授業研究に参加(長文)
- 公開日
- 2012/06/22
- 更新日
- 2012/06/22
仕事
昨日は中学校の授業研究に参加しました。もう何年もおじゃましている学校ですが、子どもたちが落ち着いて学び合える学校になってきました。この日は、2年生の英語の授業でした。
コミュニケーションを重視し、「Clear Voice」「Face To Face」を目標にしていました。昨年度のようすから子どもたちの人間関係は悪くないはずなのですが、笑顔が少なく感じました。自分の夢を英語で話し、ペアの人が聞きとるという場面では、通常はかかわり合いが起きて表情がよくなるところですが、あまり表情がさえません。4人グループでの活動は、友だちの夢を英語で紹介し他のペアがそれを聞きとるというものでした。こちらの方は明らかにペア活動よりも表情が柔らかくなっていました。この状況の違いは、課題や指示の構造的な問題が大きく関係していました。
本来ペアでの活動はグループと違って1対1で逃れられない厳しい関係にあります。今回は、相手の話すことを聞きとってメモをするという、ある意味、出題者と解答者の関係です、気軽に教えてとは聞けません。聞き返すのも「Could you ・・・」と丁寧で長い文を使うということになっていたのでハードルも高かったのです。もう一つの問題は、子どもの夢が「I want to be ・・・」と職業で語られていたことです。子どもたちは自分のなりたい職業を教師が用意した単語一覧から拾っていますが、聞く方はまず知らない単語が出てきます。聞きとるにしても、書くにしても苦しい状態になります。話す方も覚えて話すのに精一杯で、相手の顔を見る余裕がありません。聞く方もメモしなければならないのでずっとワークシートを見ている状態でした。互いにかかわりあえなかったのです。
一方グループの活動では、発表に対して、その内容を1番よく知っている発表者のペアがフリーでかかわれます。職業の単語がよくわからない友だちに、職業の単語一覧を使ってこれだよと教えています。聞く方のペアは同じ立場なので気軽に相手に聞いたり、互いのメモを見合って確認したりできます。かかわりが発生しているのです。だから、表情がペアの活動よりよくなっていたのです。
ペア活動の場面では、書くことは後にし、「I want to ・・・」に対し「You want to ・・・」と主語を変えて復唱し、それに対して「Yes,・・・」「No, I want to ・・・」と進めるなど、互いがかかわり合える構造にしていく必要があると思います。
続いて、全体で発表し合う場面です。ここでは自分の夢を発表してもらい、その内容を、主語をかえて「She wants ・・・」と全体で言いかえる活動でした。子どもたちは、今まで友だちの夢を発表して、それを聞きとることをしていたので、意外そうでした。発表のハードルは下がったのですが、今まで頑張ってきたことが活かされないので、ちょっと意欲が落ちたように感じました。
教師が指名して発表させ、それを全体で言いかえさせますが、なかなか全員が口を開けて大きな声を出せません。全員に発表させたいためでしょう、1回言ってはすぐ次の発表者に移ります。最後になってだんだん声が出るようになりましたが、子どもたちが一番しっかりと「Clear Voice」で言えたのは授業終了時の英語での挨拶でした。いつも言い慣れて自信を持っているからです。子どもたちはここまでやれるはずです。これを目標にするべきなのです。
1回言って次に進めば、自信のない子は声を出す機会がありません。声を出せなくても、だれも困りません。こういう状況であれば、なかなか頑張ろうとはしません。全員が口を開くまで何度も同じことを言わせることが大切です。わかっているけれど自信がなくて声が小さい子に対しては、うなずいて見せるなり、いいよとOKサインを出したりしてしっかり声が出せるように励まします。TTであれば、T2が子どもの中に入って励まし役をするのもよいでしょう。最初はよくわからない、できなくても、友だちの声をよく聞いてまねをすれば評価される。自分が参加するのを待ってもらえる。自分がちゃんと声を出さないと先には進まない。だから頑張る。このような姿を目指してほしいことを伝えました。
また、この全体での活動中、子どもが一番緊張したのは、一人の子に「わからなければ聞き返して」と先生がせまったときです。全体で答えればいい「みんな」という、ある意味無責任な状態から、「あなた」という個人になることを求められたからです。自分が指名されることも想定して、みなその子の答に注目したのです。このことからもわかるように、個人を指名したり、全体の場で個人と個人でやらせてみたりすることもとても有効な手段です。自分が指名されることを意識すれば、指名されなくても集中してやり取りを聞き、主体的に参加するのです。
もう一つ気づいたことは、できる生徒の活動量が低いということです。自分の発表文をつくる場面、ペアでの活動の場面、いずれにしてもすぐにクリアして緩んでいます。全体での言い換えの場面でも、あまり口を開いていません。決まったパターンでの練習で、わかりきっているので参加する意味を感じないのでしょう。誰もができるようにと課題を低めに設定すると上位の子どもが参加しなくなってしまいます。どちらかと言えば課題は高めの方が有効です。苦しい子も助けてもらえばできるので、クリアすることは可能です。できる子は助けることでより高度な課題に挑戦することになるからです。
授業後の検討会は子どものことをよく見て、とてもよい気づきがたくさん語られていました。途中で各グループの話題を発表し合うことで、後半はグループ間で共通の話題が増えました。それを全体で共有することで学びは深くなったと思います。この学校に初めておじゃましたころと比べると確実に進歩しています。とてもよい指摘、なるほどと納得できる指摘がたくさんありました。しかし、ともすると第三者的な立場で話していると感じることがありました。この授業に対する指摘に終わり、そこから自分の授業、自分たちの授業にどう活かすか、どう反映していけばよいと思ったのかがあまり語られないのです。学んだことを自分たちの授業にどう活かすかが大切です。このことに皆さんが気づいてくれれば、学校全体のレベルアップにつながると思います。
検討会終了後、授業者と話をしました。
非常に素直に皆さんからの指摘を受け止めていました。この姿勢があれば確実に成長していくと思います。授業者の思いが明確で、子どもたちとの関係も良好だからこそたくさんのことが学べたと思います。
校長、教頭、教務主任の先生とそれぞれお話して、3人とも授業を大切にする学校を目指して、それぞれが課題を持って学校経営に取り組んでいることがよくわかります。昨年、今年と人事面では厳しい状況にありますが、きっと乗り越えられると思います。私もたくさんのことを学べた1日でした。