改善点をいろいろと考えた授業
- 公開日
- 2014/06/02
- 更新日
- 2014/06/02
仕事
先週末は小学校で若手を中心に授業アドバイスをおこなってきました。市内の全小学校での授業アドバイスの一環です。
3年生の道徳の授業は、読み物教材を使ったものでした。主人公がもらった絵葉書の料金不足を友だちに告げるかどうかという話です。授業者は子どもの発言を「いいこというね」と評価したりしますが、受容も評価もしないことがあります。また、何がいいのかを具体的には示しません。子どもが何か発言してくれたら、少なくとも受容だけは必ずしてほしいと思います。また、子どもたちの半分くらいしか挙手をしなくてもすぐに指名します。発言者が最後に「いいですか」と聞くと、ほとんどの子どもが「賛成」と返します。これはとても気になる場面です。本当にわかっていなくて手を挙げていないのであれば、答だけを聞いて判断できるはずがありません。「賛成」と言うのはおかしいのです。本当はわかっていたが発言することに価値がない、もし間違えたら恥ずかしいと思っているために挙手しなかったのか、よくわかっていないが空気を読んで賛成したのかです。いずれにしても、授業者が発言を常にポジティブに評価していないために、子どもが安心して発言できない教室になっている可能性があります。
授業者が資料を読みますが、読むことに意識がいってしまい、子どもたちをあまり見ません。ただ聞くだけですから、子どもたちの集中力も切れてきます。できるだけ早く子どもたちに資料を読み取らせるために、途中で授業者が適宜質問をしたり説明したりすることが必要です。読み終わってから、友だちとの関係や状況、気持ちなどを質問して確認しますが、挙手する子だけで進んでいきます。
話の中で兄は料金不足を知らせた方がいい、母は知らせない方がいいと言うのですが、その理由を考えさせません。あなたならどうするかと質問しますが、それぞれの考えをよく理解していないので、表面的に考えます。葛藤がなく、友だちの意見を聞いても心が動かされません。授業者は子どもの発言を「・・・ということかな」と自分の都合のよいように整理してしまいます。発言した子どもはきょとんとしています。これでは子どもたちは教師の求める答を言えばいいと考えてしまいます。「料金不足だったよと言われたらどう思う?」「恥をかかされたと思って嫌いにならない」「葉書の料金のことを知らないとまた失敗しちゃうよね」と揺さぶっておいてから、考えさせれば子どもたちの様子はだいぶ違ったものになったと思います。また、あなたの仲のよい友だちから来た葉書が料金不足だったらどうするというように自身の問題としてもよかったかもしれません。
これから友だちとどうしたいかをたずねます。「仲良くしたい」「間違ったら教えてあげる」「助け合う」と相手に対するものと、「嫌われないようにする」「自分が間違うと相手が悩むから間違えないようにしたい」という自分に向かう意見が出てきます。この2つの視点を焦点化してもう一度考えさせると友だちとの関係についてより深く考えたと思います。
最後に授業者が自分の中学時代の体験を話しますが、子どもは真剣に聞いていません。自分たちは与えられた課題をこなした。仕事は終わったという雰囲気です。子どもの心が揺さぶられていなかったのでしょう。
授業者は、自分が子どもたちに迫り切れていないことを自覚していました。そこに気づいていれば大丈夫です。道徳はどれだけ子どもの内面に迫れたかが勝負です。そのためには課題の工夫や揺さぶりが重要になります。そして、深く考えれば考えるほど互いに影響をしあいます。このことを意識して授業を組み立てるようアドバイスしました。
6年生の外国語活動は、ちょっと気になるものでした。
最初にPhonicsの時間がありました。元気よく声を出す子どもがいる反面、ほとんど口を開かない子どもがいます。すでに英語嫌いになった子どもがいるようです。
子どもたちは正しい発音を意識していません。なぜなら、ALTや授業者がそのこと意識した進め方をしていないからです。Phonicsでは、口の形を誇張するくらいはっきりと見せなければ、BとVの違いなどは身に付きません。しかし、ALTは口の形を子どもたちにはっきりと見せずに淡々と発音して繰り返させます。また、正しく発音できていなければ、できるまでやり直させる必要がありますがそれもしません。そのため、子どもたちは正しく発音することを意識していなかったのです。
