次に訪問するのが楽しみな先生たち
- 公開日
- 2014/10/23
- 更新日
- 2014/10/23
仕事
昨日の日記の続きです。
3年生の初任者の授業は国語でした。文を、「主語」「述語」「修飾語」に分ける授業です。子どもたちは落ち着いていますが、授業規律はまだ徹底できていません。例えば音読で教科書をきちんと持てていない子どもを注意した時です。一部の子どもの反応が遅れます。それでも、授業者は先に授業を進めてしまいます。全員ができるまで待たないのです。最初のうちは時間がかかりますが、指示したことを徹底することが大切です。
基本的に、子どもが発言するとすぐに教師が説明する、一問一答で授業が進みます。教師が説明することを知っているので、子どもは友だちの発言を聞こうとはしません。発言してもほめられることがあまりないので、あえて挙手しようとしない子どもが多いようです。また、一部のできる子どもの発言を拾って進めていきますが、その発言を全体で共有することをしません。子どもの発言は教師が説明するためのきっかけでしかないのです。全員参加を目指すことが必要です。
「主語」「述語」「修飾語」の定義が明確でないまま授業は進んでいきます。教師がしゃべっている時間が多く、子どもは自分で考えてはいません。教師の説明を聞いて何となくわかったような気になっているだけです。最後の問題演習の場面では、子どもたちは素早く鉛筆を持ってやろうとするのですが、すぐに手が止まります。鉛筆を置いて考え込む子どもが目立ちます。説明を聞いてわかった気になっていただけだったのです。教師が説明を重ねることよりも、子どもにわかる言葉で明確に定義をして、それを根拠にして練習をする必要があったのです。
授業者は演習の場面で子どもたちがわかっていないことには気づいていました。子どもの様子を見ることはできるのです。しかし、机間指導で個別に対応することしかできませんでした。もちろん、それで対応できる数ではありません。いったん作業を止めて、もう一度やり直す必要がありました。
授業者は自分の授業に対する指摘を素直に受け止めることができます。この素直さは大切な資質です。他の先生の授業を一緒に参観していた時も、私の指摘を他人事ではなく自分のこととして聞いてくれました。次回はきっと進歩した姿を見せてくれることでしょう。
5年生の国語の授業では、ちょっと気になる場面を見ることになりました。
漢字のテストで、頑張った子どもたちをほめています。しかし、できなかった子どもが勉強をしていなかったことを厳しく責めるのです。子どもたちを受容することができる先生がこのような見せしめ的なことをするのですから、わけがあるはずです。昨年度、授業規律や生活態度に問題があった学年なので、厳しく接しなければいけないと考えての行動だったのでしょう。できた子ども、頑張った子どもをしっかり認めてほめますが、そうでない子どもには先生の笑顔は与えられません。頑張れなかった子どもは全体の場で叱られ追いつめられます。また、何かあれば厳しく叱られるので子どもたちは先生の顔色を窺うようになっていきます。学級の授業規律はしっかりとできていたのですが、子どもたちの集中よりも緊張が強く感じられました。
この日、会議があるため授業後直接アドバイスをする時間が取れませんでした。しかし、昼の休み時間に都合をつけて話を聞きに来てくれました。セミナーでもよく顔を見る、勉強熱心な先生です。おそらく、自分でも今のやり方に疑問を感じていたのではないでしょうか。私の指摘を素直に受け止めます。やり方を変えるきっかけを求めていたようにも感じました。
やってしまったことを反省させるより、次の行動を考えさせることが大切です。失敗や間違いを責めることより、次の一歩を踏み出すきっかけを笑顔で与えることを意識してほしいと思います。この先生なら、きっとできると信じています。
もう一人の5年生の先生の授業は理科でした。富山平野の写真を見て気づいたことを書き出して発表する場面です。理科的な視点が育っていないと、「気づいたこと」では何を書いていいかわかりません。子どもたちはいくつか書くと手が止まってしまいます。視点をどのように持たせるかが課題です。一つの方法は、この写真に何があるかをまず全体で確認することです。川、岩、海などを出させて、それぞれについてどんなことが言えそうか問うのです。また、何かと比較するという方法もあります。扇状地を学習した後なら、それと比較するといったやり方です。どこが同じ、どこが違うと問いかけるのです。より具体的に、ある部分を指摘して「同じものがある?」と投げかけるといった方法もあります。まとめとして、気づいた視点を整理して理科的なものの見方を育てていくことも必要です。
