つぶやきを拾う
- 公開日
- 2010/12/07
- 更新日
- 2010/12/07
授業ワンポイントアドバイス
「つぶやきを拾う」ということがよく言われます。ところが、授業者はつぶやきを拾うとしているのに、せっかくのつぶやきを拾えない場面によく出会います。何が問題なのでしょうか。
例えば、分数のかけ算の手順を考える場面を考えてみましょう。
「何か気づいたことはないかな」
子どものつぶやき
「上と下」
「???」
教師は子どもから「分数のかけ算は、分子同士、分母同士をかければいい」ということを引き出したいのですが、最初からちんとした言葉では出てきません。つぶやきは、それだけでは何を言いたいのかよくわからないことがよくあります。授業者に聞いてみると、「何を言っているのかよくわからなかった」いう答えが返ってきます。だから取り上げなかったのだと。
「今、何か言ってくれたね、Aさん。なんて言ったか聞かせてくれる」
「上と下」
「それってどういうこと」
「上と下でかけ算している」
「上ってどこのこと?黒板で指さして」
「これなんていったっけ」
「分子」という声
「Aさんどう?」
「分子だった」
「Aさん、分子がどうしたの」
「分子をかけている」
「なるほど、分子をかけているんだ。じゃあ、下は」
「分母をかけている」
「なるほど。Aさんの説明わかったひと」
「Bさん、もう一度言ってくれる」
「分子と分子、分母と分母をかけている」
「言葉を足してくれたね。分子と分子、分母と分母をかけているんだ」
・・・
言っている意味のわからないつぶやきも、子どもにその意味を聞き返すことで、考えが整理され、足りなかった言葉が足され、しだいに明確になっていきます。一見遠回りにも見えますが、少しずつ整理していくことで低位の子どもたちも理解しやすくなります。結果として、より多くの子どもたちがねらいに近づくことができます。
また、教師が理解できないつぶやきでも、子ども同士では分かりあえることもあります。
「Aさんの考えがわかる人いる」と聞いてみればよいのです。
つぶやきを拾ったがうまく利用できなかった時は、「なるほどね」と認めて、他の子どもに聞けばよいのです。
子どものつぶやきは、たとえよくわからなかったとしても、意味があるはずだ、教師がねらっていることにつなげられるはずだと取り上げてみる姿勢を大切にしてほしいと思います。