日記

先生方の意欲を感じた研究発表会(長文)

公開日
2014/10/31
更新日
2014/11/04

仕事

昨日は、授業アドバイスをさせていただいている中学校の研究発表会でした。余分なセレモニーといったものはなく、2時間の授業公開で子どもたちの姿を見てもらうことが中心のものでした。30人近くの方が授業公開しました。

私は、できるだけ多くの先生方の授業を見させていただくようにしましたが、どうしても見ることができない方が出てしまい申し訳ないことをしてしまいました。
参加された方は、どの学級も子どもと先生方の関係がしっかりできていることを感じていただけたと思います。先生方が子ども受容することを大切にしてくれていることがよくわかります。また、以前と比べると2年生の姿がよくなっていることが印象に残りました。子どもたちに集中させることを学年全体で意識して取り組んできたのだと思います。面白いのが1年生です。テンションが上がりやすくなっています。授業を妨害するというようなものではなく、単純に行事等で子ども同士の関係がよくなって、ちょっとした時間の隙間におしゃべりをしてしまったりするようです。一つひとつの活動をきちんと終わらせてから次の活動に移る、きちんと全員が指示に従ったのを確認するといったことや、空白の時間をつくらないためにできた子どもへの次の指示を活動の前に示しておいたりすることが大切です。
また、全体的に子どもたちの活動に対して、その目標と評価の基準をはっきりさせることが必要だと感じました。グループ活動で、単に自分たちの考えを発表し合って終わってしまうような場面も目にしました。それと同時に大切になるのが課題です。子どもたちに何を考えさせたいのか、そのためにはどのような知識や情報が必要なのか、それは既習なのか未習なのか。こういったことを整理し、既習であれば復習をして確認をしておく。未習であれば教えるのか調べさせるのか判断する。こういう組み立て方を意識するとよいでしょう。
子どもたちを受容することはできているのですが、つなぐことの意識はまだ弱いように感じます。先生が受け止めてくれるので子どもがつぶやいたり私的に発言したりすることが目立ちます。こういった発言を受けて先生が説明を始めてしまう場面を多く目にしました。「○○さんが、いいこといったよ。みんなで聞こうか。○○さん聞かせてくれる」というように公的に発言させて、全員で子どもの言葉を共有することが大切です。これに限らず、子どもの言葉を受けてすぐに説明するのではなく、特に大切なことは同じ考えを何人も発言させるとよいでしょう。
指名を挙手に頼りすぎることも気になりました。質問してすぐに手が挙がった子どもだけを指名するのでは、わかった子ども、できる子どもしか参加できません。全員参加をもっと意識することが大切です。子どもが考えるように少し待つ。まわりと相談させる。こういった時間を取るようにしてほしいと思います。

発表会終了後、たくさんの方がアドバイスを聞きに来てくれました。
英語科の先生で、とても素晴らしい工夫を毎回見せてくれる方がいます。この日の授業も、子どもたちの笑顔がとても素晴らしいものでした。英語での対話を助けてくれるバディがいることで子どもたちが安心して授業に参加できています。授業の進め方がはっきりとわかっているので、次にどんな活動が来るか予想して授業を受けています。授業者が何人かとやり取りをしている場面でも、他の子どもは自分のこととしてとても集中して聞いています。次に自分たちが同じような活動をすることを知っているからです。以前にアドバイスをしたアイコンをもとに英文を作るといったことも、自分のやり方として消化できています。決まった言葉を言うのではなく、自分で言葉を選んで対話する場面でも、必要な単語を選べるように黒板に単語がたくさん残されています。困った子どもはそれを見て文をつくっていました。柔軟にアドバイスを受け入れ、そこに工夫を加えることで自分のスタイルができています。アドバイスをした私の方が学ぶことが多い授業になっています。
できる子どもは困っている子どもを助けることで満足していたのですが、2年生になってそれでは満足できなくなってきていることを課題として相談されました。レベルの高い課題だと思います。ベーシックな課題に足して挑戦の課題をつくることをアドバイスしました。例えば4文の会話にもう2文足すといったものです。活動が終わったあと、何組かに全体の場で発表させていますが、最後に挑戦の課題を上手くやれた人をグループで推薦してもらうのです。自分で手を挙げるより、仲間に推薦してもらう方が人間関係にはプラスです。こうすることで、できる子どもたちに活躍する機会を与えるのです。
1年生を担当している英語の先生で、グループ活動中に個別にアドバイスをしていた方がいらっしゃいました。死角にいるグループのテンションが上がっているのが気になります。グループ活動中は、常に全体の様子を見ることが大切です。この学年は特にそのことに注意する必要があることをお伝えしました。
一つひとつの活動で、この場面で子どもにどうあってほしいかを意識していないと感じる授業がありました。誰かが答を言ってくれればいいのか、それとも全員が言えることを求めているのかといったことがよくわからないのです。本人が意識しなければ、漫然と活動して終わってしまいます。このことをお話しました。
この日見た英語の授業で共通していたのは、練習の例文のコントラストが大きすぎることでした。”A book is on the table.”の次に、”A pen is by the desk.” というように変化するものが多すぎるのです。いろいろな前置詞を学習させるのであれば、”A book is on the table.”、 ”A book is by the table.”、 ”A book is under the table.” というようします。”on” の意味を学習するのであれば、”A book is on the table.”、 ”A book is on the wall.”、”A book is on the ceiling.” と実際に本をテーブルや壁にくっつけるとよいでしょう(天井につけるのは難しいでしょうが・・・)。こういった練習を何度も繰り返して定着させてから、応用的な練習をするようにしないと、わからない子どもはコントラストが大きいとよくわからなくなるのです。

