆さん納得されたようです。とてもよい話し合いでした。
何を評価するかについて、できれば学校全体で共通のものが持てるとよいと思いました。授業者毎ではなく、共通のものにすることで子どもたちはどの教師が担当になっても安心して参加することができます。教師も毎年1から指導する必要がなく、学校全体に継続性が生まれます。今回の話し合いをきっかけにこのことが継続的に議論されていくと素晴らしいと思いました。
授業検討会は、司会者が上手に話題を振ることで、たくさんのことが学び合えました。もちろん授業者が積極的に挑戦してくれたからこそ、よい話題が生まれたわけです。今後もこのような充実した授業研究がおこなわれていけば、英語科全体の力量が上がっていくことと思います。私もよい勉強をさせていただきました。ありがとうございました。