日記

授業をよくするための次のステップに、何が必要かを考える

公開日
2016/06/21
更新日
2016/06/22

仕事

中学校で若手を中心に授業アドバイスを行ってきました。今年の2月に初めて訪問して、今回が2度目です。この日は1時間目から5時間目を使って13人の授業を見せていただきました。
元々子どもたちは落ち着いている学校でしたが、以前よりも表情がよいように思いました。子どもたちがかかわり合っている場面も多いように思います。この学校では、以前私がアドバイザーとして訪問させていただいた学校の校長が、退職されて初任者の指導をされています。その方が、私の訪問以降先生方が変わったとうれしい報告をして下さいました。この日は、教務主任、校務主任のどちらかがかならず同行して下さいましたが、非常に熱心に授業を見ておられました。この学校が変わって来ているのは、間違いなくこの方々の働きかけがあったからだと思います。主任層がしっかりしている学校では、授業の改善が確実に進むものです。

2年生の数学の授業は、講師の方の連立方程式の授業でした。
指示に対して子どもたちの動きがやや遅いように感じます。子どもたちの顔が上がるまで待てるのですが、ほめないことが気になります。笑顔を返すだけでも、行動が前向きになると思います。
プリンとケーキを買った代金の合計630円を示して、それぞれの値段はいくらかを問いかけます。説明を子どもたちは集中して聞いています。まわりの子と相談してもいいので、考えてくださいと指示すると、子どもたちは素早く体を動かし、相談します。子どもたちの笑顔がとても印象的です。楽しそうに言葉を交わしていますが、ややテンションが上がり気味になります。また、友だちとかかわろうとしない子どもも目につきます。授業者は机間指導をしながら、個別に指導しています。自分の考えが持てているのならまわりの子どもと意見を交換する、困っているのなら相談するように声をかけたりして、子ども同士つながるような働きかけもしてほしいと思います。

いくらになったかを全体で聞きます。「そこで話していたことを言ってくれていいよ」と挙手に頼らず指名します。子どもたちが発言しやすいようにしようとしています。よい対応です。1人の子どもが「プリン250円、ケーキ380円」と答えた後、次の答が出てきません。「他の答はないの?」と問いかけると、挙手をして子どもが「プリンをx円とおくとケーキは(630−x)円」と発言します。授業者は「他にない、具体的な数字ない?」とこの考えを無視します。「xはいくらになるの?」と揺さぶっても面白かったかもしれません。ところがこの後、急に子どもたちが動き始めます。まわりとしゃべりだしました。「それ以外にないの?みんな、プリン250円、ケーキ380円なの?」と問いかけます。子どもたちはしゃべっているのですから、その内容を聞いてあげればよかったと思います。「何をしゃべっているの?」「それってどういうこと?」といった聞き方をすれば、違った反応を見せたと思います。
しばらく待って1人の子どもが挙手して、「プリンが300円、ケーキが330円」と答えます。「他には?」と続けて聞くと、また1人手が挙がります。その間子どもたちはちゃんと顔を上げています。今一つ何を求められているのかよくわかっていないようでした。
授業者は子どもたちに「困っていたようだけど、なぜ困っていたのか」と問いかけます。「なぜ」で聞かれると答えにくいものです。「どういうこと?」と子どもたちを指名すれば言葉は引き出せたのではないかと思います。
わかんないと言っていた人がいることを子どもたちに投げかけて、次に進みます。「わかんない」とは何がわからないのか、どういうことかを共有しておいた方がよかったように思います。

新しい情報としてプリン3個とケーキ2個買って1510円になったという情報を足します。これでプリンとケーキの値段を考えるように指示します。まわりの子どもと相談させますが、子どもたちからは「こんなんじゃわかんない」という声が出てきます。ちょっとテンションが高い気がします。ここでの活動は何が目標なのでしょうか?授業者は答を出すことを願っているのでしょうか?
中には一人で固まっている子どももいます。その子どもに、後ろの座席の子どもが席を立って声をかけますが、声をかけられた子どもは明らかに嫌がっています。その前の話し合いの場面では、しっかりと話していたのに、全体のテンションの高さと共にちょっと気になる場面でした。子どもたちは、聞くことよりも話すことに意識が行っているのかもしれません。

最初の課題で方向性が見えないまま、新たな条件が加わっても、子どもたちに考えるための手掛かりがありません。子どもたちの考えが深まっていく様子はありませんでした。一部の子どもを除いて、子どもたちはしだいに行き詰まっていきました。早く活動を止めて次の段階に移るべきでしょう。
授業者は相談する人を変えてと、列を移動するように指示をしました。話をしている子どもが固定化していることに気づいたようです。まわりと相談すると言った時に、特定の子ども同士がつながる傾向があるようです。仲のよい子どもだけが話すことでテンションが高くなっていた可能性があります。
席を移動した後、再びテンションが上がります。しかし、どうにも子どもたちが深く考えているようには見えません。固定した4人グループでじっくり相談させた方がよかったように思います。グループの様子を見ることで、考えられているかどうかわかりますし、活動を止めるタイミングも見えやすくなります。
しばらくすると、先ほどと同じく子どもの活動が止まっていきました。

