活動の目標や評価について考えた授業(長文)
- 公開日
- 2014/10/21
- 更新日
- 2014/10/21
仕事
小学校で授業アドバイスを行ってきました。先月に続いて2回目の訪問です。前回訪問から日が浅かったのですが、私からのアドバイスを意識してくださっている方がたくさんいらっしゃいました。
5年生の体育の授業はいろいろなルールがきちんと確立していました。走って集合する、集合すれば口を閉じて待機をする、友だちのプレイを見るといったことが何も指示をしなくてもできています。子どもたちにどうなってほしいのかが明確にわかる授業でした。また、指示が簡潔になるのでよく伝わります。子どもたちの動きにムダがないのが印象的でした。
今回の活動は「楽しく体を動かす」というめあてで、子どもにいろいろな動きをつけて歩かせていたのですが、何を意識して歩けばよいのかがよくわかりませんでした。子どもたちは指示に従って動きますが、一つひとつの活動の目標や評価がよくわからないのです。授業者は子どもたちにどんなことを意識しているか聞いたりするのですが、ちょっと目標がはっきりしないので無理があります。活動の前に明確にしておくべきだと思います。
6年生の先生は、前回と同じく算数の授業でした。私のアドバイスを受けて、あえて同じ教科に挑戦してくれたのです。その気持ちをうれしく思います。子どもたちの話し合いの持ち方や発表についてもこの日まで意識して指導してきたようです。子どもたちの聞く姿勢がよくなっているのを感じました。板書も思考の跡が残るように意識していました。反比例の関係を表で考える場面でしたが、表を横に見るか、縦に見るかといった視点を明確にしていました。横に見た時に1/2倍、1/3倍という説明が子どもから出てきました。授業者は「一緒だけど違う言い方の人?」と問いかけました。子どもからいろいろな言葉を出させようとするのはいいのですが、ここは、単に「同じように考えた人?」と聞きたいところです。違う言い方と限定しないことで、できるだけ多くの子どもが参加できるからです。何人かに聞くことで、授業者が期待していた÷2、÷3という言葉を引き出すことはできると思います。授業者は「どっちが正解?」と子どもたちを揺さぶります。これもなかなかよい対応ですが、子どもから「同じ」という声がでたあと、すぐに授業者が説明をしてしまいました。ここも、子どもに説明させたかったところです。また、「正解?」より、「同じ?」「違う?」といった聞き方の方が考えやすいように思います。
表を横に見た時、縦に見た時の性質を教師がまとめます。せっかく子どもたちに発言させたので、子どもの言葉でまとめさせたいところでした。まだまだ、しゃべりすぎのところがあります。
指摘すべきことはありますが、前回と比べていろいろなことを意識できていました。謙虚にアドバイスを受け止めたことは立派だと思います。機会を見つけて自ら学ぼうとしてくれるときっと大きく進歩すると思いました。
この日見た他の先生方も、前回のアドバイスを活かそうとしてくれていました。子どもを受容しようとすることは意識されています。が、まだポジティブに評価することはできていません。発言者と教師の1対1の関係になる場面も目立ちます。子どもの発言をつなぐことも次の課題でしょう。また、授業規律という点では、子どもが全員指示に従っていないのに次の活動に移る場面が目につきました。徹底することを大切にしてほしいと思います。
ベテランの先生方が一緒に授業を参観してくれました。私の指摘をすぐに理解してくださる方ばかりです。さすがです。若手の授業を見ることで、自分たちの授業を再点検してくださっているのを感じます。きっと、若手によいアドバイスをしてくださることと思います。
この日は、1年生の国語で授業研究を行いました。学校で見つけた生き物や物を家の人に紹介する文章を書く教材です。前時までに「知らせたいカード」に、見つけたものの絵を描き、見つけたことを絵から線を引いて短い言葉で表現しています。
最初に、指名した子どもに、家の人に知らせたいことを実物投影機で「知らせたいカード」を映しながら発表させます。実物投影機は教室の廊下側、スクリーンは黒板の窓側です。発表者は機械の前で、絵を指さしながら説明します。子どもたちはスクリーンか発表者かどちらを見ていいかちょっと戸惑いました。この発表の形は不自然です。発表者が機械を操作する必要性がなければ、スクリーンの横に立たせて発表させるべきでしょう。スクリーンを指で指すのは難しいので、指示棒を準備するとよいと思います。
この後、ペアで家の人に知らせたいことを「話します」。子どもたちは話すことが目的なので、自分の前にカードを置いて勝手にしゃべっています。2人の間にカードを置いて説明する子どもはほとんどいません。聞く側には目的がないので漫然と聞いています。話す側、聞く側双方に目的や目標、評価の基準が必要になります。授業者は質問があればたずねてもいいとは言っていますが、子どもにはその必然性がありません。相手に伝わるように話す。伝わったかどうかの確認も含めて聞き手が、何らかの評価をする。単純に復唱してもいいでしょう。こういった目標が必要になります。
文章を書くための途中の段階として、何について書くかを決め、「知らせたいカード」に書いた短い言葉をもとに文をつくって「短冊カード」に書きます。1つにつき、1枚の「短冊カード」に説明を書きます。あとでカードを並べて文章にしていこうというわけです。
授業者は拡大コピーした短冊カードを準備していたようですが、うっかりして持ってくるのを忘れてしまったようです。ちょっとパニックになってしまいました。あせる気持ちはわかりますが、実物投影機を使えばすぐに対処できたことです。余裕がなかったようです。
