日記

授業改善の芽が育ちつつあることを感じた模擬授業

公開日
2014/10/20
更新日
2014/10/20

仕事

先日、私立の中高等学校で模擬授業でのアドバイスを行ってきました。若手の先生による中学校の理科の唾液の働きの実験でした。多くの方が自主的に参加してくださいました。

授業は導入で朝ご飯を食べたか、なぜ食事をするのかといったことを子ども役とていねいにやり取りをします。しかし、肝心の、唾液の働きの実験をなぜ行うのかという疑問を子ども役に持たせることはできていません。「ご飯をよく噛めと言うけど、なんか意味がある?」と問いかけてみる。「じゃあ、肉はどうなの?」というように疑問や考えを持たせることが大切です。例え知識として知っている子どもがいても、「本当?絶対?」と揺さぶり、「どうすればそのことが言える?」とすれば、実験につなげることができます。この実験では唾液とデンプンを混ぜた液体を体温に近い温度にする必要があります。何らかの形でその必然性を問いたいところですが、天下り的に指示されます。
教科書的には、唾液のデンプンに対する働きだけを調べる実験ですが、タンパク質についても可能であれば確かめたいところです。唾液はデンプンにしか作用しないことを確認することも大切だからです。

授業者は、実験の全体像を見せずに個々に説明をします。これでは、子どもは指示に従って作業するだけです。まずは、何を知る実験か、結果はどうなるかの予測をさせるとよいでしょう。ここでは根拠を求める必要はありません。時間をかけずに予測させ、自分の立場を決めさせるのです。こうするだけで、実験の結果に対して興味を持たせることができます。この実験では、デンプンが唾液によってどうなるかを予測させます。デンプンは糖が長くつながったものだということは知識ですので教えてしまえばいいのです。そのデンプンが変化するのであれば、デンプンでなくなる。デンプンがバラバラになるのであれば、糖ができるはずだ。こういったことを実験の前に押さえておくのです。試薬の説明も最初にしておくとよいでしょう。デンプンがあるかどうかはヨウ素液、糖(正しくは還元性の糖)があるかどうかはベネジクト液を使って調べることができることを説明した上で、実験の細かい指示を与えるのです。結果の予想は、デンプンは「そのまま」「分解されて糖ができる」「変化するが糖以外のものになる」の3つです。それぞれの場合に実験の結果がどうなるかを整理しておくとよいでしょう(これとは別の軸で温度がありますが・・・)。

授業者は、準備の時間を短くするために、生徒の実験机の上に道具を準備していました。自分の手元の道具で説明するのですが、子ども役が目の前の道具を触って液をこぼしてしまいました。子どもがやりそうなことです。見事に子どもになりきっていました。目の前に道具があれば触りたくなるのが人情です。必要な道具をセットにしておいて、実験の直前に配るとよいでしょう。

全体像がわからないまま、知らない試薬を使うよう指示され、その説明は後からされるので、子ども役の先生方は混乱します。いくつもの指示が続くと集中力が切れます。先生方は、この授業がいい悪いと評価するのではなく、自分たちの授業でも同じようなことが起こっていることに気づかれます。子どもの立場で聞くとよくわかるのです。指示が複数ある時は、最初にいくつの指示をするかを言っておくだけで、心の準備ができます。そんなちょっとしたことが大切であることに気づいていただけました。みなさん、とても真剣にかつ前向きに参加してくださいました。

授業者はとても素直な方で、指摘されたことをできるだけその場で修正しようとします。私の指摘にも終始笑顔を絶やしません。これはなかなかできることではありません。この方なら、ちょっと意識をするだけで大きく進歩するはずです。次回は今回の模擬授業で気づいたことを意識した授業をしてくれることと思います。1時間じっくりと授業を見せていただいた後、どのように具体化すればいいのかを一緒に検討したいと思っています。

授業改善への意欲を持った先生が増えつつあることを感じます。授業改善の芽が育っていくのが楽しみです。