日記

授業を変えようとする意欲を感じる

公開日
2015/05/21
更新日
2015/05/22

仕事

中学校で、授業アドバイスを行ってきました。4月末の訪問に続いて、今学期2度目です。

学校全体としては落ち着いていますが、1年生でテンションが上がりやすい学級が1つありました。この日は時間の関係で細かく様子を見ることができなかったので、次回訪問時には確認したいと思います。
1年生は初めての定期試験も終わり、学級、教科によっては、少し緊張が弛む場面が目につくようになりました。疲れも出るころで、不適応への目配りも必要な時期です。学級ごとにチェックをしてほしいと思います。
2年生は目立った変化はありませんが、日ごろはあまり集中して話を聞かない先生に対しても、試験の解答の解説であればよく聞いていました。自分が大切だと思えば聞くのです。子どもたちは、先生が求めること以外は、自分の都合で判断しているとも言えます。おそらくこういったことは、日ごろの生活面でも表れているのではないかと思います。来月には野外学習があります。子どもたちが自分で判断しなければいけない場面も多くあるので、彼らにどうあってほしいかをきちんと伝え、理解させておくことが必要です。細かい指示ではなく、「時間を守る」「環境を整える」といった方向性を与え、具体的にどのようにすればいいのかを考えさせ、行動できたらほめるようにします。授業と生活の両面で、各担任が自分の学級に対してだけではなく、学級の枠を超えて教科担任の先生と共に行うのです。先生によって態度を変える傾向のある子どもたちですが、どの先生も同じことを意識して指導することで、その傾向を変えることができるはずです。
3年生は、学習に対する意欲は維持できています。どの授業でも集中する姿が見られました。数学の試験の直しの場面では、教師がかかわらなくても真剣に取り組む姿を見ることができました。できるようになりたいという気持ちが伝わってきます。子ども同士で聞き合っている姿もたくさん見ることができました。どの子どもからも学習意欲を感じました。しかし、一部の授業では参加できずに孤立している子どもの姿が目につきます。こういった子どもは、学習面の苦しさだけでなく、人間関係でも孤立しているという問題を抱えているように思えます。先生が、まわりの子どもたちにその子と関係をつくってくれるよう働きかける必要があると思います。

3年生の授業を見ている時に、ある学級だけ子どもたちの姿がバラバラの状態でした。国語の授業です。騒いでいたりごそごそしていたりはしていないのですが、明らかに集中できていません。授業者は塾の講師だった方で、一問一答形式の課題で解説し続けています。ちょうどこの時、2年目の若手が一緒に授業を見ていたのですが、瞬時にこの子どもたちの様子に気づきました。この学級に限らず、どの学級でも子どもたちの状態を素早く判断できます。日ごろから子どもたちの様子を意識して授業をしていることがわかります。子どもを見る力がついてきていることに感心しました。
授業後、先ほどの国語の先生とお話しました。まず、どんな授業を目指すのかをたずねました。「3年生は受験が大切なので、そのためにも定期試験で点数を取らせたい。定期試験にでる問題を解けるように教える」ということでした。「定期試験に出る問題」という発想が塾的で面白いと思いました。初めて読む文章の内容を読み取れる力が国語の読解力です。そういう発想はなかったようです。読解力をつけるとはどういうことかを少しお話しさせていただきました。素直に私の話を理解して吸収しようという姿勢を見せてくれました。すぐには難しいでしょうが、少しずつ変わってくれると思います。これとは別に、子どもを見るということを話しましたが、言葉での説明ではわかりにくいと思います。次回訪問時に、一緒に授業を見ながら、具体的な場面で伝えることにしました。

1年生の書道の時間は、子どもたちが集中できていないことが気になりました。この時間に作品を提出するようですが、子どもがどれを選べばいいか授業者に聞いたり、両手に作品を持って悩んだりしていました。その一方で、なんとなく書き続けている子どももいます。作品を提出するというゴールははっきりしているのですが、どのような作品となることを目指すのかという質的目標と評価基準がはっきりしていないのです。「勢いがある」「バランスがよい」「整っている」といった書に対する評価の視点を明確にしておくことが必要です。その評価の軸を基に具体的な作品を見て評価する経験をさせるとよいでしょう。書き始める前に、いくつかの作品を見て、それぞれを子どもたちに評価させる。途中で、どのようなことを意識したら上手く書けたかを共有する。こういったことが必要なのです。
個別の対応の合間に、授業者が「静かにしろ」と言ったことも気になります。自ら死角をつくっているため子どもたちが見えていません。活動の評価が明確でないことと相まって、子どもたちがうるさくなってしまうのは必然です。注意をしても、個別指導をまた始めれば、元に戻ります。笑顔で子どもたちを見守ることから始めてほしいと思います。