ヒアリングでは今まで学習した月の名前を一連の文章の中から聞き取るというものでした。何月には何をするという話をALTが「読む」だけです。situationもなければ、身振りもありません。これでは何を言っているのかさっぱりわかりません。月を聞き取りやすいように、意図的に間を取ることもしません。コミュニケーションの基本がないのです。正解の発表はALTが読んだ後、授業者が何の解説もなく和訳をするだけです。これでは、子どもたちは英語を聞いて理解しようとはしなくなります。何を言っているかわからない長文を聞くことより、短い文章でいいから何度も聞いて理解することの方が大切です。せめて、絵や写真と身振りを使って何を言っているか伝える工夫をしてほしいと思います。最近の流れであるsituation baseと真逆のものでした。
誕生日を聞いて答えることがこの日の主課題です。授業者とALTで誕生日を聞き合う見本を見せます。誕生日が12月なので”so far away”という言葉を使いました。しかし、これも一切の身振りがありません。ただ、言葉を使われても理解する糸口がありません。黒板に月のカードが貼られていたので、せめて5月のカードから12月のカードまで指を動かしながら、”so far away”と言えば意味を理解できたのではないでしょうか。
全員でALTの後について発音します。”When is your birth day?”と聞かれて”When is your birth day?”、”My birthday is December twentieth.”という答に対して”My birthday is December twentieth.”と同じ言葉を繰り返します。相手の言った言葉を繰り返すのではなく、それに合わせて答える練習が必要です。言われたことを繰り返して言うだけでは頭を使いません。ALTはCDの代わりで、コミュニケーションを取る相手にはなっていませんでした。一列立たせて、全員で”When is your birth day?”と聞きます。順番に” My birthday is ・・・.”と答えて終わりです。正しく伝わったかどうかわかりません。せめて、”Oh, your birthday is ・・・.”と答えるだけでも全く違ってきます。友だちの発言を聞かなければ言葉を返せません。聞くことを意識できますし、発言者は伝わったことを実感できます。
この後は、友だちから聞いた誕生日の月日の数を使ってのビンゴゲームです。これは、最も避けたい活動です。なぜなら、ビンゴという英語活動とは直接関係のない目標に向かって活動するので、テンションばかり上がって肝心の英語でのコミュニケーションがおろそかになるからです。たくさんの友だちと会話しても、使うのは”When is your birth day?”と” My birthday is ・・・.”だけです。全く同じ2文だけをしゃべればいいのです。もっと言えば、”When is your birth day?”は聞く必要がありません。どう聞こえようが、間違えていようが、” My birthday is ・・・.”と答えればいいのです。聞く方も、何月何日かだけに意識を集中すればいいだけで、コミュニケーションとは程遠いものです。実際に相手の答を聞いている時は、だれも顔を上げずにワークシートに書き込むことに専念していました。ここで一人の男の子が校長のところに来て質問しました。隣にいた私は、その子どもに”When is your mother’s birth day?”と聞いてみました。その子は何を言われたのかわからなくて困った顔をしましたが、何度か聞くと、”Mother?”と聞き返してくれました。”Yes.”とOKサインを出すと、ちょっと考えてから、母親の誕生日を答えてくれました。”Oh, your mother’s birthday is ・・・.”と通じたことを伝えると、とてもうれしそうな顔をしてくれました。こういった聞き取ろう、伝えようとすることが大切なのです。
この活動でも、誕生日を聞いた後、必ず”Your birthday is ・・・.”と答え、それに対して”Yes, that’s right.”と確認を取ることをルールにするだけでかなり様子が変わると思います。誕生日も本人だけでなく、家族の誰かを聞くことにするだけで、双方に聞く必然ができます。誕生日以外の質問も少し用意するだけで全く異なった活動になります。伝わった、聞き取れたというコミュニケーションの実感を持たせるような活動を意識してほしいと思います。
ここに述べたことは、授業者の問題というよりはカリキュラムの問題です。学校全体の課題として改善に取り組みたいという言葉をいただけました。とてもうれしいことです。
この後、2つの授業を参観しましたが、どちらも子どもたちのとてもよい姿をみることができました。これらの授業については明日の日記で。