学校日記

6月10日(土)13:30より第3回セミナーを実施しました。

公開日
2023/06/20
更新日
2023/06/20

社会連携

 6月10日(土)13:30〜15:30に、第3回セミナーを愛知文教大学201教室において実施しました。
講師には、東海学園大学 講師 埜嵜 志保先生、実践発表者に刈谷市立朝日中学校 伊倉 剛先生をお招きし、「問題解決学習の実践から考える主体的な学び」をテーマに行いました。

 セミナーには、北海道からの参加者も含め26名の申し込みをいただき、以下の内容で進行しました。
第1部
〇実践の概要の説明:伊倉先生
〇本時の展開(分節)の説明:埜嵜先生
〇グループでの授業記録の読み合い、意見交流
  — 休 憩 —
第2部
〇全体での意見交流
〇単元づくりの想い、願い:伊倉先生
〇本実践から考える主体的な学び:埜嵜先生

第1部
□ 本日のスケジュール:埜嵜先生
□ 本実践の概要の説明(15時間完了):伊倉先生
 授業テーマ:日本の農業は「強い農業」になり得るのか。を設定した背景が語られました。テーマは、第6時までの追求で共有された問題であり、この問題の解決を目指して、第7・8時に取材を行った。本時(11/15時)の授業記録は、取材を通して考えたことをもとに作成した「追究まとめ」を読み合った後の、話し合いの授業です。
総発言数:103(教師:43[ほぼ指名]、生徒:60)
□ 本時の展開(分節)の説明:埜嵜先生
 本時までの流れの確認、共有されたテーマ:日本の農業は「強い農業」になり得るのか。をもとに取材し、生徒一人ひとりがノートにまとめた「追究まとめ」をお互いに読み合い、それをもとに子どもたちが話し合う内容になっている。
話し合いで進んでいく授業の構造を全体的にとらえるために、活動や内容のまとまりで区切ったものを「分節」と呼んでいます。

分節  発言番号   分節の概要
1.  1C〜22T  新規就農者の獲得
2.  23〜30T   耕作放棄地の活用の難しさ
3.  31〜40T   農業の進化
4.  41〜51   国による支援と就業のコスト
5.  56T〜80T  藤井さんの有機栽培
6.  81〜95   ICT活用と販売方法
7.  96T〜103C 多様な農家の共存

 授業記録を見てもらうと、子どもたち一人ひとりの発言が非常に長いことに驚かれると思います。今日は、分節4・5を中止として授業記録を読み合いましょう。

■ 授業記録の読み合いをして、授業記録で気になったことをグループで共有(25分)

— 休 憩 —

第2部
■ 全体共有 各グループでどんなお話が出ましたか。〇参加者●伊倉先生△埜嵜先生
〇多面的な学びだった。発言の最後には、自分の考えが入っていておもしろい。72Tの発言で疑問に思ったことがありました。
●どう疑問に思ったのか聞かせてください
〇自分の授業の中で、おもしろい発言があると、反射的に訊いてしまうのですが、72Tでは、伊倉先生の意図が何だったのか訊いてみたかった。
●めちゃめちゃ気になることがあるんだけど
〇俊哉くんの好感度が高いです。71、63教材に入り込み、何とか伝えようとしている姿が尊いと感じました。具体物を見せながらの発言も素晴らしい。51の発言により授業の雰囲気が、大きく変わったのではないか、その時の子どもの表情やノンバーバルなことを知りたいと思いました。
〇子どもたちが自分ごとになっている。調べた知識を持って発表しているが、それでも足りないので友達の考えから学んでいる。91教師の焦点化。この生徒の姿は、1単元や1時間では培えない。どうしたらこんな生徒になるのかとても気になる。
〇自分ごとになっているとの発言に近いことを感じた。子どもたちの発言には、自分の発言を言っているだけでなく友達の発言につながっていてすごいなと思いました。
〇自分の分かったことを話したくなるのが自然だが、前の人の考えをつなぎながら発言している。63の発言の具体物を出すところでも、先生のファシリティートがあったと感じる。先生が子どもたちの考えをよく理解している。
●49の発言が長すぎると思っている。他の生徒は、長すぎて聴けない。他の生徒の発言も長いが私は聞けました。実は、前の時間に全員の「追求まとめ」を読んでいるので、一人ひとりがわきまえて発言できている。
〇こんな授業記録を拝見したのは初めてです。一冊の本のようです。子どもたちの発言は、言いたいことだけでなく、友達の考えをちゃんと聞いている。そこがすごいなと感じました。41、45、47の発言は何とか支援したいという立場での発言だった。49の発言は支援の方法になっている。これは、取材をしたからこそ、農家を何とかしたいという想いが生まれたことではないか。39の発言では、お金の話が出ているが、子どもたちにとって、お金は重要なファクターであり、その後の話し合いに影響している。55の需要と供給の発言があるが、この生徒はどこまで深く考えて発言しているのか、考えさせられた。
△伊倉先生、生徒の姿は端的にできるものではない。という点に関心があったが。
●みなさんの意見から、焦点化していければいい。
△63の彼だけが、具体物を持っていた。どういう意図があったのか。
〇訊きたいことがいっぱいあるが、お金のことがずうっと気になっていた。お金の話になって、子どもたちは変わってきた。先生の発言にも変化があった、ここが教師の出場なのではないか。51、55と63は同じところに取材に行っているが、発言が違うのが気になる。
●藤井さんの農家には、3人と一緒に行きました。54の発言で、このお金で農家がやっていける。と発言したが、教師としては、大丈夫かと感じ、立ち止まりの発問をした。
〇42Tの先生の発言は、あおっていると感じた。先生の願いというか当事者意識をもってほしいと感じ、その後子どもたちが取材に出かけ、願いまで述べている。49までそうした発言が続いている。
●たぶん、72も同じです。農家がやっていけるかどうか、どうして藤井さんが苦しんでいるのかを明らかにしていきたかったからです。
△ナスを持っていた俊哉さんの発言をだすのに、ここだなとタイミングを考えていたように思いました。ここで登場させた想いは?
●俊哉さんの発言が、この授業の中心になるだろうなと考えていた。この発言をみんなで考えることで、強い農業を深めていきたい。怜音さんの後にしようと決めていた。この3人には、農家に一緒に行っていたのでいいのかなと。
〇俊哉さんの示したナスは、机の上にあったのか、隠していたのですか。
●袋の中に持っていた。
〇ということは、ここぞという時に出そうとしたんですね。
●俊哉さんは、純粋な子です。
△私は、この授業を直接拝見したのですが、俊哉さんの印象は控えめだったんです。ナスを出すのも、ほかの子に促されながらが。授業記録に文字起こしをしてみて、発言がこんなに力強いことに驚きました。
〇なんかモヤモヤしているのでお聞きしますが、グループの中での発言を聴きとると発言内容に驚きます。ましてや、発言の少ない生徒が振り返り書いたことで、こんなことを考えていたんだと知ることがあります。今日の授業記録を読ませていただき、どうしたら、どの子どもも発言できるような教室に指導してみえるのか教えてほしい。
●<笑い>いや、褒めてもらいましたが、附属中学校ですから、生徒に助けられています。
確かに、テーマに向けて学びを楽しんでいるようですが、3年の最後だから頑張っている姿を見せたいと思ってくれたのではないか。
△伊倉先生は謙遜されているなと感じます。子どもたちが自分の考えを持つまで、待ちつづける。これを大切にされていると感じます。授業記録の冒頭のところでも、子どもから手が挙がるまで待って見える。「イメージが悪いから新3Kを若者に広めることが大事だ」との生徒の発言があるが、先生は「誰が広めるの」と、自分の考えを持たせるために、問いを出されます。私はそう理解しています。

