日記

先生方の意欲を感じる学校

公開日
2014/10/24
更新日
2014/10/24

仕事

一昨日は、初めておじゃまする小学校で授業アドバイスを行いました。「考える力を育てる学習指導」を努力点としている学校です。この日は、若手2人の授業を見せていただきました。そのうちの1つは研究授業でした。

1年生の授業は、算数の繰上がりのある足し算でした。
ちょっと気になる子どもがいます。なかなか指示に従えないので、子どものそばに行って直接指導します。すぐに指示に従っていた子どもは、その間ほっておかれるので集中力を失くします。個別指導をしている時でも常に全体を見ようとすることが大切です。子どもたちが集中力を失くしているのに気づくことができれば、対応することができます。
授業者の表情が硬いことが気になります。しかし、「いい返事だね」というように子どもをほめることはできます。何をほめるかという視点からも、自分なりの授業規律のイメージを持っていることがわかります。そのギャップがどうにも引っかかります。その疑問は授業後に解けました。私は教室の前方から授業を見ますが、教師から見ると横から見られていることになります。その位置から見られた経験がないので、極度に緊張したというのです。授業者の視点に入らないようにしているのですが、それがかえって気になる方もいるということに気づかされました。
授業者は算数が苦手だということでした。自分でいろいろと研究したのでしょう。10の補数を素早く出せるように、9なら1、8なら2というように声に出して練習するような場面がありました。しかし、なぜ10の補数を練習するのか、いや、そもそもこの数の関係が足して10になるのだということもしっかりと押さえていません。算数的な思考の流れが切れていて、子どもは指示に従って練習をしているだけで、何を思考するのか明確になっていませんでした。まずは、教科書の流れがどうしてこうなっているのか考えることが始めることをお話ししました。例えば、教科書にはこのあと、赤い箱に4個と青い箱に8個おにぎりが入っているという問題があります。「なぜ箱なのか?」「なぜ色が分けてあるのか?」「なぜ4と8なのか?」といった疑問を持つことから、この授業の流れを考えることができます。こういったことを考えることがなかなか難しいようでしたが、疑問さえ持てれば聞くこともできます。教えてもらうことも立派な解決手段です。臆せず聞くようにアドバイスしました。

授業研究は、経験2年目の先生です。社会科のスーパーマーケットの工夫を考える授業でした。
授業開始前の活動から見せていただきました。子どもたちと合唱をしています。子どもたちの様子をずっと笑顔で見続けています。子どもたちの笑顔がとても素敵です。学級経営がしっかりできていることが想像できます。
その後、ウォーミングアップとして、グループでの地図記号かるたです。地図記号を取り札として、教師が言ったものの地図記号を取るという活動です。読み方も見事です。「昨日やったものから出そうかな」と言って、少し間を取ります。子どもに予想させて札を探す時間を与えているのです。単なるゲームにしていません。ただ、グループ内での競争なので子どもたちのテンションが上がってしまいます。できれば、競争ではなくて協力で盛り上がるようなものにしてほしいと思います。
テンションがどうなるか気になりますが、挨拶のために起立すればちゃんと落ち着きます。授業規律がしっかりできていることがわかります。
子どもを指名した時の他の子どもの様子も気になりました。発言者を意識しないのです。子どもたちと授業者との関係が強いことがよくわかります。一問一答になっていることもその一因です。子どもをつなぐことを意識してほしいと思います。
この日の活動は、前時までに付箋に書いておいたスーパーマーケットの工夫をもとに、グループで視点を整理し、それをもとにどうしてスーパーマーケットに多くの人がいくのかをまとめ直すことです。子どもたちを教室の前方に集め、スライドをディスプレイに映してグループでの作業を説明します。子どもたちは集中してディスプレイを見ます。授業者はディスプレイではなく子どもたちをちゃんと見ています。子どもも見るということが身についています。説明が長くなって集中が切れてきたことに気づき、子どもに問いかけて活動させます。このあたりも見事です。
子どもたちはグループに戻って作業を開始します。その移動の速さが印象的でした。やる気があることがよくわかります。小型のホワイトボードに付箋を貼り、同じ工夫の視点ごとにまとめてラベリングをするのですが、ここで、どのグループもホワイトボードが特定の子どもの前に固定されます。仕切っている子どもがいるのです。子どもたちの声が大きくなっていくのがわかります。仕切っている子どもが他の子どもに説明をしている声のようです。わかっている子ども、できる子どもが他の子どもを説得する場になっているようです。
まとまったものをもとに、自分の考えをまとめ直すのですが、ここでいったん作業を止めてゴールの確認をします。最初にゴールを明確にしていますが、その活動に入る前に再度確認したのです。流れの中で説明する方が多いのですが、きちんと作業を止めたことは立派です。が、この目標が微妙にずれることが気になります。「書き直す」のか、「書き足す」のか。評価の基準はたくさん書くことか、内容を詳しくすることかはっきりしません。子どもたちはどうなればよいのかを明確に意識せずに作業をしています。そのことが、発表の時に表れます。子どもたちが友だちの発表にあまり興味を示さないのです。真剣に考えたときは友だちの考えが気になるものです。ところが、あまり反応しないのです。子どもたちは、この活動で書き直すことをあまりしなかったのではないでしょうか。書き足した子どもにとっては、どれだけ足したかが評価基準です。話す内容とは関係ないのです。
視点を増やす、なるほど納得させるといった、評価基準がわかりやすい目標を設定することが大切です。また、時間の関係でほとんど発表を聞くことができませんでした。最初の付箋での作業に時間をかけるのではなく、まとめを発表する時間を確保した方がよかったと思います。発表も全体ではなくグループで聞き合い、なるほどと思ったことを書き足すことで詳しいものにするという活動を入れると、子ども同士がもっとかかわれると思いました。
社会科の授業としては課題がいくつかありましたが、授業規律や指示の出し方といった基本的なことがしっかりできているのは本当に素晴らしいと思いました。

授業後の全体会では、この授業をもとに、「発表することよりも聞くことを中心に指導してほしいこと」「子どもたちの活動、特にグループやペアでは子ども目線の目標と評価基準を明確にすること」「全員参加を求めてほしいこと」「子どもの意見を結果や根拠でつなぐこと」などを話しました。
どの先生方もとてもよく反応してくださいました。素直に受け止めていただけていることを感じました。先生方にとって参考なることが少しでもあれば幸いです。

授業研究の折に、先ほどの1年の担任と次回研究授業を予定している先生が私の横で話を聞いてくれました。学ぼうとする意欲を2人から感じることができました。次回の授業者は、いくつか質問をしてくれました。まだあるということなので、この日見た授業者へのアドバイスの後に時間を持つことにしました。「次回の授業でどのようにすれば子どもが自分たちで考えることができるのか?」「不登校傾向の子どもへの対応」「保護者への接し方」と多岐にわたってたくさんの質問をしてくれました。そのどれもが、単に教えてくださいではなく、「自分は今こうしている、こう考えているが、ここに課題を感じている。どうすればいいのか?」というレベルの高い質問です。本当に真剣に毎日子どもたちや保護者と向き合っていることがよくわかります。私も一緒になって考え、よい学びをさせていただきました。次回の授業が楽しみです。
また、この日見た2人も、再度授業を見せてくれるということでした。ますます次回の訪問が楽しみです。先生方のやる気をうれしく思います。
先生方によい刺激と学ぶ機会をいただけた1日でした。