社会科の授業力を高めるための講演
- 公開日
- 2015/10/09
- 更新日
- 2015/10/09
仕事
市の社会科の研究発表会で講演を行ってきました。私の講演の前に若手の研究発表が2つありました。どちらも子どもたちを主体的に活動させたいという意欲を感じる取り組みでした。子どもたちに自主的に取り組ませるためには、課題や資料をどのようなものにするかがとても大切になります。2つの発表からいくつかのヒントをいただけました。ありがたいことです。
私の講演は、「授業力を高めるために意識したいことは何か」という題で社会科の授業で大切にしてもらいたいことについて、今後の教育課程の動きと具体的に社会科としてはどのようなことを考えればよいのかについてお話ししました。
最初に、教科を越えて今後子どもたちつけるべき「資質・能力」について、中教審関係の資料をもとに説明しました。一部の社会科の授業では知識を教えることが主体となっていますが、そうではなく主体的に課題を見つけ、協働的に課題を解決する力や学んだ知識を活用する力をつけることが求められています。アクティブ・ラーニングもそのための手段です。そのことを前提としたうえで、社会科の視点として「事実を手掛かりに考える」「史実を手掛かりに考える」「自分たちの生活から考える」「因果を考える」といったことを意識してほしいことを伝えました。
社会科を通じて身につけさせてほしい「資質・能力」に関連して、「資料を見る力」「資料を活用する力」について、「気づいたこと」といった発問では子どもたちは考えられないことや資料の活用には「見つける」「読み取る」「資料をもとに考える」という3つのステップを意識する必要があることをお伝えしました。
また、子どもたちが主体的に考えるためには、ただ「考えよう」といった課題や資料を調べてまとめるといった活動ではなく、考えなければいけないような仕掛けを組み込むことが必要です。資料を探せば答が見つかるものではなく、「もし、○○がなければ?」「○○が起こらなければ?」といった資料には絶対ないことを問うのも一つの方法です。
また、子どもに疑問を持たせるために、演繹と帰納の2つの考え方を使うとよいでしょう。例えば米作りに関する授業であれば、「米作りに適した地理的条件を考えさせ、米作りが盛んなところを予想させて、実際との違いに疑問を持たせる」という演繹的な進め方と、「米作りの盛んなところを調べて、そこから米作りに適して地理的条件を考えさせる」という帰納的な進め方があります。米が本来温かいところでの耕作に適していることと、実体の違いに子どもたち自身で気づくことで、主体的に課題を見つけてくれると思います。
地理的分野であれば「人の営みと地理的な要素の関係を考える」、歴史的分野であれば「歴史的な事件や事実をつながりとしてとらえる」、公民的分野であれば「総合的・多面的にとらえる」といった視点で考えると、課題を作りやすいと思います。
子どもたちの活動の結果で共有すべきことは、結論や結果ではなく、その「過程」や「根拠」であることを強調させていただきました。特に「課程」はメタな技能としてつけてほしい力の大切な一つです。また、教師が結論を板書でまとめると、子どもたちは結局教師の答を正解として受け止めてしまします。教師の求める答探しをし始めるのです。自分の考えで答を見つけるためにも、まとめは子ども自身で行わせる必要があります。このことも強くお願いしました。
与えられた時間を勘違いしていたため駆け足でのお話になってしまい、話が散漫になってしまいました。申し訳ないことをしました。
教科についてのお話を依頼されることはあまり多くないので、私にとってはとてもよい学びの機会となりました。このような機会をいただけたことを感謝します。