新任の授業アドバイス
- 公開日
- 2011/11/30
- 更新日
- 2011/11/30
仕事
昨日は中学校で社会科の新任の授業アドバイスをおこなってきました。
日本の農業の特色を考える授業でした。
「三大穀物はどこで作られる」という発問で子どもにワークシートを埋めさせましたが、「どこ」は何を意味しているのか明確にはされていません。意図的なのかどうかが興味のあるところでした。ワークシートの資料の国別のシェアを見て、上位の国名を書く子と教科書を見てアジアなどの地域名を書く子に分かれました。資料集を見ている子はほとんどいませんでした。子どもの発表は当然その2つに分かれます。授業者は出てきた地域名と国名を板書します。「米」に対するアジアという発言に対しては「もう少し詳しく」とすぐに問いかけますが、国名で書いた子どもは板書を写すことに専念し、この発問に対しては反応しません。子どもは単に作業をするだけで深く考えようとしていません。それより、板書をもとにワークシートの穴を埋めることに専念していたのでした。
結局、資料や教科書から抜き出した答を発表し、その確認をするだけで終わってしまいました。「どこ」に対しては「暑いところ」や「米を食べるところ」といった答だってあるはずですが、そういう広がりは一切ありませんでした。資料から読み取ったことを元に考えるということがないのです。とりあえず答を見つければそれでよいという姿勢です。
ここでは世界の農業の特色を押さえることで、日本の農業の特色を比較して考えさせることにつなげることがねらいですが、結局、規模や消費地と産地の関係といったことは全く何も押さえられていませんでした。この後の発問も互いにつながらない、細切れの知識を与える授業になっていました。
授業後、どんな社会科の授業を目指しているのかとたずねたところ、「社会生活のために必要なことを考え身につける」といった答が返ってきました。なかなかよい視点です。しかし、実際の授業は、教科書や指導書に書かれたこと、試験に出すことを提示、説明するだけに追われています。子どもに話し合いをさせても、その考えを聞いたり、互いにかかわり高めあうための時間をとったり働きかけはせずに、教師が答えを言って終わっています。考えることはほとんどない授業になっているのです。自分の授業が目指しているものと程遠いことは本人も感じています。しかし、そのギャップの大きさにどうすればいいかがわからず、流されている状態でした。
一度の授業で急に考えることができるようになるわけではありません。子どもたちをどのように育てていくのか、目指すところと現実の間のステップを細かく意識することが大切です。資料の探し方や見方を身につける、資料をもとに考えを深める、・・・。一つひとつ時間をかけて育てていくのです。そのためには授業と授業がつながっていく必要があります。今日学んだことを次の授業に活かす。こういう育てるという発想がないことが問題だったのです。
また、発問も教師が求める答えが出やすいように考えています。そうではなく、子どもが考えるにはどう問いかければいいのか考えることが大切です。
たとえば「レタスの産地ごとの出荷時期の違い」を問うのではなく、「君たちがレタス農家だったらいつ出荷できるようにつくる?」とするのです。
最終的に同じところにたどり着くかもしれませんが、子どもたちが考える内容は明らかに違います。自分で考えたことが正しいかどうかを資料で確認しようとすれば、その見方はただ答を探すのとは明らかに違います。こういう経験を積むことで考える力がついてくるのです。
まだ、教壇に立って1年にも満たない若者です。これを機会に自分が目指している授業を思い出し、少しずつそのギャップを埋めようしてくれればと思います。経験が少ないからこそ変わることも容易なはずです。これからの成長がとても楽しみです。