日記

子どもたちや先生の姿から元気をもらう

公開日
2014/10/27
更新日
2014/10/27

仕事

授業アドバイスを始めて3年目の小学校を訪問しました。今年度2回目です。これまでは算数を中心に授業を参観してきましたが、今回は、他の教科の授業もいくつか見せていただけました。

5年生の授業は今年2年目の先生の算数の授業でした。
子どもたちは誰もがしっかりと集中しています。子どもの発言を問い返したり、ゆさぶったりするので、どの子どももしっかりと発言を聞いて考えようとしています。授業者の言葉が少ないことがとても印象的です。この授業でポイントとなることは何か、押さえるべき用語は何かをきちんと意識しているからできるのです。授業全体の雰囲気が他の若手の授業ととてもよく似ています。若手が互いに授業を見あって切磋琢磨していることがよくわかります。
まだ、挙手をする子どもが少ない場面ですぐに指名することがあります。挙手を増やすのか、挙手に頼らず指名していくのか、そういうことも考えて今以上に全員参加を目指してほしいと思います。

特別支援は校務主任が担当しています。2人の子どもに1年生の算数の足し算を教えていました。授業者は前を向いて2人の間に座っています。子どもに威圧感を与えないよう、寄り添うようにしているようです。子どもが落ち着いて考えられるように、自身のテンションを上げないようにコントロールしています。子どもたちは集中して取り組んでいます。指で計算しなくてもいいようにするため、小型のホワイトボードに数直線を書いたものを用意し、それを利用して計算をさせています。問題をやらせて、全問正解になっている状態で答え合わせをしました。今度は少しテンションを上げています。意欲を持たせるためでしょう。子どもたちに力をつけようといろいろと工夫しているのが印象的でした。

再任用の方の授業は4年生の理科の実験の授業でした。
落ち着いた口調で、ていねいに授業を進めていきますが、どうしても一方的にしゃべることが中心になります。子どもたちはよく聞いているのですが、受け身の時間が長くなるとどうしても集中力が切れてしまいます。
実験について、結果を想像するようにと言うのですが、疑問や課題と実験の関係が明確ではありません。この日は、気体の体積と温度との関係を知ることが課題ですが、そのためにどのような実験をすればいいかと考えるわけではありません。天下りで教科書の実験が出て来て、その結果を想像しようというのです。どうして、この実験で気体の体積の変化と温度の関係がわかるのかといったことは確認されません。子どもたちに何を根拠に何を考えさせるのかを明確にするよいと思いました。

1年生の道徳の授業は昨年異動してきた先生でした。
この1年でしっかりと子どもを受容できるようになっています。1年生としてはとてもよく集中できています。また、授業者は子どもたちにうなずいて反応するように指導していますが、子どもたちは無責任に反応しません。納得した時には大きくうなずきますし、そうでなければうなずきません。形式的にはなっていないのです。授業者がうなずいた子どもを指名することを知っているからです。また、先生に相手をしてほしくて、なかなか我慢できない子どもがいますが、決して否定せずに受け止めています。学級全体が落ち着いている理由がわかった気がします。
授業の内容は、自分が散らかしたものでなくても片づける友だちを見て不思議に思う主人公の話です。読み物ではなく絵をもとに考えさせます。主人公のせりふから気持ちを考えさせるので、不思議だと思う理由に意見が集中してしまいます。主人公が「不思議」と思っていることを押さえれば、今度は「あなたたちは、不思議だと思う?」と自分の問題として考えさせるとよかったと思います。不思議と思う子どもと、そうでない子どもの考えをつなぐことができて、早く考えが深まったと思います。

5年生の音楽の授業は、専科の先生でした。
前回の算数の研究授業でT2だった方です。最初授業を見た時、その時の先生だと気づきませんでした。実に落ち着いて、子どもたちをしっかり見ることができています。大きく成長していました。実物投影機でワークシートを映しながら、旋律の特徴を発表させます。子どもたちはしっかりと発表できるだけでなく、よく聞くこともできます。発表が終わると自然と拍手が起こりますが、拍手で認めることより、具体的にどこがよかったかを聞いてみるといいでしょう。この子どもたちならば、ちゃんと評価できると思います。また、発表を授業者がまとめていたのも残念です。「○○さんの考えを説明してくれる?」と子どもに問いかけてもよかったと思います。
確認のために子どもたちに歌わせる場面がありました。授業者は立ってピアノを演奏します。子どもたちの様子を見ようとしているのがよくわかります。子どもたちは座って歌っていたのですが、その姿勢が気になりました。顔を上げて胸を張って歌っている子どももいますし、机の上に譜面を置いて体が前にかがんで歌っている子どももいます。たとえ座っていても、歌う時には姿勢をよくさせたいものです。先ほど利用していた実物投影機で譜面を映して子どもたちの視線を上げるとよかったでしょう。
子どもが自分のワークシートを整理している時に、授業者が机間指導してここがいいと声をかけているのが気になりました。というのは、そのあとすぐにグループで相談するからです。自信がなくて話せない子どもかもしれませんが、この学級であれば子ども同士で聞き合うことができると思います。もし、自分の考えを言えていないようであれば、その時「○○さんのも聞いてみようよ」と働きかければいいのです。
子どもとのかかわり方に課題がありますが、わずかの間にずいぶん成長しているのにびっくりしました。先生方が互いによい影響を与え合っていることがよくわかります。

