日記

若手の授業に感心する

公開日
2014/06/03
更新日
2014/06/03

仕事

昨日の日記の続きです。

1年生の国語は絵の女の子の表情とそのわけを、話型を使って話す授業でした。授業者は笑顔をしっかりつくれています。子どもたちの授業規律もできています。指名して返事がなければ「返事がありません」と躾けていました。子どもたち一人ひとりをとてもよく見ています。ただ、子どもたちのテンションの高さが少し気になります。指示に対する「はい」という返事の声が大きすぎるのです。子どもたちを受容しているのですが、具体的な評価は「元気だね」ぐらいしか聞かれません。先生に認めてもらう方法が大きな声を出すこと以外にはよくわからないのかもしれません。
経験年数は少ないのに、子どもからずれた答がでても「なるほど」と受け止めることができるのには感心しました。ただ、授業者はちょっと困った答の時にだけ「なるほど」を使う傾向があります。正解がでれば、すぐにまとめて説明を始めたり、次の質問に移ったりします。子どもは「なるほど」と言われたら答を外したと思うかもしれません。また、子どもとの縦糸の関係は素晴らしいのですが、子ども同士をつなぐことはまだできていません。正解でもいったん「なるほど」と受け止め、同じ答でもいいので何人にも発表させるようにしてほしいと思います。
授業者が提示した女の子の様子を描いた絵に関する質問に対して、1人しか挙手しない場面がありました。絵が少し小さいのでわかりにくかったのかもしれません。どうするかと見ていたらペアで相談させました。よい判断です。しかし、その時絵は提示していませんでした。相談の途中で確認ができないのはちょっとつらいと思います。この時まで、2人だけが1度も挙手をしていませんでした。そのうちの1人がペア活動で口を開きました。その後の活動でもみんなと一緒に反応するなど変化が見られました。ペア活動がよい影響を与えたようです。できれば、ペア活動の後に、どんなことを話したか聞いてあげるとよかったと思います。
ペアで話型を使ってわけを説明する練習をします。活動内容は指示されていますが、どうなればいいのかという目標や評価の基準が示されていません。子どもは話しっぱなしです。聞き手役の子どもの役割もはっきりしません。なんとなく話型を使って話しているだけでした。授業者が上手く活動できていないペアを指導しているうちに多くの子どもたちは集中力を失くしていきました。この後の全体での発表場面でも、目標や評価基準がありません。唯一発表を具体的に評価したのが、「大きな声で言えた」でした。やはり、子どもたちの声ばかりが大きくなってしまうのはここに原因がありそうです。また、聞く側も最初は友だちの発表を興味を持って聞いていましたが、積極的にかかわる場面がないので集中力を失くしていきました。聞く側の役割を明確にすることが大切です。
授業者はとても前向きで素直な方です。子どもたちとの関係は大丈夫なので、子ども同士の関係をつくることを意識してほしいと思います。あとは、一つひとつの活動の目標や評価を子どもたちにわかる言葉で伝えることができれば、大きく成長できると思います。これからがとても楽しみな方でした。

全体での研究授業は、4年生の理科の体のつくりの授業でした。関節の働きに気づかせる場面です。
とにかく感心したのが子どもたちの表情がとても素晴らしかったことです。授業者は笑顔も素晴らしいのですが、上手に子どもをほめながらよい行動をうながすので、子どもがとても前向きなのです。作業を止めるように指示を出した時など、「速い、○○さんと目が合ったね」と行動の速さをほめるだけでなく、「目が合った」と望ましい行動を上手に伝えます。望ましい行動を具体的に示すので、子どものよい行動が増えます。当然ほめる機会も増えて、教室に前向きな雰囲気が生まれます。子どもにちょっとしたことを頼んでも「ありがとう」の言葉を忘れません。指示をして次の行動に移る前には、「準備はいいですか」とチェックを忘れません。教職経験が3年目?とはとても思えない、細かいところまで目が行き届いている授業でした。
最初にダンボールでつくった筒を手足につけたロボットを登場させます。同僚にお願いしたようですが、子どもたちは大喜びです。興奮状態が尾を引くかなと思ったのですが、すぐに引っ込めました。子どもたちにうけるとついつい時間をかけてしまうことが多いのですが、子どもたちのテンションが上がりすぎない前に止める割り切りは見事でした。
ロボット体験をしようということで、ダンボールでつくった筒を手足につけて、「お茶を飲む」「歩く」「立ったり座ったりする」といった行動ができるかを予想して、その理由を考えさせます。その後、ペアで確かめさせました。この時、ペアの片方はちゃんとできているかどうか判定する役割です。ペア活動の基本がよくわかっています。このことにも感心させられました。
全体での発表場面を、挙手で進めました。子どもたちはワークシートにしっかり書けていたので、挙手に頼らなくてもよかったかもしれません。発言に対して「同じような意見の人」と子どもをつなげようとするのですが、挙手だけの確認で終わりました。ここは、最初に挙手できていなかった子どもを指名して、もう一度その子の言葉で発表させたいところです。
歩きにくい理由を「硬い」という言葉で説明した子どもがいます。これ以上の言葉が上手く出てきません。このような時は、授業者が代わりに説明することが多いのですが、他の子どもにどういうことか考えさせました。なかなかのものです。「足が曲がらなかった」という言葉を引き出しました。ここで、先ほどの子どもに「そういうこと?」とはっきり確認をするとよかったでしょう。
授業の最後で先生が少しまとめすぎたのが残念です。「○○さんが言ってくれた」と固有名詞で子どもの発言を引用することもできる方です。子どもたちの言葉でまとめるようにすればもっとよかったでしょう。
授業中に2人の子どもがとても気になりました。友だちの発言や先生の説明をあまり真剣に聞いていません。2人でよそ事をしていたりします。ところがワークシートの記入などの作業は素早くこなします。どうやらよくできる子どものようです。授業者もこの子どもをどう扱えばいいのか悩んでいるようでした。他の子どもとかかわらせたいところです。こういう子どもには単に答を発表させるのではなく、みんなが困った時に助ける、友だちの代わりに説明するといった役割を与えるとよいでしょう。「○○さんのおかげでよくわかったね」「○○さん、△△さんの考えよくわかったね。△△さん、○○さんにわかってもらえてよかったね」と友だちとのかかわりで評価するのです。このようなやり方を試してみるようにお願いしました。
授業者は力がありますが、謙虚で前向きです。これからもどんどん伸びていく方だと思います。授業を見せていただいた私も、とても楽しい気持ちになりました。

全体の場では、挙手に頼りすぎずに全員参加を意識してほしいこと。子どもの言葉に教師がつけ足しをせずに、子ども同士をつないで子どもに言葉を足させること。コミュニケーションの基本はまず聞くことであること。ペアなど、子ども同士のかかわりを意識した時には受け手の役割をはっきりさせることなどを話させていただきました。ベテランの先生方がとてもよい反応をしてくださいました。力のある若手が育っている理由がわかったような気がしました。素晴らしいベテランがよい影響を与えていることは間違いありません。素晴らしい環境だと思いました。

この市の小学校への訪問はこの学校で3校目です。共通して感じたのが、私の訪問が市からの派遣で学校が望んだものでないのにもかかわらず、管理職がとても前向きにとらえてくれることです。みなさん授業改善を学校の重要課題としてとらえ、今回の訪問をそのためのよい機会にしようとしてくれているのです。こんなにうれしいことはありません。来週以降、残り5校を訪問しますが。とても楽しみになってきました。本当によい機会を得られたことに感謝です。