学校全体に共通の課題を伝える
- 公開日
- 2016/08/26
- 更新日
- 2016/08/26
仕事
小学校で授業アドバイスを行ってきました。初めて訪問する学校で、今年度3回授業を見せていただく予定です。
この日は学校全体の様子を参観させていただき、その後全体に対してお話をさせていただきました。
学校全体で共通している課題がいくつかあります。
授業規律について言えば、授業者が意識して指示をしたことはある程度徹底できています。しかし、当たり前ですが、授業者が意識していないことはできていません。たとえば、作業が終わって顔を上げさせても、授業者が話し始めれば視線がどこかへ行ってしまうといったことが起こるのです。顔を上げさせることが目的ではなく、授業者を見て集中して話を聞いてもらうのが目的です。そのために、まず顔を上げさせるのです。しかし、授業者が集中して話を聞かせることを意識していないと、子どもはとりあえず顔を上げますが、話し始めた後の指示は特にないので勝手な行動をとってしまうのです。かといって、毎回一つひとつ指示をしているようでは困ります。子どもたちが自分で今どうすればよいか考えるようにすることが必要です。「次に先生は何を言う(指示する)と思う」と子どもたちに問いかけるとよいでしょう。子どもたちが次の指示を予測するようになれば、自然にこういった問いかけも必要でなくなります。何も指示しなくても行動できるようになっていくのです。
また、指示に従えていない子どもを注意して直そうとする傾向があります。顔が上がらない子どもがいれば注意をします。当然のことのように思いますが、これをしているとモグラたたきになってしまいます。なぜなら、注意をされなかった子どもには他人事で、あまり印象に残らないからです。意識していませんから、今度は自分がやってしまうのです。そうではなく、顔を上がっている子どもを固有名詞でほめることが大切です。子どもは基本ほめてもらいたいと思っています。人がほめられていることはまねして自分もほめられようとします。まねてしてよい行動をとった子どももすかさずほめることがポイントです。そうしないと、せっかく自分もまねしてほめられようとしたのに、「最初にやった人しかほめられないのか」と、次第にまねをする気持ちがなくなっていくからです。
先生方の表情も気になります。指示に従えない子ども、きちんとできていない子どもを注意しようとしていると、どうしても子どもをチェックする目で見てしまいます。授業中に表情が厳しい先生が多いのです。それと関連しているかどうかはわかりませんが、子どもの発言や反応に対してポジティブに評価や価値付けをしている場面もあまり目にしませんでした。先生方には、いつも笑顔で子どもを見守り、受容することをお願いしました。
子ども一人ひとりを見ていないと感じる場面も多くありました。
黒板やディスプレイに向かってしゃべっていたり、音読で授業者が教科書をずっと見ていたりすることが多くあったのです。先ほども例に出しましたが、授業者が話をしているのに子どもたちが集中していないような場面は、そもそも子どもたちを見ていなければ気づくこともありません。子どもたちに集中してほしいと思っていれば、自然に子どもたちの様子が気になって、見ようとするはずです。
また、子どもに発言させている時に発言者しか見ていないことにも注意が必要です。発言を聞いている時に子どもたちがどのように反応しているかを見ておくことはとても大切です。聞いていない子どもがいれば聞くようにうながすことが必要ですし、うなずいたり、よくわからないといったりした子どもの反応を見ていなと授業を修正することもできません。机間指導も、子どもの手元ばかりを見ていると学級全体の様子を把握することができません。個別指導に集中してまわりを見ることをしていないと、他の子どもが課題を終わって遊んでいても気づくことができずに、子どもたちが集中を失くしてしまうこともあります。
低学年では子どもたちがテンション高く挙手をする姿が目につきました。先生が好きで指名されたいという気持ちの表れですが、テンションが高いのは指名されるチャンスが1回しかないことが原因です。友だちの答が自分と同じだと、「言われた」と悔しがる姿も目にします。しかし、「正解」と言わなければ、何人でも指名できます。「なるほど○○さんは、……になったんだ」「じゃあ、△△さんは?」とすれば、何人にでも指名できます。チャンスは何回かあるので、落ち着いてきます。「○○さんと同じ考えの人?」と言って、「じゃあ、△△さん、あなたの言葉でもう一度説明して」と同じ考えの子どもをつなぐ方法もあります。こうすると、同じ考えであればかえって指名されるチャンスが増えますので、友だちと同じ考えであることに肯定的になります。一問一答をちょっと見直してほしいと思います。
また、ほとんどの授業が挙手だけで進んでいました。そうすると挙手できる子どもだけしか活躍できません。「わかった人?」と聞くとわかった人しか答えられません。どの子どもも参加できる、活躍できることが大切です。ペアやグループでの活動も全員参加の一つの方法です。たとえば隣同士相談させて、その様子から「○○さん、しっかりと話して(聞いて)いたね」とほめて「どんなこと話した(聞いた)?」と問いかければ答えやすくなります。「わかった人?」ではなく、「困った人?」と聞くことも時には必要です。わかったことではなく、困ったことから出発するのは問題解決の発想としても正しいことです。
先生方は子どもに考えさせたい、子どもの発言を活かしたいと考えているのですが、板書には、答や結論ばかりが書かれています。根拠や考えの過程、子どもの発言といったものがほとんど残っていないのです。板書を写せば答はわかりますが、どうやったら解き方が見つけられるかといったことはわかりません。手順はわかってもその手順を見つける力はつかないのです。
子どもに発言を求めても、最後に授業者が黒板にまとめるのであれば、子どもは無理に参加する必要はありません。友だちの話を聞いていなくても、板書を写せばそれで済むからです。まとめは子どもの言葉でつくることが大切です。授業のまとめは子ども自身に書かせるとよいでしょう。ちゃんと書けるか不安であれば、友だちと見あったりさせればよいと思います。何人かの子どものまとめを実物投影機で映すというやり方もあります。友だちのまとめを見て、よいと思ったところを書き足すようにすればそれで十分でしょう。どうしても、板書しないと不安であれば、子どもに発表させてそれをそのまま黒板に書くようにします。何人かに聞いて書き足していけば、立派なまとめが子どもたちの言葉でつくれるはずです。子どもからよい言葉が出てこない時はどうするのかという質問をされる方がいますが、もしそうだとすると授業がダメだったということです。子どもに大切なことは何かが伝わっていないからです。授業者がいくらよいまとめをしても、それを写すだけで力はつきません。子どもにまとめさせるということは、その日の授業の評価でもあるのです。
今回は、このような内容をお伝えしましたが、先生方にどのように受け止めていただけたでしょうか。次回9月の訪問で授業がどのように変わっているか楽しみです。