6年生の算数の授業は円の面積の公式を考える場面でした。最後の2分しか見ることができませんでしたが、板書を見れば進歩がよくわかります。最初に、この授業で必要となる考え方をきちんと復習しています。円を細かく切って組み合わせていくところで、子どもたちの言葉を拾っていたことがわかります。授業の流れがよくわかると同時に、子どもに意識させたいことが何かがよく整理されていました。次回はこの先生が授業研究を行いますので、じっくり見せていただきたいと思います。

授業研究は4年生の道徳でした。今年異動して来られた新任の教務主任とベテランの担任のTTでした。この日の授業は消防士の仕事を通じて公共の仕事に携わる人への感謝の気持ちを持つというものでした。
T1の教務主任と子どもたちはしっかり関係ができています。子どもたちをしっかり受容し、誰もが安心して答えられる雰囲気です。最初に自分たちの生活を支えてくれる人を子どもたちに聞きます。家族や交通ボランティアといった方が挙がります。ここで、この日の資料を配って範読します。子どもたちには読んでいるところを指で追わせます。中には先読みをしている子どももいます。
内容は、「消防署に病人から電話がかかるが、住所と名前を言うのがやっとで、確認しても地図にはその名前がなかった。救急隊員が1軒1軒確認していたところ、たまたま主人公がその人を知っていたので急いで案内をすることができた。あと30分遅れれば危ないところだった」というものです。
範読終了後、内容の確認とその時の主人公の気持ちの確認を行います。子どもたちは、国語の授業のように、本文のどこからそう言えるのかをしっかりと発表します。国語の授業で鍛えられていることがよくわかりますが、道徳ですので、読み取りがねらいではありません。
救急隊の人はすごいといった、当たり前のことが出てくるだけです。資料をもう一度確認することでかなりの時間を使いました。この後、担任が消防士さんからの「大変だが人々の役に立っている大切な仕事である」という手紙を読みます。しかし、4年生であればこのようなことは知っている子どもがほとんどでしょう。そこから深める時間はなく、最後に生活を支えてくれる人への感謝の気持ちを手紙に書いて終わりました。子どもたちが選んだ人は最初とあまり変わりません。書かれた文章も、この授業を受けなくても内容はあまり変わらなかったのではないかと思われるものでした。
この資料で何をねらうのか、授業者も明確にできていないので、子どもの心をゆさぶったり、考えを深めたりするための発問や活動が用意できていませんでした。主人公は、一生懸命に救急隊員を案内します。そこを意識するのなら「奉仕」を考える授業として、助けてもらった人の気持ちを取り上げるという進め方もあります。救急隊員だけでなく、主人公への感謝の気持ちから、子どもでも人のために役に立てることがあることを意識させ、人の役に立つために「どんなことをしているか?」「どんなことができるだろうか?」と問いかけるのです。
予定通り「感謝」をねらいとするのなら、ゆさぶることが必要でしょう。「危険だけれどなくてはならない仕事にどんなものがある?」「その仕事を自分がやりたいと思う人は○、そうでない人は×」と子どもの立場をはっきりさせ、その理由を聞きあい、時には「大けがするかもしれない、死んじゃうかもしれない。それでもやる?」とゆさぶり、自分たちの生活を支えてくれる人への感謝の気持ちを深める。こういった進め方です。

授業研究は、グループでの検討が中心でした。どのグループも授業規律や子どもたちとの人間関係のよさと展開がねらいに迫るものだったかという疑問が取り上げられていました。読み取り、確認の時間が長いという意見も出てきます。皆さん間違いのない視点で授業を見ています。
私からは、国語の読み取りにならないためにも、できるだけ素早く説明をして子どもたちに読み取らせるようにしたいことを説明し、具体例として私流の範読をお見せしました。途中で簡単な解説を入れたり、子どもに問いかけたりしながら読むことで、できるだけ素早く子どもたちに教材の世界に入ってもらうのです。その後の展開については、先ほどのゆさぶりを例に話させていただきました。

異動して来られた方や新人の方も、この学校の目指すものを理解して、子どもたちが笑顔で集中できる学級をつくっています。先生同士が互いに授業を見あったりして学び合っていることが大きな要素だと思います。子どもたちが集中して学習に取り組んでいるので、当然のことですが学力面でもよい結果が出ています。
この学校では多くのことを学ばせていただいていますが、それ以上に、子どもたちや先生の姿から元気をいただいています。この日も、この学校と出会えてよかったと思える1日でした。