日記

それぞれの課題が見える

公開日
2015/07/10
更新日
2015/07/13

仕事

小学校で授業アドバイスを行ってきました。市内の全小中学校での授業アドバイスの一環です。

2年生担任の初任者の授業は国語でした。
授業規律がまだしっかとできていません。緊張して余裕がなかったのか、頭が左右に動かず子どもたちの顔をしっかり見ることができていませんでした。授業は一問一答で進んでいきます。挙手が数人でも指名して、すぐに板書します。板書しながら黒板に向いてしゃべっている場面も目にします。
まずは、子どもたち一人ひとりを見ることから始めてほしいと思います。今、この場面で子どもたちにどういう状態になってほしいかを意識し、実際の姿との差を埋めることを考えるのです。子どもたちの様子が見えるようになれば、指示が通っているかどうかもわかります。指示が徹底できるまで待つことで、授業規律もできてきます。授業者は自分の授業をよくしたいという意欲があります。一つずつできることを増やしてほしいと思います。

5年生担任の初任者の授業は道徳で、男女の協力を考えるものでした。
「男女が助け合い協力するにはどんな気持ちが大切だろう」というめあてが書かれています。子どもたちがこれを見てしまうと、授業者が求めている答を想像してしまいます。自分の素直な考えは出しにくくなります。
範読をしますが、そのあと場面の確認を子どもに質問します。読み取り自体が目的ではないので、できるだけ時間をかけずに子どもたちに資料の中身を理解させる工夫が必要です。子どもに対して笑顔を見せることができるのですが、まだまだ少ないように思います。常に笑顔を意識できるとよいでしょう。
隣同士話し合うように指示しますが、あまり上手くかかわれません。理由はいくつか考えられます。子ども同士の関係があまりよくない可能性もありますが、「話し合う」という言葉には、客観的な答を合意するというニュアンスがあるため、子どもがつくろった答を言おうとするので言葉が出にくくなっている可能性もあります。思ったことを「聞き合う」という表現で指示するとよかったかもしれません。
子どもの発言に対してつなぐことをしません。何人かの発言で、「みんな」とまとめてしまいます。子どもが友だちの考えを共有することなく、進んでしまいます。子どもたち自身の気持ちに迫っていないので、どうしても他人事になってしまい友だちの話を聞いていない子どもが目立ちます。また、「本当にそう思ったのかな?」というように、どうしても自分のねらっている答に誘導しようとしています。このことも、子どもが集中して参加しない要因だと思います。子どもたちは、授業者に注意をされない範囲で手を抜いているように感じました。
男の子が気持ちと裏腹にきつい言葉を女の子に言ってしまい、関係が悪くなりますが、それでも、運動会で女の子が男の子を評価する言葉をかけてくれて、男の子の気持ちが変わっていくという資料でした。授業者は主人公の男の子の気持ちにそって進めていきましたが、ここは、関係が悪くなったのによい言葉をかけた女の子の気持ちに焦点を当てると、授業者のねらいに近づけたのではないかと思います。
最後にまとめの話をするのですが、子どもたちの視線が授業者に向いていなかったのが残念でした。子どもとの関係がまだきちんとできていないように思います。子どもを受容し認め、ほめることをもっと意識してほしいと思います。

6年生の授業は形声文字の学習の場面でした。
授業者は、指示が上手です。ワークシートを配る前に何をするかを確認することや、子どもたち一人ひとりをよく見て指示したことが徹底できているか確認することができています。子どもを受容することもできています。子どもたちは落ち着いて授業に参加していました。
発言中に混乱してうまく言えなかった子どもがいました。それに対して、「お助けしてあげて」「代わりに説明して」と他の子どもに発言を求めました。こういった言葉ですと、助けられる子どもはダメだったと否定的な気持ちになります。「○○さんの言いたかったことわかる人いる?」と混乱した子どもの発言を活かすことを考えるとよいでしょう。代わりに説明してくれたら、「○○さん、あなたの言いたいことはそれでよかった?」と本人に確認して、「○○さんの言いたいことよくわかったね」「わかってもらえてよかったね」と声をかけるのです。
漢字の読みには音と訓があったことを復習しますが、その定義はきちんと確認しませんでした。漢字は中国で作られたもの(国字は例外)で、その成り立ちを考える時に音が中国語であることが重要な視点になります。このことが、形声文字の成り立ちを理解することにつながります。きちんと押さえたかったところです。
ワークシートの問題は同音の漢字を穴に入れて正しい文をつくるものです。漢字辞典を使って作業します。授業者は作業中に音訓索引の使い方を説明しますが、漢字事典を使う前に確認するべきだったでしょう。せっかく漢字事典を使うのなら、一つひとつの漢字の持つ意味や、漢字辞典の記号の意味なども確認したいところです。これらの漢字すべてに「形声」という記号がついていることに気づいてくれたかもしれません。

