小学校で授業アドバイス
- 公開日
- 2014/05/26
- 更新日
- 2014/05/26
仕事
先週末は小学校で授業アドバイスをおこなってきました。市内の全小学校を年2回訪問しますが、その第1回目です。若手2人の授業と、2つの公開授業を参観しました。
若手の1年生の国語の授業は、授業規律に問題を感じました。子どもに規律が徹底できていないというより、授業者の中でルールが明確になっていないのです。印刷物を配った時にはどうするか。作業が終わったらどうするか。そういったことを一定のルールにすることを意識していないのです。
子どもたちは発表者の方を見て聞こうとしません。というより、友だちの発言にあまり意識が向いていないのです。授業者が発言者の方だけを向いて話を聞き、それを受けて説明するという一問一答形式だからです。子どもたちの発言をつなぐことを意識する必要があります。
また、指示が1回で伝えきれていません。作業に入ってからの指示の追加や修正が目立ちます。指示を明確にして、きちんと伝わっているかの確認を常にすることが大切です。
グループで発表する場面がありましたが、目標がはっきりしません。ただ発表するだけでなく、聞くことに意味のある課題にしなければいけません。1年生のこの時期はまだグループ活動は難しいと思います。まず、隣同士できちんと伝えあうことから始めるとよいと思います。
授業者は、授業規律を上手くつくれていないことや、この日の授業で自分がきちんと指示ができていないことをきちんと自覚していました。このことはとても大切なことです。自覚できていれば、変えようとする力が働きます。一つひとつの課題に対応していけばいいのです。まずは、自分の中で授業のルールを明確にすること、指示が1回で伝わるようにすることから始めてほしいと思います。
初任者の4年生の道徳は、落ち着いた雰囲気でした。授業者は発言者をしっかりと見て受け止めています。発言の終わった子どもはとてもうれしそうにしています。しかし、他の子どもたちは発言者を見ませんし、あまり真剣に聞いているようには見えません。授業者が発言中に他の子どもを見ていない、発言をつなぐことをしないからです。子どもの挙手で授業は進みますが、特定の5、6人だけが順番に発言しているのです。認められる子どもはうれしいので積極的に挙手して参加しますが、その他の子どもは認められる機会がないので、ただおとなしくしているのです。
授業は読み物教材を使ったものです。授業者が淡々と資料を読みます。その後で、ワークシートで内容の確認をします。これは全くムダな時間です。道徳はできるだけ早く内容を理解し、自分に引き付けさせることが大切です。読み取ったことを発表させますが、子どもたちはワークシートの空欄を埋めることに意識が向いています。最初は友だちの発言を聞こうとしても、授業者が発言の途中で板書を始めるとそちらを写しはじめます。まずは、発言を聞くようにさせなければなりません。
試合直前の練習で、雨が降ってきた中で練習を続けるかどうかの判断を迫る課題です。一部の子どもたちを指名して結論を聞いてから、グループでそれぞれの結論と理由を話し合わせます。班長が仕切っています。子どもたちはあまり積極的に聞き合おうとはしません。グループで結論を出そうとしていることが問題です。子ども同士の関係がよくないように見えます。
子ども同士をつなぐこと、特にできる子どもには友だちの考えを理解することを求めることが大切です。子どもたちの様子を見ているとたまたま道徳の時間だけのことではないように思えます。子どもたちを評価する言葉がほとんどなかったことも気になります。発言者もその内容に関して評価されることはありません。発言したということのみが評価になっているようです。
授業者はとても素直で前向きでした。この後の道徳の公開授業を私の横で見ながら、自分の授業を思い浮かべて真剣に考えていました。私の指摘を、自分の授業ではどうだったのかと、他人事ではなく自分のこととして聞いていました。次回訪問時にどのように変化しているかとても楽しみです。
4年生の社会科の公開授業はごみ処理場の社会見学の発表の後のまとめの場面でした。授業開始直前にちょっとした子ども同士のトラブルというハプニングがありました。そのせいもあったのか、子どもたちの動きはやや低調に感じました。
子どもたちに質問させるのですがあまり出てきません。またでてきた質問に対して、すぐにわからなければそのままで、資料やメモを見て探そうという動きが出てきません。自分たちの課題だと意識していないのです。
