日記

授業に浸った1日

公開日
2012/06/15
更新日
2012/06/15

仕事

昨日は中学校で授業アドバイスをおこなってきました。若手中心に授業を見せていただいたあと、道徳の授業研究でした。

昨年おじゃましたときと比べて、若い先生、少経験者が増えています。授業を見せていただいて感じたことは、余裕がないということでした。みなさん授業の準備をしっかりされているのですが、かえって、これをやろう、話そうと準備したことをやりきるので手一杯となっているのです。そのため、子どもが考える・活動する場面が少なく、受け身の時間が長くなっています。そんな中で子どもは板書を写すことに意識が集中して、教師の説明よりノートを取ることを優先しています。教師も時間に追われ、子どもが顔を上げて話を聞いていなくても、そのまま話し続けたり、子どもが作業に集中しかけた時に追加の指示を出したり、説明を付け加えたりしています。子どもを見る余裕、子どもに任せておく余裕を失くしているのです。子どもの活動ではなく、教師の活動に意識が強く向いているということです。

子どもは教師の見たい姿にしかなりません。子どもが教師の話を集中して聞く。友だちの考えを真剣に聞く。集中して問題に取り組む。どんな子どもの姿が見たいのかを意識することが大切です。同じ学級でも、ベテランの授業では、子どもたちは説明を聞くべき場面では指示しなくてもしっかり顔が上がっています。日ごろの授業の中で自然にできるようになっています。子どもがノートに向かっているときには教師は何もしゃべりません。教師がじっと待っている間、子どもは集中して作業しています。子どもの問題ではなく、教師の問題であることがよくわかります。

しかし、ベテランの授業でも子どもが友だちの話を真剣に聞く姿はあまり見ることができませんでした。指名した子どもが発表するとそれ引き取ってすぐに教師の説明が始まります。子どもの言葉を活かし、子どもの考えで授業を進めることは意識されていませんでした。おいしいところを教師が持っていってしまうのです。教師が子ども同士かかわり合う姿を見たいと意識すれば、そのような姿を見せてくれる子どもたちだと思います。とてももったいないと感じました。

道徳の授業は、授業者の子どもたちにこうなってほしいという気持ちが強く現れたものでした。子どもたちと授業者の関係もよく、多くの参観者がいる中、子どもたちが授業者の期待に応えようとしていることがよく伝わりました。子どもとのやり取りの場面で、発言に対する教師の受けの言葉が「なるほど」「そうだよね」の2つの場合があることに気づきました。後者の場合には、教師が復唱して強調することもあります。授業者に確認したところ意識はしていなかったということですが、思いが強いため、無意識のうちに自分の望む発言を評価し、誘導していたのかもしれません。また、資料の「わたしの気持ち」を考えるという発問と、「意見」を書くという指示の仕方もあって、子どもたちは資料から少し離れて、やや客観的に考えていたように感じました。あまり心が揺さぶられておらず、変容があったのかよくわかりません。友だちの意見を聞きあって最後に各自がまとめた文も、出てきた意見から正解(≒教師の求めるもの)を見つけようとしているもので、本音の部分はあまり感じられませんでした。

授業検討会では、子どもたちに求めたものは資料の読み取りなのか、自分の考えなのかといった、国語と道徳の違いに関することと、子どもたちが自信を持って考えを発表するための指導法として机間指導時にワークシートに線を引いたり、○をつけたりしてほめることの2つが特に話題となりました。
前者については、子どもの心の変容を求めることから考えれば、資料の中に入って自分の問題として考えることが大切だと伝えました。そのために資料を正しく読みとることが大切ですが、その部分に時間をかけると考える時間が少なくなってしまいます。できるだけ早く読みとるためには、教師が資料を読みながら状況を説明したり、登場人物の心情について子どもに気づかせたりするなどの働きかけも必要なことです。
後者については、特に数学などの正解不正解がはっきりしている教科の場合には有効な方法ですが、道徳の場合、線を引いたり○をつけたりすることが、時として教師の価値観の押し付けになってしまう危険性があります。教師が○をつけてくれることを書こうとしてしまうのです。自信を持たせることで発言させるという発想だけでなく、自信がなくても発言できる雰囲気、環境をつくることも大切であることを伝えました。何を発言しても受容される、友だちに認められる、そのような学級づくりを意識してほしいとお願いしました。

この日は、皆さんと食事をする場を設けていただいたのですが、会場の移動前や食事会の最中に多くの先生が話を聞きに来てくださいました。どなたも授業にとても前向きで、質問や悩みの中に私自身が気づかされることがたくさんありました。どれだけ効果的なアドバイスができたかわかりませんが、きっと毎日の授業の中で着実に力をつけていかれると思います。
話に聞きに来ようとしてくださったのに、時間がなくてお相手できなかった方がいらっしゃいました。一生懸命授業に取り組んでおられたのですが、子どもとのコミュニケーションに苦しんでおられたように見受けられます。きっとアドバイスを求めていらしたのだと思いますが、それに応えられなかったことを本当に申し訳なく思っています。次の機会には、ぜひじっくりとお話を聞きたいと思います。

終日、授業と授業に関連する話にどっぷり漬かり、充実した楽しい1日を過ごすことができました。このような機会をいただけたことを心から感謝します。2学期にもう一度授業を見せていただく機会をいただけるようです。先生方がどのような進化を見せてくださるのか、今からとても楽しみです。