日記

「学校の総合マネジメント力強化に関する調査研究事業」の報告会に参加

公開日
2016/09/13
更新日
2016/09/13

仕事

文部科学省の「学校の総合マネジメント力強化に関する調査研究事業」で審査員を何年か務めさせていただいています。先日、昨年度の調査研究事業の報告会が開かれ、それに参加することができました。審査させていただいた調査研究事業がどのようなものになったのかとても興味がありました。報告を聞いて学ぶことや考えることがいろいろとあり、このような機会をいただけたことに感謝します。
報告の簡単な紹介と感想は以下の通りです。

・「学校事務職員の研修プログラムモデル及びテキスト開発」
これはチーム学校に向けて学校事務職員に求められる力を高めるための研修プログラムを開発するというものです。基本的にケーススタディをもとにつくられたシチュエーションでどのようにすればよいのかをグループワークやロールプレイを通じて考えるというものです。感心したのが、とてもリアルなシチュエーションが設定されていることでした。おそらく全国の事務職員から具体的な事例をたくさん集め、それをもとにつくったのでしょう。とてもよくできていると思いました。逆に、よくできているからこそ、研修参加者から出てきた意見や考えを焦点化したり価値付けしたりするという、ファシリテーターの役割が重要なってきます。テキストが充実しているので、ファシリテーターに、より高度な力が求められてくるということです。誰が研修でその役割を行うかにもよるのですが、ファシリテーターの育成をどうするのかが次の課題だと思います。具体的にこのテキストを使って実践しながら必要なノウハウを貯めていってほしいと思いました。

・「スクールアナリスト、学校改善パートナー等の在り方等の調査研究」
学校の状況を把握・分析するための要因と手立てを調査研究して学校に指導助言できる「スクールアナリスト」「学校改善パートナー」といった者の在り方を考えるというものです。学校評価改善のために、どのような仕組み、人材が必要か、その人材育成をどうするのかについての調査研究でした。
スクールアナリストや学校改善パートナーといった人材がいるだけではうまく機能せず、学校の当事者意識が大切であるという報告は、まったくその通りです。しかし、ある意味当たり前のことでもあります。
現場がどのような人材をスクールアナリストや学校改善パートナーにと考えているかについても調査されていました。教育員会の指導主事や地域と学校を知る退職校長といった答を聞いても今一つピンときません。経験や役職も重要な要素ですが、他にもこういった仕事をするためのスキルが必要なると思います。こういう人材が本当に求められているのならば、そのようなスキルを明確にして、養成する方法も今後考えていく必要があるだろうと思いました。

・「総合マネジメント力強化に向けたコミュニティ・スクールの在り方に関する調査研究」
コミュニティ・スクールに関するさまざまな視点での調査は、資料として価値のあるものだと思います。コミュニティ・スクールの実態がこの資料から見えてきます。外野からすると校長が学校運営協議会とのやり取りに苦労するといった姿が浮かぶのですが、意外とそうではないということがデータから見てとることができます。
この調査の結果からはコミュニティ・スクールのよさやメリットを感じることができます。この調査研究の目的とはずれますが、コミュニティ・スクールを拡充することを考えると、そのよさをアピールするだけでは、もう一歩足を踏み出せないように思います。そこに至るまでに乗り越えなければいけない要素としてどんなものがあり、どのように解決していくのかといったことも明らかにして、導入を検討をしている教育委員会や学校に伝えることが必要だと思いました。

・「問題行動分析・コモンズ型学校評価支援ツールを活用した組織的な学校支援の研究と開発」
この研究では、アンケートをもとに問題行動を分析して、個別の子どもの問題の把握と組織的な指導改善に活かせる興味深いツールが紹介されました。子どもの「自己肯定感」と「他者受容感」を2つの軸として、時系列的に子どもの変化を扱うものです。Q−Uなどと比べて、より個にスポットを当てたものです。まだプロトタイプのシステムなので、実際に活用するにはシステムの改善を待つ必要がありそうですが、今後実用的なものに発展していけば現場にとって役立つものになるのではと思いました。
コモンズ型学校評価支援ツールは、単純化して説明すると、ワークシートを埋めながら学校の課題を明らかにし解決に向かってアクションプランを作成していくものです。
このツールを活かすためには、出てきた課題の解決のプロセスを明確にすることが必要です。「課題解決のプロセスを地域と学校で考えましょう」といっても、効果的な方策が浮かばずにそこでストップしたり、やってみたが効果のない取り組みだったりということが起こってきます。これはある意味仕方のないことかもしれません。しかし、ここに切り込まなければ、せっかくのツールも実効性のないものになってしまいます。学校が抱える課題はある程度定型化できるように思います。私の妄想かもしれませんが、解決のための方策や実例のデータベースといったものを構築し、システム化してこのツールに組み込むことができると面白いと思いました。

・「学校ファンドに関する調査研究」
耳慣れないかもしれませんが、「投資ファンド」「クラウドファンディング」などと同じく資金を集め、学校を支援する活動に活かすものとして、「学校ファンド」というものがあります。
この調査研究では国内の先進事例の調査を中心に、海外の事例も集めるというものでした。
国内の先進事例を見た時に感じたのは、各学校・地域で行われている資源回収やバザーなどとの本質的な違いがよくわからないことでした。ファンドは寄付よりもその目的や見返り(効果)を明確にしたものです。学校へのファンドですから、「学校への支援に使う」でよいようにも思えます。しかし、より明確に「部活動の○○に使う」「就学支援のために、○○を行う」といった形で資金を集めてこそ、ファンドと言えるのではないでしょうか。
この調査研究では学校ファンドといってもごく少数の事例しかなく、また今後どう発展していくのか、行くべきものかに対する考察らしいものは見られませんでした。残念ながら、「学校ファンド」という言葉を使った事例があるという紹介にしか見えません。今後、今まで各学校・地域で行ってきた学校援助の資金集めに「学校ファンド」という言葉が使われるようになるのかもしれませんが、新たな要素が付け加わるような可能性は感じることができませんでした。