6年生のもう一つの授業は、社会科でした。信長が勢力を伸ばした理由を考える場面でした。
授業者は子どもと目がよく合っています。板書中も笑顔を絶やしません。板書をしても子どもたちはすぐには写しません。指示がなければ話を聞くことを優先しているようです。授業規律がしっかりとしています。子どもたちの挙手が多いことも印象的でした。安心感のある学級がつくれています。
どの資料を根拠にしているかを意識させて考えさせています。社会科では大切なことです。5人のグループだったのですが、どうしても一部の子どもだけで話してしまいます。4人グループを使うようにしてほしいと思います。
子どもからいろいろと意見が出ますが、それをすぐに板書します。時間があまりなかったのかもしれませんが、同じ意見をつないでから、板書するようにしたいところです。まとめも授業者がするのではなく子どもにさせ、必要であれば子どもの言葉をそのまま板書するとよいでしょう。子どもから言葉が出てくる学級ですので、できるだけ子どもの言葉で授業を進めることを意識するととてもよくなると思います。

4年生は理科の電気自動車の実験でした。電気自動車を走らせるので、机や椅子のない集会室での授業でした。
子どもたちは床に座った状態で、しっかりと顔を上げよい表情で授業者の顔を見ています。授業規律がしっかりしていて雰囲気のよい学級です。
回路図の記号の復習では最初一人だけ手が挙がりませんでしたが、スイッチの時には全員の手が挙がりました。指名された子どもが答えると、「賛成です」と声が上がります。これだけ手が挙がるのですから一人だけ指名するのはもったいない気がします。全員を動かしたいところです。挙手に頼らず、何人もテンポよく指名したり、まわりと確認をさせたりしてもよかったと思います。また、なかなか指名されなくてがっかりする子どもがいましたが、授業者は声をかけてちゃんとその子どものことを見ていることを伝えています。子どもたち一人ひとりを大切にしていることがよくわかります。
電池の直列、並列のつなぎ方を確認した時、「2個つなぐ」と言葉足らずの発言がありました。授業者はそれを受けて答を書いたのですが、ここはわざと間違えたつなぎ方をして、子どもに言葉を足させたいところでした。
電池1個の電気自動車では坂を登れないことを実演してみせて、坂を登れるようにするためにはどのような回路にする必要があるかを考えさせます。ここでは、この課題のスモールステップを意識してほしいと思いました。直列、並列のどちらのつなぎ方をしなければいけないかを考える。その上でそれを回路図にする。2つのステップがあります。まず直列であることを確認してから回路図を書かせたいところでした。ここで、ホワイトボードに書かれていた直列、並列のつなぎ方の回路図が消されていました。できれば、わからない子どものヒントとして残しておきたいところでした。
回路図の確認をしたのち、実際に電気自動車を組み立てます。子どもたちが戸惑っていたのは、回路以前の車軸とモーターをどうつなぐかでした。ここを子どもたちに思考錯誤させるのも面白いのですが、ここで時間を取られると作業の進み方の差が大きくなります。最初にここまでの説明をして作業を区切るか、途中でいったん作業を止めて全体で確認をするとよかったと思います。早くできた子どもは、走らせたくてしょうがありません。最初は確認のためにちょっと動かしただけでしたが、次第に勝手に走らせる子どもが増えてきます。教室を分割して、できた子どもをそこに移動させる。グループで作業をさせ全員ができれば、坂に挑戦する。こういったやり方もあると思います。ただ、グループにした時は早くやりたいために、頼まれないのに教えてしまう子どもが出てくる可能性があります。このことには注意が必要です。
支援が必要な子どももいるのですが、そばにいた子どもが助けていました。グループにはしていませんでしたが、他にも子ども同士で聞き合っている場面を目にします。子どもたちの関係がよいことがよくわかります。
自動車のデザインは、前後が今一つはっきりしないものです。そのため、後ろ向きに走っていても子どもは気づきません。電池の向きを意識させないためにそのようなデザインになっているのかもしれませんが、車の前後を確認しておいて、「前に進む」という条件をつけて、電池の極性とモーターの回転の関係を意識させてもよかったかもしれません。
授業の後半は、電気自動車をつくることにほとんどの時間がとられてしまいました。回路図は同じでも、実際のつなぎ方はいろいろあります。電池を入れないで、互いの配線を見てこれで上手くいくかを確認させる。電池はどう入れるといいかを指摘し合う。こういった活動があってもよかったかもしれません。
子ども同士がかかわることができるよい学級がつくれているので、かかわることで考えが深まるような授業に挑戦してほしいと思います。

先生方一人ひとりの経験に応じた課題が見えてきたと思います。それぞれの課題を意識して、授業を工夫してほしいと思います。
指定研究授業については、次回の日記で。