(2) キーワード2 :長所伸展法
- 公開日
- 2023/08/06
- 更新日
- 2023/08/06
船井幸雄の人間学
(2) キーワード2 :長所伸展法
イの原理は船井幸雄氏の言葉を借りると「長所伸展法」という考え方である。
その人の運のいい所というのは、その人の長所に他ならない。長所を伸ばすという方法が人間でも組織でも本来あるべき方法であってしかも一番効率がよいと船井氏は述べている。
〔教育への適用〕
その人のいい所を見つけて伸ばしなさいというのは、教育では当然のことである。例えば、学力不振児がいたとする。その子どもは普通国語から体育にいたる八教科で不振になってしまっていたとする。この場合、八教科をどれも力を入れて指導しても効果はあがらない。八教科の内どれか少しでもできそうな科目があったとする。それに集中的に指導を加えるとよいのである。そうすると、例え、一科目でも自信がつくのである。この自信という力は大きい。ここからつぎに二科目目をねらえばいいのである。この方法論は私の過去の教職経験からいって正当だと言える。脳生理学者の千葉康則氏は『才能を伸ばす人、つぶす人』(PHP文庫)の中で、一点突破法ということを主張されている。多方面作戦よりも一点突破法のほうが脳機能全体の促進に役立つと述べている。船井氏の主張を裏付けるものである。
船井氏はまたこうも述べている。「長所伸展法の反対は短所是正法がある。短所是正法は最も効率が悪い方法である。なぜなら、長所伸展法の場合は自分の得意を伸ばすのだから楽しく取りかかることができる。これに対して、短所是正法の場合ははじめから苦手意識があるからいやいや進めることになる。だから、やらなければならないと思っていても力が入りにくい。その結果、あまり伸びないということになるからなかなか自信に結びつかないわけである。」つまり「長所はすぐに大きく伸ばすことができる。すると短所は相対的に目立たなくなるのである。」と言っている。
個性を伸ばす方法はこの長所伸展法がぴったりだと私は考える。
算数科でも運のいいところは何かと考えてみた。第一に、問題が解けることである。解けなければ算数科の学習は始まらないと言っても過言ではない。算数・数学の場合、問題解決はギャンブルそのものである。ギャンブルという言い方は不謹慎かも知れないが、子どもにとっては解ければ100点、解けなければ0点であるのでやはりギャンブルなのである。問題が解ければ最高に嬉しい状態となるのである。だからこそ、授業で提示する問題は子どもの力に合った問題でなくてはならないし、また問題を提示したら解けるように指導・支援しなければならないのである。解決の見通しを強調するのも解けるためには是非必要なことだからである。ただし、見通しは、子ども個人が持つものであって.集団で見通しをたてると模倣に終わるので気をつけたい。もし、集団で見通しを立てたい場合は少し暖昧な方がいいのである。その方が気づきの喜びがある。
第二に、算数・数学の運のいい所は、算数・数学のよさである。簡潔・明瞭・一般・統合などや単位の考え方のような「よさ」が運のいい所なのである。新指導要領で算数・数学のよさがうたわれたのは非常にいいことだと思った。だから、問題が解けたあとは、よさの認識化と定着が図られなければならないのである。