4月22日(土)13:30より第1回 セミナーを実施しました。
- 公開日
- 2023/04/28
- 更新日
- 2023/04/28
社会連携
4月22日(土)13:30〜15:30に、第1回のセミナーを愛知文教大学 201教室において実施しました。講師には、名古屋大学大学院 教授 柴田 好章先生をお招きし、<子どもの学びをどうとらえるか?〜授業記録による授業分析の方法〜>をテーマに行いました。
今回は、29名の申し込みをいただき、参加いただきありがとうございました。
1.授業研究の目的と今日的課題
〇時代をこえた授業研究の目的として3点を、さらに
〇特に、今日的な状況において大切にしたいこととして、3点を示されました。
・研究授業は、観察 ➡ 討論 ➡ 成果 ➡ 計画 のサイクルを回すこと
・授業とは教材を介した、子ども同士の学び合いだとすると、授業研究とは、子どもの姿を介した、教師同士の学び合いである。
・ここ30年間の世界における教師教育の課題、教師の発達の二つのキーワードは、
Reflection=子供の姿に照らして、教師の行為を振り返る・価値づける
Collaboration=実現したい価値(ビジョン)の共有・追及 ← 対話を通して
学校における授業研究の大切さは、子どもの名前がわかり、同じものを見て語り合えること。
学校の授業研究で使われる言葉が重要で、その言葉を共有することが大切である。
2.授業研究の改善
〇分離型モデル ➡ 参加型モデル
・「授業者へ質問をしない」➡「発言者が、私はこう思うと発言してから、授業者へ訊ねる」へ変えていくことで、対等・平等な学びの実現をしていくのではないか。
〇授業研究では、How?を明らかにするために、まずWhat?やWhy?を問い合うことから始める。
〇名古屋大学における授業分析の歴史の紹介、授業の逐語記録
・研究はわからないから始める。授業を観察し、その後の授業研究は、同じツールを使い、子どもの姿を語り合うことを大切にしていき合い
〇授業研究では、事実と解釈を往復させることが大切
〇成果の累積、手法の発展、理論の構成、現場への貢献
〇授業記録を読む3段階 知る・捉える・捉えなおす(自分の授業像を豊かにする)
〇授業分析には、固有の役割がある
・授業における子供の可能性を明らかにする
・子どもはどう学んでいるのか
・生きている子どもをどうとらえるか
教師は、子どもをよく見ているが、研究では、子どもの見方を変える必要がある。授業中いつも意思決定を迫られている主体者としての教師は、子どもの内側に入ってみることが重要である。そのために、子どもの捉え方を、(ありのままの姿—なりつつある姿—ありたい姿)という幅でとらえる見方が生まれる。
ここまでの講義に対して、それぞれの立場からグループで共有してください。10分
グループで学び合う
全体共有
授業研究を推進する立場からの学び
・<小学校担当>校内の授業研究の推進するために、共通のツールとして逐語記録を作成してくださいということが負担だろうし、自分の学校では付箋による授業記録を実施したこともある。付箋に記入されるポイントにもバラつきがみられる。同じ授業を見て、共通なものを見ていないという難しさを感じる。
・<小学校担当>研究指定を受けており、授業研究をどうやっていこうかと考えている。授業分析を作っていくこと自体が楽しいことだと思えたので、これから頑張っていきたい。
・<高等学校担当>学校では、教科の中で授業研究を進めているが、教科をこえると言葉が通じない。授業を語る共通の言葉がないというのが現状である。
・<中学校担当>今年になり校長から言われたことは、持続可能な教員になるために、外部に頼りすぎず、自分たちで学べるような教師集団にしていくことを考えてみようでした。4月に提案される学校が育てたい生徒像にたいして、教員一人一人にイメージができていない。今日の話をお聞きして、学校でどう伝えようか考えている。
— 休 憩 — 歓談
授業者の立場から:
