8月17日(土)13:30より第4回 月例 授業研究セミナーを実施しました。
- 公開日
- 2024/08/26
- 更新日
- 2024/08/26
社会連携
8月17日(土) 13:30〜15:30に、201教室において実施しました。
授業者に小牧市立米野小学校 須賀康平先生、コメンテーターに当研究所の副島 孝先生を迎え、「小学校社会科を考える」をテーマに行いました。
今回は、対面で20名の申し込みをいただき、授業者も含め22名の方により、正解のない問いを自分ごとにする授業づくりの工夫について学び合いを深めることができました。スケジュールは以下の通りです。
第1部 授業実践から学ぶ
〇 今日の授業について
〇 逐語記録の読み合い(参加者全員による)
〇 テーブルでのリフレクション
− 休 憩 −
第2部 リフレクション
〇 ビデオ視聴
〇 全体で学びを共有する
〇 コメンテーターからのリフレクション
第1部 授業実践から学ぶ
〇 須賀先生から、今日の授業について
私は数年前に、子どもから「社会は好きだけど、何を考えていいのかわからない」という子どもの声を聴いていました。そこで、学期末にアンケートを実施したところ「資料が配られ、何に気づきますか。と問われるが、何に気づけばいいのかがわからない」という記述に出会いました。子どもたちは見方が分からないのかと気づきました。
それからは、学び方に注目しています。「日常生活とのズレ」「自分の感覚とのズレ」「驚き・違和感」「そこから見つける疑問」など、資料を見せるとき、見せたいところをあえて隠して「ここになりがあると思う」と質問して見せると、子どもたちから驚きの声をよく聞くようになりました。自ずと、子どもたちから疑問が生まれてきて、そこを話し合わせることで、社会の資料の扱い方のきっかけを掴めた気がしています。
子どもたちが自分の考えに自信が持てるような予備の資料を準備したり、子どもの反応を予測して資料を準備したりと、子どもたちが資料を読み取る授業を目指していきたい。
今回取り上げた政治単元について、子どもたちが政治について自分ごとになっていないと感じていたので、子どもたちが、身近に感じること、知ることで、意識や行動を変えていければいいなと実施しました。実際の選挙のシミュレーション、模擬選挙を取り入れ、若者の投票率の低さについて自分ごととして考えられるようにねらいました。
〇 副島先生から、逐語記録の読み合いを取り入れた経緯とお品書き
実は、ビデオ撮影の失敗から、逐語記録を読み合う学びを取り入れようと考えました。逐語記録をきちんと読む体験を通して、どんなことを考えたのかという授業研究の方式を取り入れました。
・実際の逐語記録を読む
・社会科の「真正の学び」の視点から、読み取った感想や疑問を共有する
・ビデオ記録を見る
・社会科の「真正の学び」を考える
・リフレクション
〇 逐語記録という授業研究の方法
・かつては主流の授業研究方法だった
・全発言を文字化して、授業を再現して分析する
・経験して初めてわかる得られるものの大きさ
・欠点もある。△時間がかかる △情報が文字だけで、授業の再現性には想像力が必要
・現場では、実際の授業を見て感想を交流することが授業研究になっている
〇 社会科の「真正の学び」とは
様々な解釈が語られている。・現実生活に即した学び・当該する学問の方法に即した学び・学びのプロセスがリアルである学び・学習者が実感するリアリティのある学び、と語られてているが、概念の成立と展開から考えると、どの解釈も間違っていない。佐藤 学はそれらすべてを包括した概念が「真正の学び」であると言っている。社会科の真正の学びには「課題」と「資料」が決定的に重要であり、資料とデータによる思考であり、正解はないと特徴づけている。
〇 逐語記録を読み合う
参加者が一人一人の発言を音読しながら読みつないでいく。(8分)
〇 読み取りを振り返りながら、各テーブルで学びを共有する(15分)
〇 テーブルでの学びを全体で共有しよう。
< ◎ ファシリテーター副島先生 ● 須賀先生 □ 参加者 >
◎ グループでこんな指摘が出ました。こんな発言が気になりました。など、全体で共有しましょう。
□ 56番の「なんでもいいですか」の発言が言えるのがいい。他の子どもからも「なんで?」という、分からなさや疑問の発言が多い。これが、みんなで話し合うきっかけになっている。