連立方程式の導入としては、最初の段階で解がたくさん存在することをきちんと押さえたいところです。その上で、他の人もプリンとケーキを買ったと言っていたけど、同じ店であるかどうかはわからないとします。これも、同様に答はたくさん存在することを確認してから、実は同じ店だったとしても面白かったでしょう。xを使った子どもを活かして、プリンとケーキの値段の表に誘導してもよかったかもしれません(方程式のグラフにつながっていく)。

子どもたちは相談することに抵抗はないように見えますが、参加しない子どもが目立つことが気になりました。自分が話せないと相談できないのかもしれません。子どもたちが聞くことを意識するようにすることと、全員が話し合えるようにするために4人グループを積極的に活用することが必要に思いました。

1年生の数学は、小学校から異動してきて2年目の先生でした。以前勤務していた小学校で、私が授業アドバイスをしてきた方です。愚直に私のアドバイスを実践してきてくれた方ですが、そろそろその殻を破って自分の型をつくる時に来ているようです。

子どもたちは集中して授業に取り組んでいます。ちょっと複雑な計算問題を15秒でやるように指示します。子どもたちに軽いプレッシャーをかけて力をつけようというわけです。子どもたちは、全員素早く取り掛かります。意欲が感じられますが、ちょっと時間が厳しかったのでしょう。「確認して」とまわりと相談させるのですが、声があまり出ません。「難しいかな?」と子どもたちに声をかけて、反応を見ます。1人の子どもが手を挙げたので、指名します。「−64」と答えますが、授業者は「−64」と復唱して、「ちょっと時間をあげるからもう一度やってごらん」と全体に返します。この答は違っているのですが、正解かどうか判断しないことで、他の子どもは真剣にもう一度取り組みます。
近所の人ともう一度確認させます。子どもたちは苦戦しているようですが、先ほどよりは動きがあります。
授業者は活動をやめさせて、まずどこから計算をするのか隣同士で確認させます。子どもたちは素早く確認し、授業者はすぐに子どもたち挙手させます。全員の手が素早く上がりました。ムダのないよいテンポで進みます。「21÷5です」と子どもが答えます。授業者は黒板のその部分を目で確認して見せます。するとすぐにその子どもは「21−5です」と訂正しました。なかなか見事な対応です。子どもたちはすぐにまた手を挙げます。先ほど間違えた子どもを指名します。上手にリカバーの機会を与えます。「21−5」と同じ答です。同じ答でもいいから、自分の答を言うことが子どもたちに浸透しています。子どもたちが落ち着いて挙手をしている理由がよくわかります。
途中まで全体で確認をして、最後の計算を子どもたちにやらせます。再び隣と確認をしますが、今度は自信を持って声が出ていました。「言える人」と聞くと、ほとんど全員手が挙がっていたのですが、1人だけ挙がっていません。授業者はそのことに気づいていたようです。最後にもう一度4人で確認するように指示します。今度は全員しっかりと手が挙がりました。全員に手を挙げてほしいという強い思いを感じました。

2人に確認をして、「ちょっと難しかったかな?でもいいんだね、このぐらいで」と言って次に進みます。
黒板に黙って次の問題を書きます。子どもたちは写さずにじっとそれを見ています。書き終ると、15秒でやるように指示します。子どもたちは素早く写して問題に取りかかります。時間を区切ることで上手に集中させています。子どもの動きを見ながら、15秒経った時に、あっているかどうか別にしてできたかどうかをたずねます。少し少ないようなのでさらに5秒与えました。隣同士確認させて、もう一度4人で確認させました。すぐに答を聞かずに、どこから計算するかをたずねます。過程をていねいに扱っているので、間違えた子どもや困っている子どもはその説明を聞くことで理解することできます。次に計算するところをまわりと確認させます。この後演習に入りますが、その前にきちんと計算のやり方を定着させようとしていることがわかります。簡単な計算部分は挙手に頼らず指名しながら進めていきました。間違えた子どもも、どこで間違えたかはわかるはずです。
この間、私が見始めてから6分経っていません。柔らかい雰囲気でゆったりと進んでいるように見えますが、実は密度が濃いことがわかります。授業者が余分なことをしゃべっていないからです。

演習に入りますが、先ほどの計算に正解できなかった子どもも、すぐに問題に取りかかります。子どもたちの動きが速いことから、学習意欲が高いこととよく鍛えられていることがわかります。
授業者は机間指導をしながら、○つけをしています。特定の問題に絞って、その問題が全員できていることを確認していたようです。声かけをしていませんが、集中している雰囲気を壊したくないのでしょう。これだけ集中して手を動かしているのなら、それもありかもしれません。

授業の基礎はかなり高いレベルで実現できていると思います。今回はグループを使っていませんでしたが、グループを有効に利用することも考えるとよいでしょう。
子どもたちに基礎的な力をつけることはかなりできていると思います。子どもたちをより伸ばすためには、課題の工夫が必要になってきます。より深い教材研究が必要になります。ここからの道のりは長いものになると思います。今までのように目に見えて授業がよくなっていくというわけにはいかないでしょう。子どもたちを大切にして、日々精進をしてほしいと思います。
成長を長い目で見守っていきたいと思っています。

この続きは明日の日記で。