日記

第4回授業深掘りセミナー(その2)

公開日
2016/08/08
更新日
2016/08/08

仕事

第4回授業深掘りセミナー(その1)の続きです。

玉置先生の模擬授業は、小学校高学年対象の算数の発展的な学習でした。
玉置先生は冒頭に、「みんなで知恵を出して」という言葉を使いました。何気ない言葉に思えますが、授業に対する基本的な考え方、姿勢を伝えるものです。

課題の提示の仕方にも工夫があります。「今日はこの問題を解きます」と天下りで提示してもやらされている感が強くなります。いかに興味を持たせるかが勝負です。
「1/□+2/□+3/□+……」と板書していきます。途中で手を止め、何だろうと思わせます。どこまで続けるのかを子ども役に考えさせることで、自分たちの課題にさせます。大人が相手なので、「1/□+2/□+3/□+・・・+100/□」と長くして、□の値を考えてもらうことを伝えますが、当然、疑問が起こります。「どんなことを思った」という問いかけをもとに、「答がない」「=がないからこれでは答えられない」といった言葉をつないでいきます。子ども役が隣と相談している姿も見られました。自然に相談したくなったのでしょう。
最初からすべての情報を与えないというのは玉置先生がよく使う手です。こうすることで疑問や興味を持たせるだけでなく、問題の理解にもつながります。
100の続きで「=101」と最終的な問題を提示します。2段階で提示をすることで、「101」が印象付けられます。規則性を意識させる布石になります。
「わからん」「嫌な問題」「数が大きくて大変」といった子ども役が思ったことを受けて、効率よく考えることを視点として確認し、相談させます。

答そのものよりも、どうやって考えたかを大切にして授業は進んで行きます。「分数がいや」という言葉に続いて、「両辺に□を掛けて考える」という意見が子ども役から出てきます。小学生からはまず出てきません。これは方程式を学んだ子どもの考えです。(1+2+3+・・・+100)/□と左辺を変形して、□を掛けるという説明です。ここで、他の子ども役が「□かけていいの」と言ってくれます。ここからどのように展開するのか、本来まずあり得ない展開なので、興味が出てきます。「□を掛けていない」「分子だけ計算」ということを引き出して、5050/□=101に持っていきました。
続いて、効率的ということを焦点化していきます。「時間がかかる」「順番に足すとパニックになった」といった言葉から、効率的に計算することの価値を押さえていきます。
この課題では、結局1から100までの整数を効率的に足すことがポイントでした。この計算のやり方について、もう少していねいに確認するかと思ったのですが、わりと簡単に次に移ります。

今、100個でやったことを、2個でやるのです。具体的には1/□+2/□=3です。ここでポイントとなるのが「=3」です。最初の課題で「=101」を後から示したことが活きてきます。
これは左辺を計算すれば3/□となり、すぐに□は1とわかります。先ほどの課題ではポイントが効率的に計算することだったのですが、今度は異なります。□の値が分数の個数の半分になるという規則性を見つけることがねらいです。その説明に先ほどの効率的な計算方法が活きてきます。
2つの例だけでは規則性に結びつきにくいので「もうちょっと行こうか」と言って足す分数を増やした問題を提示しました。
1から100までを効率的に計算する方法をもとに、規則性とその説明ができる子ども役がいましたが、玉置先生はあえて具体例を重ねて帰納的に確認をしていきます。説明よりも規則性を全員で確認することを優先したようです。
玉置先生は子ども役が話し合って、いろいろなことを見つけたことを評価して模擬授業を終わりました。

玉置先生は今回の模擬授業では、子どもの発言をどう引き出すか、どう活かすかということと、最初の課題をもとに、新たな課題に気づいていくという課題の広がり・発展にスポットを当てて授業をされたように思いました。

深掘りトークセッションのコーディネートは私がやらせていただきました。授業者、パネラーがどんどん発言してくださるので、私が意識してコントロールすることはほとんどありませんでした。玉置先生もその前の佐藤先生と同じく、子どもが発言しやすい「課題を見てどんなことを思ったか」という気持ちをもとに授業を展開しています。単に気持ちを聞くだけでは算数の学習にはなりませんが、どこでそう思ったのかという根拠を確認することで、課題やその解き方の本質に迫っていくことができます。その進め方の素晴らしさをパネラーが評価していきます。佐藤先生の社会科の模擬授業と共通するところです。
また、ただ問題を解くだけでなく、そこにある規則性や発展性に気づかせるという授業の構成も評価されました。
また、佐藤先生からは、子どもたちを惹きつけることができるトピック的なネタの授業ではなく、教科書の単元の中に位置づけられたものを見たいというリクエストがありました。1時間の授業で完結したものにしようとすると、今回のようなトピック的なものになりやすいのですが、次回以降の宿題ということになりました。

後藤さんの「教育情報知っ得」は学習指導要領の移行措置と先行実施についての話でした。
前回の学習指導要領改訂を例として、告示後の移行措置について具体的に説明していただきました。今年度末には学習指導要領の告示が予定されていますので、平成30年度から移行措置が行われると予想されます。告示からの1年間で次期学習指導要領を理解しておくことが求められます。先生方にこのことを意識していただければありがたいと思いました。

この日の佐藤先生の深掘りトークセッションで、有田先生の公の場での最後の授業が話題になりました。そこで、セミナー終了後に第2回教育と笑いの会で使用したビデオを急遽上映することになりました。誰一人帰ることなくそのまま残っていただけたことに、有田先生の偉大さを改めて感じさせられました。

次回、第5回授業深掘りセミナーは10月15日(土)です。模擬授業は神戸和敏先生(算数又は数学)と伊藤彰敏先生(国語)の予定です。興味のある方は、こちらから申し込んでください。