3年生の社会科の授業です、
授業者は、授業スタイルを変えようと苦しんでいます。知識を教え込む授業から、子どもに考えさせ、子どもの言葉を活かす授業に変えることを目指しています。他の先生の授業もよく見学して勉強しています。この日の授業は「待てない」ことが課題でした。グループ活動の間に、子どもたちのまわりを動き続けています。子どもたちが困っていたり、手が止まったりしているとすぐに「ヒント」をしゃべります。子どもたちの活動中、常に授業者の声が聞こえてきます。これでは、子どもは集中しません。また「ヒント」という言葉は正解があるということです。ヒントをもとに教師の求める正解を見つけようとするのでは社会科の力はつきません。何をもとに考えるといいのかがわかる力が大切です。子どもたちが困っていても、自分たちで解決の糸口を見つけるまで待つこと必要です。手が止まってもすぐに教師が動いてはいけません。子どもたちの動きが止まったら、どこで困っているのかを共有させることを意識します。グループの中で、どこが困っているのかを聞き合い、共有して話し合うのです。それでも、考えが止まってしまっているグループが多いようであれば、活動をいったん止めればいいのです。全体で、どこで困っているのかを聞いて、同じところで困っている人がいないかを確認する。困っているところを共有して、自分たちで解決したグループにどのようにして解決したか、結論ではなく手段を発表してもらう。もし、誰も解決できていなければ、過去の学習場面など思い出させて、解決のための視点に気づかせる。子どもたちが見通しを持てたらもう一度グループで活動させる。こうすることで、自分たちの答を見つけることができるようになります。
授業スタイルはすぐに変えられるものではありません。しかし、この先生は変わるための努力を惜しんでいません。きっと自分なりの新しいスタイルを見つけることができると思います。

3年生の英語で、使役や状態を表わす”make”の学習場面でのことです。”make”を使った例文がいくつか板書してあります。その例文からキーワードを子どもたちにたずねました。”situation”が全くない状態でたずねても、単なるパズルです。資料の読み取りの視点であれば、共通のものを探すことは意味がありますが、それは語学の学習とは違った世界です。例文の読みを練習した後、意味を聞きます。何人かの子どもが答えますが、塾等で予習をしている子どもしか答えられません。真剣に授業に参加していても、知っていなければ答えられない質問ばかりされると、知っている子ども以外はやる気がそがれてしまいます。原則、知識は教えるか、調べるしかないのです。想像させるという方法がありますが、それには”situation”が必要です。
授業者はS V(make) A Bという形で教えます。この形と日本語の意味と結びつけます。「させる」という使役を表わす日本語は、当然ながら”situation”によってはふさわしくありません。”She makes me happy.”などは「彼女が私を幸せにさせた」ではわけがわかりませんので、「○○にする」という訳仕方を教えて、「彼女が私を幸せにしてくれた」にする必要があります。例文ごとに、日本語で意味を教える、考えるでは、言葉を理解できるようにはなりません。英語そのものを理解するのではなく、英文に応じた日本語を覚えることが英語の学習になってしまいます。日本語の訳こだわらずに”situation”ベースで学習すれば、「彼女がいて幸せ」といった日本語も出てくるはずです。
いくつかのパターンを丸ごと練習してから英作文をさせたところ、思ったよりもできていなかったようです。授業者は、このやり方ではダメなことに気づけています。謙虚に自分の授業を振り返ることができる方です。
しかし、この方もすぐに授業スタイルを変えるというわけにはいかないと思います。今までやってきた授業と”situation”ベースの授業では違いが大きすぎるからです。また、他の英語の先生も”situation”を意識した授業ができているわけではありません。英語科として授業改革に取り組む必要があるでしょう。
ちなみに、この”make”の使い方は、”root sense”から考える方が自然だと思います。”He makes a cake.”から”He makes me a cake.”、続いて”He makes me happy.”と少ないコントラストで言葉を積み上げていけば、自然に理解できるはずです。また、”I watch the movie.” “I am happy.”という”situation”をつくって、”The movie makes me happy.”という文をつくるというやり方もあるでしょう。”movie”を”picture”に変える。”happy”を”sad”に変えるというように、少しずつコントラストつけて、練習するのです。最後は”situation”を表わす2つの文を与えて、”make”を使った文をつくれるようにします。
教材ごとに英語科でこのようなことを相談できるようになってほしいと思います。

この他にも学びの多い授業がいくつもありました。明日の日記で紹介したいと思います。