数学科の先生方は独自の導入や、課題を工夫されていました。
関数で変域を負の領域に拡張する問題で、速度が一定の飛行機の進んだ距離を扱いました。ここで飛行時間と飛行距離の関係が比例であることを、表を使ったりして確認しています。比例になる理由を説明させますが、これは結構難しいのです。表をみると比例の関係になっているというのは数学的に正しい説明ではありません。分速が14km/mだからという説明も言葉不足です。教科書では、例えば紙の重さと枚数は比例の関係にあるというように比例関係を前提として問題がつくられていることがほとんどです。身の回りのある事情が比例の関係にあることを証明(説明)することはとても難しいので、比例であることを前提に論を進めるのです。ばねの長さとおもり、温度と音の速さなどが題材として取り上げられる理由は、そこにあるのです。この場合であれば、速さの定義は「進んだ距離/かかった時間」で、一定の速さで飛ぶから、この値が一定となる。2つの変量の比が常に一定なるものは比例である。だから飛行時間と飛行距離の関係は比例になるといった説明でなければなりません。このことに時間をかけるのがこの時間のねらいではありません。負の変域を考えるのがねらいなので、最初から比例関係だと明らかなものを例にするか、比例と言いきってしまって進めることが必要なのです。
似たようなことが他の授業でもありました。行列のできる理由を子どもたちから出させるのですが、テンションが上がってしまいます。ここで根拠を持って考えることはできないので、思いついた理由を勝手にしゃべるからです。行動心理的な問題を扱うのならまだしも、数学の課題の導入です。興味を引き付けた後はできるだけ早くこの日の課題に取りかかる必要があります。授業者は、子どもに意見を言わせた後、自分で「時間と人数」の関係が決め手にとなると結論を出してしまいました。最後は先生が結論を出すのであれば子どもは自分たちが意見を出したことは何だったかわかりません。意見を出させるのであれば、自分たちで考えて、納得できる結論を導き出させることが大切です。そうでないと、先生が求める答探しをし出すのです。
多角形の内角の和を求めることを課題に、子どもたちにグループでいろいろな考えを出させ○○法と名前をつけさせる活動をしている授業がありました。子どもたちは、四角形に分けたりする方法など、とにかくいろいろな方法を考えています。目標がいろいろな方法を考えることになっています。拡散させるのはいいのですが、授業者は収束させる方法を考えていません。これらをすべて取り上げようとすれば、時間が足りなくなるのは必至です。この日の授業の目標はn角形の内角の和の公式を見つけることです。であれば、早い時点で子どもたちが書いた多角形の分割の図だけをすべて黒板に貼りだし、いろいろな考え方の図を共有し、子どもたちにどの図を使うか選ばせて、公式をつくらせるといった活動をするとよいでしょう。1つできたら、他の図に挑戦するようにします。こうすることで、子どもたちの考えは収束していきますし、その図を選んだ理由を聞くことで、数学的な発想を評価することもできます。ただ活発に活動させることを願って課題をつくってはいけないのです。
料金体系が違う2つの宅急便でどちらが安いかを考える課題に取り組んでいる授業がありました。階段関数をグラフ化する必然性を与え、グラフを活用することを通じてそのよさを理解させることがねらいだと思います。重さによってどちらが安いか変わるので、単純にはこちらが安いとは言えません。課題をもう少し工夫する必要があります。出荷担当者となって、どの業者を選ぶかのルールをつくるといったものにするとよいでしょう。荷物を分割したりまとめたりする方が安くなるような場合を組み込むと、さらに面白い課題になると思います。
どの先生も、課題を工夫していました。だからこそ、この単元で何がねらいなのか、数学的に大切なものは何かをしっかりと教材研究する必要があります。教材研究の大切さをわかっていただければと思います。

