日記

課題が明確で学びが多かった研修会

公開日
2014/11/17
更新日
2014/11/17

仕事

市の授業力向上研修会でアドバイスを行ってきました。夏休みに行なった研修での模擬授業の本番です。指導案がどのように変わっているのか、子どもたちの反応はどうか、楽しみにして参加しました。

中学校3年生の理科で、流星群が毎年同じ時期にやってくることを考える授業でした。
子どもたちの表情がとてもよいことが印象的でした。この学級に限らず廊下で出会った子どもたちの挨拶と表情はとても素晴らしいと感じました。学校全体がよい状態にあるようです。
これまでにどのような学習をしてきたか復習をします。子どもたちは全員が手を挙げました。指名した子どもが答えると、パソコンに打ち込みディスプレイに残します。子どもに発言させるのですが、出てきた用語については授業者が説明します。これだけ挙手しているのですから、子どもに説明させたり、まわりと確認したりして、もっと子どもに活動させてもよかったと思います。子どもたちがよく聞いてくれるので、どうしても教師のしゃべりが多くなります。

この日の課題である流れ星をディスプレイで見せます。瞬間的なので見落とした子どももいます。どこで光ったかを見えた子どもに確認して、そこを見るようにと言って再度見せました。何気ない対応ですが、とても大切なことです。観察や実験は自分の目で見ることが大切です。見えなかった者にも自分の目で確認する機会を与えることが必要です。授業者は流れ星の正体を宇宙の「塵」だと言って説明します。知識ですのでムダな問答は避けて説明しました。よい判断です。塵が地球の引力に引かれて落ちてくることを地球の模型と塵に見立てたプラスチックを使って説明し、塵が引かれた先に何があるかを問いかけます。前時までに惑星についてグループごとに学習して発表しています。子どもたちが知っているはずの知識です。しかし、数人しか挙手しません。指名された子どもは「磁場」と答えました。授業者は「もちろんあるけど」と他の答を求めます。子どもからすると、これは教師の求める答ではなかったと感じます。ここは、「そうだね。磁場があるね。よく覚えていたね」と認め、他に挙手している子どもに「同じ?」と問いかけるといった対応がよいでしょう。ここで、ノートを見ている子どもが増えました。よいことなのですから、挙手していなくても「ノートを見ているね、いいね。何が書いてあった?」と問いかけて認めることで、よい行動を広げるようにしたいところです。
「大気」が子どもから出てきたところで、流れ星が光るのは塵と大気がぶつかって起こる現象だと伝え、黒板に図を描いてまとめました。子どもたちは、授業者の指示がなくても板書をすぐに写します。この知識そのものはそれほど大切なことではありません。この日の課題を考えるための手掛かりです。自分の手でノートに写す意味はあまりありません。板書も図を手で描くので時間がかかっています。あらかじめ用意しておいたものをディスプレイに映して時間を節約したかったところです。
ふたご座流星群をディスプレイで見せて、この流星群が現れた時期を数年にわたって示し、予測できそうなことに気づかせます。そこで、この日の課題である、「流星群が毎年同じ時期に発生するのはなぜか?」と「たくさん見えるのはなぜか?」が示されました。ここまでに、授業時間の半分ほどを使っています。以前の指導案と比べてずいぶん簡略されていましたが、まだムダが多いようです。この課題の解決に必要な情報は、流れ星の正体が宇宙にある「塵」であることと、それが地球の引力に引かれて大気とぶつかって光ることです。先ほど述べたようにICTを活用したり、説明をまとめたものを課題提示の後に配ったりすることで時間をもっと節約できたと思います。