授業者は机間指導で○つけしていました。声かけもきちんとできています。しかし、ちょっとスピードが遅かったようです。全員を見る時間がありませんでした。スピードアップが課題です。
全体での発表は、子どもの発言を受けて電子黒板を使って確認します。しかし、授業者が確認するので、気づかなかった子どもは結論を聞かされるだけです。発言を受けて、「本当に○○となっている?」と他の子どもたちにつなぎ、気づけなかった子どもにも機会を与えるとよいでしょう。他の子どもを指名して確認させて、発言者に「あなたの言っていたのはここのこと?」と問いかけます。同じであれば「ちゃんと気づけたね」「ちゃんと伝わったね」、もし違っていれば「新しいことに気づけたね」「あなたの意見をきっかけに気づきが広がったね」というようにつないでいくと、子どもの気づきが広がり、深まります。
授業者も「気づいたこと」では、子どもが答えにくいことに気づいていました。私のアドバイスが参考になれば幸いです。
4年生の体育は、途中で雨が降ってきたので急遽体育館に移動しての授業でした。授業者は指示をしますが、子どもたちに確認をしていません。子どもは4隅に分かれて活動を始めるのですが、動きがバラバラです。素早くボールを取りに行くグループもありますが、なかなか動き始めないグループもあります。
ソフトバレーの練習をペアで行うのですが、目標が明確ではありません。また、子どもたちは互いに声をかけ合いません。目標がないまま活動をするので、一部の子どもはテンションが上がっていきます。本来この時間は陸上競技の練習だったのでしかたがない面もあるのですが、練習のポイントや目標、評価基準を明確にすることが大切です。
気になるグループのところへ指導に行きますが、体の向きが気になりました。体育館であれば、壁を背中にして体育館の中央に向かって指導するとよいでしょう。体育の授業は特に全体を見ることが大切になるからです。
また、体育の授業に限りませんが、「移動は走る」「集合したら整列して座り、口を閉じて教師を見る」といった基本となるルールは言わなくてもできるようにしておくことが大切です。指示に余分な言葉がなくなれば、簡潔になり徹底しやすくなります。
6年生の授業は社会科の明治時代のまとめでした。明治時代の人物へのインタビューにその人になったつもりで答えるのですが、子どもたちには難しかったようです。なかなか手がつきません。授業者も苦しんでいました。その人物がどんなことをしたかも確認はしていたようですが、インタビューに答えるのはそれほど簡単ではありません。その人物が行ったことだけではなく、だれ(何)のために、どうなることを願って行動したのかといったことを考えなければいけないからです。日ごろからそういう視点を持たせるような授業をしていないと、この時間だけでは考えられないのです。
個別に取り組む前に、インタビューに対してどんなことを答えればいいかという視点だけでも共有しておくと、手がつきやすくなると思います。また、グループで聞き合うということもこのような問題には有効だと思います。
授業はどうしても特定の子どもが中心となって進みます。人物は何人かあるので、一人目は無理でも、次の人物では書けるようにしようという発想もあります。「どうやって考えた?」と問いかけ、答ではなく視点を共有するのです。この問が難しいようであれば、答を発表させて、教師が「○○さんの答は、・・・というところがいいね」と評価することで視点を伝えるというやり方もあります。いずれにしても、こういったまとめの問題は総合的な力が要求されます。時間をかけて社会科的なものの見方・考え方を育てることが大切になります。
たくさんの授業を比較的時間をかけて見ることができました。また、多くの方が一緒に参観してくれました。どの先生もとても素直に話を聞いてくれます。昨年からの先生は確実に進歩しています。次回は2月に訪問予定です。新しい先生方もそれまでにきっと進歩してくれることでしょう。今からとても楽しみです。