日記

学校としての課題が明確な小学校で授業アドバイス

公開日
2014/10/17
更新日
2014/10/17

仕事

先日、小学校で授業アドバイスを行ってきました。午前中に学校全体の様子を見せていただき、午後は授業研究でした。

学級ごとの様子がかなり異なる学年と、ほとんど同じ学年がありました。同じような状態の学年はいろいろなことが統一できているのでしょう。少なくとも学年として学習ルールや指導内容が統一できていると、次年度の学級編成が変わってもスタートがとてもやりやすくなります。理想は学校として統一できることです。なかなか難しいのですが、その必要性を感じました。

全体として、先生方は子どもをよく受容できていると思いました。子どもたちとの関係も良好に見えます。その一方で、授業規律については少し曖昧になっているように感じます。子どもに鉛筆を置くように指示しても、全員が従っていないのに話を始めたりします。また、子ども同士をつなぐ意識も低いように思います。教師は発表者を見て話をしっかり聞くのですが、教室全体を見ようとはしません。1人発言するとすぐに説明を始めます。一問一答の授業です。そのためにどうしても教師のしゃべりが多くなります。子どもに反応を求めないので、子どもたちも自分が指名されないと参加する意味がないので、友だちの発言の間は集中力を失くします。教師の話も長くなると聞けなくなる子どもが出てきます。しかし、板書を写すなどの作業はきちんとやることができます。教師が子どもたちに聞くことを求めていない、聞くことの価値を与えていない授業とも言えます。「同じ考えの人いる?」「なるほどと思った人?」というように、常に子どもの発言に対して反応を求めることが必要です。
また、挙手で授業を進める傾向が強いのも印象に残りました。挙手しない子どもは参加しません。「困っている人?」と困っている子どもに参加を求める、子ども同士に相談させ考えを持たせる。野口先生流に、全員に答を選択させ立場をはっきりさせるといった工夫で全員を参加させるようにすることが大切です。
「なるほど」と子どもたちを受容する言葉が出てくるのに対してほめる言葉、評価する言葉が少なかったのも気になりました。子どもを受容するだけでなく、よい発言、よい行動を評価することで子どもたちによい価値観が広がります。
学校としての課題がはっきりしていると感じました。

この日見たいくつかの算数の授業では、教科書では押さえてあるポイントを外していました。また、考えることよりも答の出し方を重視していることが目立ちました。次回11月8日(土)の教師力アップセミナーでは、豊田市立小清水小学校の和田裕枝校長が算数の教材研究のやり方について具体的にお話ししてくださいます。算数の授業力向上に間違いなく役立つ話が聞けますので、多くの小学校の先生に参加していただきたいと思います。

研究授業は5年生の社会科で子どもたちが今まで学習したことをもとに、自分たちがよいと思う機能を持った車を提案します。
この日はまず、これまで調べた車の工夫の発表から始まりました。3つの班がそれぞれ事故を防ぐ(パッシブセーフティ)、人の命を守る(アクティブセーフティ)、誰にでもやさしい(福祉・ドライブアシスト)というテーマで発表します。これらのテーマにそった車の機能を、1人が1つ、原稿を見ないで発表します。しかし、子どもたちは資料の内容をただ覚えて発表するだけです。発表者自身もその意味はほとんどわかっていません。車のパンフレット暗唱しているようでした。聞いている子どもたちも、メモをすることに一生懸命で顔が上がりません。理解できない内容で何をメモしているのか気になります。発表の言葉のいくつかをそのまま書いているだけでした。細かい機能や原理ではなく、これまで学習した車社会の課題とそれを解決しようとしているのかといった視点での発表にした方がよかったのかもしれません。
発表で聞いたことをもとに自分たちの車にどんな機能を持たせるか、そしてそのキャッチコピーをどうするかを考えて、班で1つに決めます。話し合い活動の前に個人の考えを持たせようとします。自分の考えを持たせることにこだわるのは、持っていないとグループで発表できない。そして、答を1つに決めるので、自分の考えを持てないと参加しにくくなるからです。しかし、友だちの考えを参考にして自分の考えを持つのであれば、そこにこだわる必要はありません。グループ活動にはこういう考え方があることも知ってほしいと思います。
6人の班なのですが、なぜか端にいる子どもがペンを持って仕切っているところが多くありました。反対側の子どもは立ち上がって身を乗り出して参加しています。やる気があってよいのですが、やはりこの人数、隊形は無理があるように思いました。
そもそもこの活動は、どうなればよいという目標がはっきりしません。子どもたちは機能をたくさんつけて、どこかで見たようなコピーをつくりますが、この発表を聞いて誰がどうなればいいのでしょうか?結局、根拠のない作業になっています。子どもたちの目線、言葉で目標と評価規準を与えるべきでしょう。
また、キャッチコピーとはどのようなものであるか明確にされていません。3年生で学習したお店の工夫で見たポップなどを思い出すといったことをしてもよかったかもしれません。
もう一度車社会の課題を整理して、今どんな車が必要なのかというように、もう少し自分たちが考える車のねらいを意識させるとよいでしょう。また、搭載する機能の数に制限をつけるといった発想もあります。3つなら、6つならというように2段階にすると、何がより大切なのかを考えることにもつながります。数が少なければ少ないほど、安全に関する機能に集中するはずです。これは1つの例ですが、子どもたちが考えるような仕掛けが課題には必要です。
最後に授業者は死亡事故のグラフを提示し、車づくりの工夫によって事故が減っていることを示しました。これも子どもたちが考える材料になっていません。まず、死亡事故を減らすためにどんなことをするといいか考えさせることが大切です。事故防止のためにインフラや法整備などもされています。車づくりの工夫にしか視点がいかないようでは困ります。社会全体でいろいろな工夫をしている中で、自動車会社は何をしているのだろう。君たちは何ができるといったアプローチもあると思います。

全体の場では、この日見た授業からどのようなことを意識すれば授業がもっとよくなるかという話をしました。また、研究授業をもとに、活動における子ども目線の目標、評価規準の大切さと、グループ活動の原則についてもお伝えしました。参加された皆さんがとても真剣な表情で話を聞いてくださったのをとてもうれしく思いました。
私の話から何か1つでもヒントになることを見つけていただけたら幸いです。また、先生方にお会いする機会があることを願っています。