3月11日(土)13:30より第12回セミナーを実施しました。
- 公開日
- 2023/03/13
- 更新日
- 2023/03/13
社会連携
3月11日(土)13:30〜15:30に第12回セミナーを愛知文教大学 ABUラウンジにおいて実施しました。講師は、学び合う学び研究所 所長の中島淑子です。「わかることの意味を考える」をテーマとして、小学校1年生が算数科で学習するアナログ時計の読み取り方について、お話をさせていただき、自分自身を学ぶことができました。
今回の報告は、講師である中島淑子自身が書かせていただきます。
○セミナーの流れ
⒈「いろはに」算数による操作活動
⒉アナログ時計の読み取りに対するイギリスや、日本での状況
⒊「アナログ時計の指導は、必要だろうか」をテーマとして話し合う
⒋測定することの歴史や、測定することの意味を考える
⒌「時計の指導」の小学校1年生の教科書を見て気がついたことを話し合う
⒍「時計の指導」に関する、中島の今までの研究成果と、指導の方法を知る。
⒎「時計の指導」に対する、より良い指導法について話し合う。
○セミナーの活動
⒈「いろはに」算数による操作活動
小学校1年生の子どもたちがどのようにして数を認識し、計算できるようになるかを体験します。算用数字ではなく、1を「い」、2を「ろ」、3を「へ」として置き換えて計算を行います。低学年の子どもたちが、どのように概念的な理解をしていくかについて、理解していただきたいと考えました。
⒉アナログ時計の読み取りに対するイギリスや、日本での状況
アナログ時計が読めないことから、教室の時計をデジタルに変えようとするイギリスや、時計が読めないことから劣等感を抱いている成人や子どもたちの姿を紹介しました。
⒊「アナログ時計の指導は、必要だろうか」をテーマとして話し合う
小学校1年生の指導者にとっても、時計の学習は指導の難しい内容です。デジタル時計もあるのですから、学校で指導する必要はあるかを考えていただきました。その結果、1時間後や、後何分か残っているかを考えるのが容易なことから、アナログ時計の指導は必要だというみなさんの意見でした。
しかし、アナログ時計の読み取りのできない人が、劣等感を抱いたまま生活しなければならないような学習は、必要なのだろうかと考えます。
私が、小学校1年生の担任だったとき、年間4時間の指導時間で、アナログ時計を理解させることは無理だと感じていました。しばらくすると、保護者の方の努力により読めるようになってきます。指導法のどこが不十分なのかも分からないままに、退職し、大学院にて研究を始めました。
⒋測定することの歴史や、測定することの意味を考える
時計はなぜ右回りかについてお聞きしたところは、日時計との答えがありました。また、太陽が真南になるときだけ1年中変わらないことから、時計の12時が始まりの0を表していると考えます。
さまざまな測定の器具は人々の創意工夫により作られてきた歴史があります。創意工夫の一つの結論が、アナログ時計だと思います。砂時計、日時計、水時計等を工夫してきた人類の歴史を、指導の中で子どもたちがたどることにより、アナログ時計の指導法が見つかるのではないかと考えています。
⒌「時計の指導」の小学校1年生の教科書を見て気がついたことを話し合う
教科書を見て、ある先生から、短針と長針が一緒に回っているから、混乱するのではないか。また、短針だけでも、○時半といった言い方は、わかるのではないかという意見が出ました。中島は、100円均一で購入した掛け時計の不必要な針をペンチで切り取り、長針だけの時計、短針だけの時計、秒針だけの時計を作り、それぞれの針の動きを見せる方法を、学校での指導に使用したことがあります。そこで、12までしか学習していない1年生の9月には、長針を見せずに、短針だけの時計を用いて指導すればいいのではと考えています。同じ考えをお聞きしてうれしく思いました。
⒍「時計の指導」に関する、中島の今までの研究成果と、指導の方法を知る。
ほとんど研究されたことがなく、未知の分野である時計の指導法の開発を行ってきました。さまざまな教具を作りながら、子どもたちの誤答の原因を探ってきました。
その中で、日時計と時計との関係について話をさせていただきました。ある先生から、太陽の動きと時間とが連動して示されているソフトがあるとのお話を伺いました。
時計の学習は、読み取りの学習に終始して、アウトプットの少ない学習です。例えば、グループごとに時計の学習のソフトを使って、遠足での活動のスケジュールを作らせるのはどうでしょうか。「1時10分から2時分までグループで遊び」と入れると、時計にそれぞれの時間が表示され、50分間という表示が出れば、時刻と時間の理解が容易です。
⒎「時計の指導」に対する、より良い指導法について話し合う
1本の半径に切り込みのある2枚の円形の厚紙を重ねて、1時間ごとに短針が動く様子を表す教具を作成しました。教室で何度も使用してきた教具です。ある先生から、上に重ねる円形の厚紙は、半透明にするか、小さい円形にするとわかりやすくなるというアドバイスを受けました。ご指摘のとおり、時計の数字が見やすくなりますので、改良を重ねたいと思います。
○講師の振り返り
今まで、長さ、面積、体積に関しては、さまざまな場面での発表を経験してきましたが、時計の指導に関する内容での発表は初めてでした。説明不足であった内容もあり、反省しています。次回から、反省を生かしていきたいと思います。
大学院に入った16年前から、小学校の学級での授業を通して、実践を行ってきました。担任の先生のアドバイスを受けながら、改良を重ねて様々な教材を作ってきました。今回のセミナーでは、多くのご意見をいただきましたので、今後の教材開発に生かしたいと思います。講師である私が、「学び合う学び」をさせていただきました。ありがとうございました。
〇参加された方からの振り返りを紹介します。
◆今日のセミナーで重要だと思ったことは、時計の学習を通しての子どもの認知です。
時計の指導を通して、子どものわからなさの根幹を探る指導法について、様々な観点から紹介していただけた、とても勉強になりました。一つのテーマでとことん追求することの大切さも実感できました。工夫された教具は、とても価値のある物だと思います。ぜひ、多くの学校へ紹介していただけると、困っておられる先生方の支援になると思います。
◆時間の流れ(量的な捉え)と時刻の違い。そこを区別して教えなければ、時間という概念が獲得できない。
それを現場では、時刻を通して時間を教えようとする傾向がある。自分がどうやって時間という概念を獲得したのかは、おぼえてはいないが、こうやって問い直してみると、人間は複雑な思考をすることができる存在だということをあらためて知らされる気がする。
楽しい時間でした。ありがとうございました。