□ 本実践から考える主体的な学び:埜嵜先生
(1)  教室談話の特徴
〇主要語の形成 談話の中で、子どもたちは言葉をつないでいるだけではなく、主要になる言葉(耕作放棄地など)をみつけ、共有している。
〇批判的な吟味 自分の言いたいことを言っているが、つなぎで聴いている。そのことで、この言葉は可能性が高そうだよねと吟味しながら聴いている。
〇語の継承 自分の意見に近い言葉は、自分も話はじめる。しかし、話が進むと場面をこえて継承されて、やがて消えていく。しかし、ぷつっと消えるわけではなく、自分の言っている意味がつながっていく。
(2)  生徒の願いの表出
〇71の発言では、有機栽培にこだわる藤井さんの想いに共感があり、藤井さんの声を教室で代弁している。さらに、藤井さんのような農家が認められる社会の実現の願いが生まれている。安全な野菜がもっと売れてほしいという、教室(疑似的な社会)への価値承認の要求と解釈できる
(3)  本実践から考える主体的な学び
〇問題解決を目指す話し合いを通して「みんなにも、わかってほしい」「自分が言わなければ、埋もれてします」主体としての自己の存在をかけた学びとしての談話空間になっていた。
・意志や願いをもつ主体
・他者とのかかわりの中で立ち現れる、関係概念としての主体

□ ふりかえり・単元づくりの想い、願い:伊倉先生
 授業記録をよむ学びの中で、今思うと嫌なところがたくさんある。そこで、この授業記録の中で、私の発言だけを取り出して、いったい自分は何をしたかったのかを調べてみた。それが、この論文です。そしたら、私のやっていることは、次の四つです。具体化させよう。確認する。つなげる。整理する。授業では、なんとかして切実な学び、リアルな学びをしたいと思い取り組んできました。

参加された方からの振り返りを紹介します。
◆今日の講座で学んだ中で重要だと思ったことは、教室(=擬似的な社会)への価値の承認の要求・・・学びの場である教室の捉え方の拡張と転換であると感じました。
伊倉先生の、事前にある程度用意されていた調べたことの発表から、その場で考えたことの発言への転換。恐らく教師の立ち止まりに加えて板書の活用による追究への転換が、相変わらず見事です。それを分析する埜嵜先生の切り口の確かさと鋭さ。
それぞれが1つのセミナーを構成できる内容があり、内容過多かもしれません。それだけ内容豊富なセミナーになりました。
◆今日の講座で学んだ中で重要だと思ったことは、生徒の活動を教師が遮らないことです。課題解決学習というと、教師のファシリテーション能力が重要だと思って臨んだ。大人の会議のファシリテーションは、実は持って行きたい方向があったりして、確かにそうではあるが、生徒の課題解決学習の場合、教師があまり仕切ってしまうと、生徒は次第に仕切られたり、誘導されたりすることを待つようになってしまう。自分で考え、発言しなければならない状況にさせるために、そうならないようにしたい。とは言っても、議論が停滞してしまったり、ずれていったりしたときに、適切に働きかけることが必要で、予想外の状況にもとっさに対応しなければならず、やはり教員にはかなりの力量が必要だと思った。

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