□ Bさんの発言がこの一時間の中で、77番で「義務でいいんじゃない」96番で「縛られているみたい」125番で「選挙のやり方を変えないと」の発言になっている。142番で「自分たち政治をもっと詳しく知りたい」となるところがすごいなと思いました。
□ 逐語記録をよむことの難しさを感じました。子どもたちは、選挙の仕方が分からないと言っています。私は高等学校ですが、主権者教育を行っています。今回の授業を読み合い「誰に投票したらいいのかがわからない」というところが学びのポイントになると感じました。
□ 56番のPさんの発言で「意外な国が高かった」とあるが、この意外な国という発言の裏に、別の思いや考えが隠れていたのではないか。子どもたち批判的に資料を見ています。
□ Pさんの発言で、143番で「政治の勉強をもう少ししたかった」は大きな変貌ではないか。
□ 一番わからなかったのが、本時の「課題、めあて」です。選挙にどうかかわっていくか。43番までの話で、若者の投票率の低さではないか。と想像しておりました。Pさんが気になりました。数字を使って考えられる素敵な子どもです。投票へ行っていない理由は、やり方が分からないからと取り上げている。
◎ めあては、何だったですかね。
● めあては、「これからの政治とのかかわりで、自分たちに必要なことを考えよう」です。
− 休 憩 −
第2部 リフレクション
〇 ビデオ視聴(8分)
◎ Pさんはフィリピンにルーツをもつ子どもです。ところが、グループでのかかわりができ、発言もできます。外国籍だからお客さんとはならないのが、学校の教育力ですね。クラスはこんな感じです。
◎ コメンテーターからのリフレクション
この授業は、おもしろいし、難しいところがありますね。
<社会科の難しさ、面白さ>
1. 学力とは、学習によって獲得された能力
2. 従来の学力観では、知識や技能に焦点を当て、あらかじめ用意された問題の成果に達することに価値を置いてきた。
3. PISA型学力では、実生活で直面する多様な課題に対して、知識や技能がどの程度活用できるか(コンピテンシー)が評価されるようになってきた。
4. さて、社会科の求める学力とは?授業で狙うものとは?なんだろうか。特に、正解が明らかではない教科としての社会科にとっては。
<逐語記録を読む>
1. 授業者も、参観者も逐語記録を読むことで、新たな気づきが生まれる。子どもたちは、委ねられたことにより。
➡ メタ認知(「自分は何がわかっていないのか」を自覚する)
2. グループ活動は6回あったが、いずれも短時間だった。
3. 自分の考えが揺らいだ子どもがいたか。
4. 他人事でない自分ごととは、本時で何だろうか。
5. 投票率100%の選挙は、身近にあるのでは。
<須賀先生の授業から学び>
1. 政治の問題を真正面から取り上げている。
2. これまでの身につけた学び方の成果から成立した授業。
3. 本時の資料について
<メタ認知について>
<フランス人記者、日本の学校に驚く>
<オーストラリアの選挙方法(の変化)について調べてみた>
オーストラリアの選挙制度の紹介があり、日本との違いに驚かされる。紹介されたような選挙制度について子どもたちが探究できらた、違う考え方が生まれただろう。
〇須賀先生のリフレクション
Pさんの「意外な国が高かった」という発言を聴き、自分としては「あっ、オーストラリアが出てきた」と飛びついてしまった。あそこで、「なんで意外なのか」に立ち止まり、子どもの考えを知ることの大切さを学びました。
2学期は歴史の授業内容が続きます。歴史的事象の背景を探っていくような授業をやっていきたいと考えています。本日、皆さんの協議をお聞きして、これからの授業において、よりいっそう子どもたちが疑問をもち歴史が自分ごとになるような授業を続けていこうと思いました。
参加された方からの振り返りを紹介します。
◆本日のセミナーで学んだ中で重要だと思ったことは、メタ認知です。
連日の猛暑の中、とても深い学びができた事に感謝いたします。正解のない問いを自分事にするとはとても授業力が必要になることを実感しました。授業をデザインすることは、課題と資料が決定的に重要だと思いました。9月からの授業で、いかに子ども達が探究していける資料を探していきたいと思いました。
毎回、とても勉強になります。今後ともよろしくお願いします。