理科では面白い課題を考えている授業がありました。2種類の気体を分離する実験方法を考えるというものです。子どもたちは意欲的に取り組んでいましたが、順調にゴールに向かっているグループと手詰まりになっているグループがありました。授業者は個別にグループを回りアドバイスをしていました。活動が止まっているグループにとっては苦しい時間が過ぎていきます。こういった場合は途中でいったん止めて、困っていることを共有するといいでしょう。どこで困っているかを聞き、そこをクリアしているグループには、答ではなく「どんなことを話した?考えた?」といったことを聞くのです。友だちの発言からヒントを得て再び動き出すようになります。上手い考えが子どもたちから出てこなければ、個別ではなく、このような全体での場面でアドバイスとなるような言葉を投げかければいいのです。このようなことを伝えました。とても意欲的に課題を工夫しています。グループの中だけでなくグループ間をつなぐことを意識すると課題の工夫がより生きると思います。
1年生で実験に取り組んでいる授業では、やはり子どものテンションが上がり気味なのが気になります。みんなで取り組んでいるのですが、実験をすることが目的化しているのでテンションが上がり気味になるのです。実験の結果を全員に予想させるなど、結果に興味を持たせるような工夫をすることが必要です。目標を明確にすることがここでも大切になるのです。

体育の若手の教師の授業は片付けしか見ることができませんでした。そこで今どのようなことが課題となっているのか聞いてみました。ダンスの授業で友だちの発表を見てよかったことを話し合ったり、アドバイスをしたりする活動をさせているのですが、どうもうまくいかないようです。最初は演技を見て話し合わせたのですが、なかなか話すことができません。そこで、今度はメモをさせることにしました。ところが子どもはメモ用紙を床に置いて書くために、書いている間は演技を見逃してしまいます。これではいけないということで、板を用意して視線を大きく動かさないで書けるようにしました。指先や、姿勢といった見る視点も与えておいたのですが、子どもたちからは「姿勢がよかった」といった漠然とした言葉しか出てこないので困っているというのです。
子どもたちに対して目指す姿がとてもはっきりしています。そのため、実際の姿とのずれを何とか修正しようと工夫をしています。とても素晴らしい姿勢です。成長していることをとてもうれしく思いました。
問題は、具体的にどのようなことを伝えればいいのか、アドバイスすればいいのか子どもたちに明確になっていないことです。大きく2つのアプローチがあります。1つは、活動の最後に、子どもたちの中から出てきたよい意見を紹介して、価値づけをするのです。教師が拾う方法もありますし、「参考になった意見を聞かせて」と子どもたちに価値づけさせる方法もあります。時間をかけて育てる方法です。もう1つは、事前に見方を全体で共有する方法です。1グループに少し実演してもらい、その場で子どもたちに意見を言わせるのです。「姿勢がいい」と言えば、「それってどういうこと?」と聞き返す、他の子どもに「あなたは今の意見に納得する?」「姿勢について、もう少し聞かせてくれる?」と子ども同士をつなぎながら、視点を具体的に共有するのです。この2つを組み合わせてもいいでしょう。
自分で課題を持って授業に取り組んでいます。これからの成長が楽しみです。

まだまだたくさんの人がアドバイスを待っていてくれたようなのですが、時間の関係でここまでとなりました。本日開かれる懇親会に私も参加させていただけるので、その場でお話しさせていただきたいと思っています。
そこでの話は、次回の日記で。