授業研究に向けてアドバイス
- 公開日
- 2014/06/16
- 更新日
- 2014/06/16
仕事
先週、私立の中高等学校で、今週行われる授業研究の4人の授業者へのアドバイスと検討会の進め方の打ち合わせをおこなってきました。
高校1年生の男子の体育の授業は2学級合同のハンドボールの2対1の場面でしたが、学級によって動きや反応が違いました。指示をした後、一方の学級はすぐに活動を始めたのですが、もう一方の学級はなかなか活動が始まりません。授業者はすぐに活動を始めた学級に対して声をかけ、アドバイスをします。まず全体で活動が始まるのを確認することを優先してほしいと思います。
子どもたちから、「オー」といった声は上がります。やる気と人間関係のよさを感じます。しかし、具体的なプレーに対する声はなかなか出ません。この活動の目標や評価を具体的に伝えておく必要があります。
私と校長の姿を見つけた何人かの子どもが、大きな声で気持ちのよい挨拶をしてくれました。部活動での指導の現れでしょう。このようなよい行動を広げるために、ほめることや他の子どもにも挨拶をうながすような働きかけを意識するとよいでしょう。
集合は前回見た時よりも子どもの動きが早くなっています。しかし、集まってから整列して座るまでの動きは授業者の指示で行いました。最後まで子どもたち自身で行動できるとよいでしょう。授業者に確認したところ、子どもたちだけだとどうしても整列がきちんとできないから自分が指示をしているということでした。そういうことであれば、教師ではなく体育の係に指示をさせるようにすればよいと思います。
次の時間の活動について説明をする場面で、子どもたちと対話をします。前回、一方的な説明でなく子どもたちとやり取りするようにアドバイスしましたが、そのことを意識してくれているようです。一方の学級の子どもがよく反応してくれます。授業者はつい反応する子どもたちの方を向いて話しを進めてしまいました。次の段階として積極的に参加しない子どもたちをどう引き込むかを考えるようにお願いしました。
高校2年生の生物の授業は顕微鏡による細胞の観察でした。細胞を観察した後、集中力を失くしてよそ事をする子どもが目立ちます。スケッチをすることも指示されていますが、なかなか行動に移りません。授業者は各グループを回って指導しているので全体を把握していませんでした。その場で何度かスケッチのことを指示するのですが、子どもたちのざわつきは収まらず動き始めません。前に立って、声を上げて指示をし直すと、やっと動きました。動き出すと、子どもたちはスケッチに集中しました。
連続した活動を指示した場合、一つのことが終わってもすぐに次の活動に移らないことがよくあります。一連の活動をきちんと理解していなかったり、目標が曖昧なためとりあえず一つの活動が終わると一息ついてしまったりすることが原因です。この学級の子どもたちは、やることがわかればきちんと取り組むことはできます。子どもたちが育つまでは、一つひとつの活動ごとにいったん止めて、次の指示と目標を伝えることをした方がよいように思いました。
高校1年生の英語はグループで訳をする場面でした。前回のアドバイスを受けて6人ではなく4人のグループ構成になっていました。友だちと相談してもいいのですが、一部の子どもしか相談していません。手が止まって、集中力を失くしている子どもが目立ちます。もう訳し終っているのかとも思ったのですが、時々思い出したようにペンを持ちます。手がかりがない状態で止まっているようです。授業者はグループ間を回っているのですが、個別に指導をしています。この場面では、手が止まっている子どもに対して、他の子どもとかかわるようにうながすことが必要です。グループ間を回るより、全体の様子を観察することが大切になります。
結局この状態が長く続き、訳し終る前に全体の集中力は切れてしまいました。活動の後は、結論や答を発表させなければいけないと思っている先生が多いようですが、そうなると、どうしてもできるだけ多くの子どもが結論や答にたどり着くまで待とうとすることになります。子ども同士がかかわれないと、できた子どもは遊んでしまいますし手のつかない子どもはムダに時間が過ぎてしまいます。かけた時間に対して実際の子どもの活動量は少なくなってしまいます。結論や答ではなく、過程や困っていることであれば、途中でも発表させることはできます。困っていることを共有し、その解決のための見通しを持たせてから子どもたちに戻せば、再び活動し始めます。
授業者は主語と動詞を訳のキーワードとして子どもたちに与えていました。であれば、グループ活動前か、途中でいったん止めた後に、全体で文の主語と動詞だけを確認して見通しを持たせることで、ずいぶん活動の様子は違ったように思います。
高校1年生の物理の授業は、小テストの解答場面でした。授業者は解説しながら問いかけますが、子どもに考える間を与えません。挙手する子どもを指名して進みます。しかし、前回の子どもをつなぐというアドバイスを意識して、正解かどうかを言わずに3人に発表させました。「3人とも同じようなことを言ってくれた」と言いますが、それ以外の子どもたちも同じ考えであるか、納得したかを聞くことをしなければ、積極的に参加した3人だけしかつながっていません。他の子どもたちは3人の発表をあまり真剣に聞いていません。それもそのはずです。必ず最後は授業者が説明するからです。教師が説明してくれることがわかっていれば、わざわざ友だちの発言を聞く意味はありません。子どもたちを指名することでかえってムダな時間を使うことになりテンポが悪くなっています。授業者は私が見ていることを意識したため、わざわざ子どもたちに問いかけたそうです。授業後、ここは時間をかけるところではなかったと気づいていました。自分で気づけているのならそれで問題はありません。限られた時間の中でどの場面を大切にするのかをいつも意識してほしいと思います。
4人とも前回のアドバイスを意識してくれていたことは、とてもうれしいことです。すぐに授業がよい方向に変わるわけではありませんが、意識していれば必ず向上していくものです。授業研究でどのような姿を見せてくれるか楽しみです。
面白かったのが、ベテランの国語の授業でした。
私が見た場面は授業者が範読しているところでした。子どもたちは教科書を目で追っているのですが、あまりよい姿勢ではありません。中には、半分寝そべるような格好の者もいました。ところが、続いてワークシートが配られるとやる気がないように見えていた子どもたちも突然起き上がり、意欲的に取り組みだしたのです。まわりと相談している子どもも何人もいます。
子どもたちは授業者が何を求めているのかをよく知っているのです。よい悪は別にして、授業者は聞いているのならその姿勢はあまり問わないようです。また、ワークシートの課題が子どもの興味を引くように作られています。ワークシートを使った活動に対して最初から意欲的なのです。子どもたちにとって、何を頑張ればいいのかとてもわかりやすい授業のようでした。ある意味、授業者と子どもたちの人間関係がよく表れていると思いました。
この日は、教科指導部の主任が積極的に声をかけてくださったおかげで、たくさんの部員とお話をすることができました。教科指導部の先生は授業改善にとても前向きです。今度の授業研究では、子どもの姿がどのようであったかを中心にグループで検討を行いますが、彼らがよい方向に議論を引っぱってくれることと思います。この学校ではこのような検討会の持ち方は初めての試みなので、グループ活動の後の進行は私が行うことにしました。全員の先生とお話しするのは初めてなので、どのような展開になるのかまだ想像がつきません。当日が楽しみでもあり、ちょっとドキドキでもあります。