・<少学校6年担任>本校でも学び合いを行っているが、個々の教師のビジョンはばらばらであり、授業研究がつながっていかない。授業検討会では、子どもの名前が出てくるが、「この子だからしょうがないね」で終わってしまう。授業に消極的な子どもたちに、私たち教師がどうして行ったらいいのかの議論までに至っていない。子どもたちは教師の指示をよく聞き、きちっとしている。一方で、自分たちで考えたことを言葉にすることが苦手な子どもたちであり、どう接していったらいいのかが課題です。
学校アドバイザーの立場から:
・自分が研究者になろうと思ったのは、実践をしてきたことの背景にある理論を知りたいと思いこの道を選んだ。授業研究には、その拠り所がいるだろうと感じている。今まで参加者の言葉を聞いていて、現場で悩んでいる教師は独りで悩みをかかえているが、みんなの悩みになることが大事で、授業のことを語り合える文化をつくることを大切にしていきたい。
3.授業のデザインと評価の視点
〇子どもと教室(教室の中にいる子ども)
・教室に一人一人の居場所があるか・自分の思いを素直に表現できているか・失敗を恐れずに挑戦しようとしているか
・日比裕(1978)の発言にみる授業の5段階から、子どもの発言が深まっていく教室へ
・居場所づくりの難しさ
〇子どもと子ども(関係性)
・他者の思いを素直に受け止める
・意思表示しやすい気遣い・他者の言葉に耳を澄ませる
〇子どもと考え(思考)
・思考に論理的な深まりがみられるか
・よい発問は、子どもの中に問いが生まれる。主体的な思考には欠かせない。
・深い学びをもたらす学習形態 個 → グループ → 全体 → 個
<三つの授業事例>から
・子ども同士の違いを活かす(予選—決勝)トーナメント方式の授業に陥っていないか
〇リズム・間・雰囲気
・落ち着いた雰囲気・真剣さとユーモア・温かい雰囲気・リズムと間
・教師がモデル・二つの沈黙
〇集団的な思考
・多様な考えが表現されているか・考えが構造的に整理されているか・考えの多様性が学習の発展に寄与しているか。
4.授業分析演習「この幼虫は、ガかチョウか?」から考える
授業の概要 少学校2年 生活科:生き物を持ち寄って、順番に発表し、質問し合う授業。
幼虫を持参した子どもYとクラスの子どもたちの、対話記録を読む。
Y49発言:ガでもチョウみたいに糸はついているけど
〇この発言を、特にけどをどうとらえるか? 省略されているものは何か?Yの気持ちは?
C52発言:もし、ガとチョウで、この幼虫が、ガだったらどうしますか?
Y53発言:ガでも、育てて大きくなったら、別にガでもチョウでもどっちでもいい。
〇Y53発言の意味を考えてみることは、いい研究になる。
働き方改革の提唱以来、授業記録を読むことは、部の悪い状況に置かれたが、授業記録を教材にして教師が学び合うことは、有効になると結ばれました。
参加された方からの振り返りを紹介します。
◆今日のセミナーで学習した中で重要だと思ったことは、学校における授業研究の「参加型モデル」の構築と授業分析のあり方です。
目指すべき授業研究の方向性を示していただけたような時間でした。この職員にしかできない学び、この子どもたちにしかできない学びを、追求していきたいと強く感じました。
こんなにも近くで、こんな素晴らしい講義を聴く事ができ、とても心強く感じました。次回は本校職員も連れて、参加したいと思います。ありがとうございました。今後もどうぞよろしくお願いします。
◆今日のセミナーで学習した中で重要だと思ったことは、教師自身の専門職としての自立です。
とかく授業者の力量向上のために授業研究が行わる傾向がある中、「授業研究は子ども理解である」というメッセージには、心を打たれました。また、名古屋大学における授業分析の歴史を改めて振り返った時、重松先生が言われた「教育における民主化の一つの鍵が、教師が行う研究活動であり、それは教師自身に専門職としての自立をもたらすことができる」という言葉の意味が、今の自分にすごく勇気を与えてくれるような気がしました。教師のプロフェッショナルとしての専門性は、教師同士の学び合い無くして高まりません。そのことを、現場の皆さんと共有していきたいと思いました。