短冊カードの使い方を授業者が用意したモルモットの「知らせたいカード」を使って説明します。目について、「まるくてくらい」という言葉が子どもから出てきます。授業者はすぐに「目はまるくてくらい」と言い直します。「〜は(が)〜です(ます)」と主語と述語を意識した文型を使いたいので、「目は」としたのです。しかし、主語を意識させるのであれば、「何が?」と質問して子どもに答えさせることで主語の必要性に気づかせたいところです。
短冊カードの一番上には何についての説明かを書く欄があります。その下にマスが書いてあります。最初の1マスが斜線でつぶされています。ここで、先ほどの文型の他に、最後に句点をつけること。書き始めは1字下げること注意します。字下げを意識させるのであれば、あえてマスをつぶさないという選択肢もあります。
形式や注意点を指示はしますが、この文をつくる目的の確認をすることや、目標が明確にすることはないままに、「短冊カード」が4枚(?)入った袋を配ります。子どもたちはすぐに短冊カードを取り出し、何枚もあることに気づきます。ここで、どんどん書いていいことを伝えます。もう一度指示の確認をして作業に入りました。短冊カードが配られてからまた説明があったので子どもの集中はいったん切れました。配る前に説明は終えておきたいものです。
明確な目標がないまま作業に入ったので、子どもたちは1文書くとすぐ次の「短冊カード」に取りかかります。子どもたちの目標は自然に何枚書くかになっていました。この作業に入る前に、家の人に伝える文章を書くという目的を再度押さえておく必要があると思います。絵を見せなくてもどんなものか伝わる文章にすることを目的として明確にするのです。モルモットの例を使って、1文と2文、修飾語が複数あるものなどを比較して、どれがよく伝わるかを考えさせます。こうすることで、詳しく書く、修飾語や説明の文の数を増やすことが目標として浮かび上がってきます。短冊カードをたくさん書くことではなく、1枚の短冊カードの中身を充実することを意識させるのです。
ここで、いくつかの問題が起きます。主語と述語の文型にこだわると、2文ある場合に困るのです。教科書の例は1つの項目(段落)が2文で構成されています。2つ目の文の主語は省略されます。連続する文の主語が同じ場合は原則として省略する方が読みやすいからです。教科書に主語と述語を使った文型が書かれていない理由です。このことを押さえなければいけません。1年生ですから、例をもとに、「2つ目は同じことについて言っているから『目は』と書かなくてもわかるね」といった程度の説明をすればいいと思います。
また、行頭の1字下げも正しくは文ではなく段落の最初です。1年生で段落という学習用語を説明するべきかどうかの判断は迷うところです。逆に段落の説明の前段館として、この短冊カードを使うという発想もあります。「短冊カードは同じことについて1枚使うよ。1つのことについて書く固まりごとに最初は1字下げる規則だよ」と「同じことについて書かれた1固まり」と押さえて「短冊カード」1枚を1段落とするのです。最初の1マスをつぶしておく意味もよくわかります。段落を定義する時に、この例を思い出させることでわかりやすくなると思います。
この教材は、説明文の構造を学習することが大きなねらいです。文の中身をつくることにあまり苦労はさせたくありません。そのために絵を描き、短い言葉で説明を書いておいたのです。初めに「知らせたいカード」の利用を具体的にやってみると文をつくる壁が低くなったと思います。「知らせたいカード」の短い言葉に主語と述語をつけて1文をつくってみるのです。1文をつくったあとで、もっと詳しくしようと、修飾語を増やす、別の文をつけ足すといったことをするとよいでしょう。
短冊を何枚も続けて書かせるのではなく、1枚だけ書かせてから子どもの文をもとに全体でどうやって詳しくするのかを共有してもよかったでしょう。
「短冊カード」をペアで読み合い、友だちのよいところを話し合わせます。「よいところ」とは何かが明確ではありません。どんなことを話したかを全体で発表させても、自分の文を読んでしまいます。文を書く時に子どもたちはよい文を意識していないから、よいところについて話していなかったのです。この授業で何をねらい、そのためにどんな目標で活動させ、どのように評価するのかが明確でなかったために、子どもたちはただ文を書いただけだったのです。
授業者は前回のアドバイスを意識して子どもたちを受容しようとしていることがよくわかりました。ただ、緊張していたので、表情に余裕がありません。経験の少ない先生ですから、仕方のないことです。また指導案を他の先生方の協力でつくっているのでどうしてもその通りに進めなければならないとプレッシャーがかかります。あくまでも指導「案」なので、時には思い切って捨ててよいのですが、それもなかなか難しいことです。
学校訪問で同じところを指定授業として見ていただくそうです。よいところがたくさんある先生ですので、そのよさが少しでもたくさん出ることを願っています。
検討会はグループ形式でした。「知らせたいカード」や「短冊カード」の使い方、実物投影機の使い方など、この授業のよいところをたくさん見つけてくれます。また、改善点の指摘も納得のできることばかりです。先生方に授業を見る力があることがよくわかります。
私からは、実物投影機の使い方と活動における子ども目線の目標、評価基準の必要性についてお話ししました。皆さん、とても真剣に話を聞いていただけました。
今回の訪問でも、多くのことを学ぶことができました。また、来年は早い時期おじゃまして年度初めのポイントについてお話しする機会をいただけることになりました。先生方にまたお会いできるのがとても楽しみです。