個人で考えをまとめさせた後に、グループで考えさせます。子どもたちの関係がよいのでしょう。個人でと言われても、自然にまわりに相談する子どもがいます。グループ活動に移ってから、子どもたちから最初に出させてまとめた、これまで学習した知識をディスプレイに映します。「困ったら画面を見るように」とヒントを出します。ヒントをディスプレイに提示するのはいいのですが、活動中に示すよりは、活動の前に整理しておくとよかったでしょう。また、根拠となるものがディスプレイと黒板に分かれていたので、「みんなが根拠として使える知識は」と、最初の復習と今日学習した流れ星に関する知識を同時に表示して根拠となる材料をまとめて見られるようにするとよかったと思います。
グループになると子どもの活性度が上がりました。個人ではなかなか考えをまとめることができなかったことと、子ども同士の関係がよいからでしょう。しかし、テンションが高めです。何となく思いついたことを話すのですが、根拠を持って説明ができていないようです。いくつかのグループは以前に学習した彗星にこだわっているようでした。子どもたちは、「塵」の正体がとても小さいものであるといった、流れ星の情報をあまり意識した話し合いをしていませんでした。ディスプレイと板書に情報が分かれていたことと無関係ではないように思います。根拠となる情報が多いので、議論が拡散していきます。地球や塵の模型も与えるのですが、考えを絞り切れません。

時間がきて発表です。各グループの考えを書いたパネルを黒板に貼って、子どもたちを前に集合させます。距離が近いので子ども同士がかかわりやすくなります。その場で指名して考えを発表させます。小惑星が引力でぶつかってできた塵が地球に引き寄せられるという考えが出てきます。説明したのがよくできる子どもだったので子どもたちはゆさぶられます。しかし言っていることがよくわかりません。授業者が補足して、次のグループに発表させます。時間がないために、一つひとつの発表について、納得したかどうか深く検討できません。「彗星が毎年同じ時期に近づく」というように、いろいろな考えが出てきます。全部のグループに発表させる時間がなくなりました。結論は、次回ということになったのですが、子どもたちは早く知りたそうでした。

モデルを考える時には、そのモデルで何を説明できる必要があるかを明確にしなければいけません。今回であれば、「毎年同じ時期」「たくさんの流れ星」を説明できることです。「毎年同じ時期であることが納得できた?」「流れ星がたくさんできることは?」と子どもたちの説明に問い返すことが必要です。そうすることで、考えを整理でき議論を焦点化できます。他のグループの発表に対して子どもたちはいろいろと考えているようでしたが、自分でも整理できていないのでなかなか言葉になりませんでした。多様な考えが出て来て非常に面白かったのですが、時間がないためここで終わったのは残念でした。

授業検討は3つのグループに分かれて行いました。子どもたちを中心に見てもらっていたのですが、議論はどのグループもほぼ同じところに集約されました。復習した内容が多かったため、子どもたちが手掛かりを絞り切れなかったことです。小学校の先生が多いこともあり、今回の授業で必要な内容に絞って復習すれば見通しを持ちやすかったのではないかという意見が多く出ました。皆さんよく子どもたちの状況を把握しています。対応策もその通りだと思います。しかし、授業者はあえていろいろな知識から必要な情報を選んで課題を解決してほしいと思ったのです。この情報選択能力も大切な能力です。中学校の3年生であれば、これもねらいとしては妥当だと思います。では、どうすればよかったのでしょうか?方法の一つは、一度中間で発表させて議論を焦点化させることです。途中で発表させた後、「同じ時期」「たくさん」に注目して、「小惑星がぶつかって塵ができたらたくさんできそうだけど、毎年同じ時期に流星が見える?」「彗星と地球が毎年同じ時期に出会うなら、彗星の公転周期はどうなる?」といった疑問を子どもから引き出します。いろいろな考えに出会わせてからもう一度グループで考えさせるのです。考えを整理できない時は、全体で発表できなくても、グループでは相談できます。グル—で考えを整理し深めることができるのです。そのためには、導入と課題設定までの時間を極力短くする必要があります。グループ活動は、1度発表して全体で追究して終わりではなく、もう1度戻す時間を確保することも考えておく必要があります。
授業者は、次の時間各グループの発表をもとにもう1度考えさせたいと言ってくれました。子どもたちの考えがどう深まるか楽しみです。

指導案を見る限り、夏の模擬授業と比べてあまり変わっていないようでしたが、ムダを省き、教えることと考えさせたいことがずいぶん整理されていました。他の学級で授業をしたフィードバックも入っているのでしょう。そのおかげで今回の授業の課題がとても明確になったと思います。授業検討も質の高いものだったと思います。
私にとってもとても楽しく、考えること、学ぶことの多かった研修でした。
この授業力向上研修会は来年度も継続されるようです。どのような先生方と出会えるか、今からとても楽しみです。