社会見学では事前に調べてわかったことと疑問を整理しておく、現場で疑問の答を調べることとその場ででてきた疑問、質問などとその答をまとめることが大切です。社会見学終了後にどのような活動をするのかもきちんと伝えておくことが必要です。ごみ処理場で排熱を利用して温水を作っている理由を考えさせるのですが、このことは社会見学を通じてみんなに持ってほしい疑問なのか、それとも一部の子どもから出てくればよい疑問なのか、教師が提示する疑問なのかがよくわかりませんでした。事前にこの課題が子どもから出てくるための働きかけはあったのだと思いますが、全員のものとはなっていないように思いました。社会科見学をする前に、子どもたちに問題意識をどれだけ持たせるかが大切だと思います。
グループの発表で、「どんなことを話した?」と問いかけます。どの子にも答えやすい聞き方です。ところが指名された子どもが上手く説明できません。ちょっと苦しんでいます。そのとき同じグループの子どもが助けるのではなく、くすくす笑うのです。グループを仕切っている、積極的に挙手する子どもです。この子どもは他のグループの発表になると一気に集中力を失くして聞いていません。自分が発表することだけに意識がいっているようです。子どもが落ち着いてよい雰囲気に見えますが、ちょっと心配です。
6年生の道徳の公開授業は、読み物教材を使ったものでした。4年生の道徳の授業と共通のことがたくさんあります。資料を読み取る時間を子どもたちに与えます。ここはできるだけ時間をかけずに、子どもたち自身の問題として課題に取り組ませる必要があります。しかし、子どもたちに読み取りさせると、登場人物を客観的にとらえた第三者的なものになりがちです。自分のことに引き寄せるためにはゆさぶることも必要です。主人公の気持ちにどれだけ入り込めるかが大切です。
この日の課題は、亡くなった子どもと食べたかったお子様ランチを注文した夫婦に対して、規則だから大人には出せないと上司に言われた店員がどうするかというものです。あなたが店員ならどうするという問いかけに、ほとんどの子どもはすらすらと鉛筆を動かします。これは、あまりよいことではありません。子どもの中に葛藤がないのです。悪い言い方ですが、教師が求める答を書こうとしているのでよどみなく動くのです。その中で、2人の手が動きません。やる気がないのではないのです。悩んでいるのです。授業はこの子どもを軸にして、何を悩んでいるかを発表させると子どもたちをゆさぶることができたように思います。
グループで聞き合うように指示します。話し合いではなく聞き合うというのはよいと思いましたが、いいと思ったら書き足すようにと指示をしました。子どもたちは、友だちの話の最中に書き足していきます。ワークシートを埋めたいという気持ちと「いい」という基準を与えたことで、取り敢えずよさそうであれば書き込んだのでしょう。ここは、「あなたがなるほどと納得したら」とすると、より自分に引き寄せることができたので、もう少しじっくり聞きあったのではないかと思います。
店員役を子どもにして、授業者が上司役でロールプレイをします。しかし、ただ単に演ずるだけで、目的がはっきりしません。「なんとしても上司を説得しよう」といった目標を持たせ、見ている子たちには「自分が上司なら説得されるか」といった視点を与える必要があります。子どもたちは傍観者的に見て、拍手をしますが何がよかったのかは意識していません。実のない儀礼的なものになっています。
この話は、店員が子ども用のいすを用意し「ご家族でお楽しみください」と3人分のお子様ランチを用意するという結末です。授業者はかなり時間を残して結末を伝えました。確かにいい話なのですが、店員の機転の利いた対応に夫婦が喜んだということで終わってしまいます。上司の立場、夫婦の気持ち、店員の立場で葛藤が起こるはずです。この話はうまく落ちがつきましたが現実はそううまくいくとは限りません。その葛藤を子どもたちにさせなければ道徳としては「?」なのです。結末は最後の瞬間でいいので、店員は「規則を破ったら馘首になるかもしれない」、上司は「規則を破ったら、次々に大人がお子様ランチを頼んで収拾がつかなくなる」といったそれぞれの立場を強く示し、子どもをゆさぶることが必要だったと思います。
公開授業を受けて、全体でお話しする時間をいただきました。授業規律はどのような姿を目指すのかを教師が明確に意識すること。できていないことを叱って減らそうとするのではなく、できたことをほめて増やそうとする発想を持ってほしいこと。Iメッセージを使って子どもとの人間関係をつくり、子ども同士をつなぎ認め合う場面をつくることで子ども同士の人間関係をつくること。グループ活動は、班長などをつくらず、結論をまとめないようにし、話し合いではなく聞き合いにすることなどをお願いしました。
授業者も含め、みなさんとても前向きに話を聞いてくださいました。また、四役の方が非常に熱心に授業を観察し、私の話を聞いてくださったのが印象的でした。授業改善に対する意識の高さを感じます。このような学校は、授業改善が期待されます。次回訪問時にどのような変化が起こるかとても楽しみです。