日記

若手の授業で考える

公開日
2014/11/18
更新日
2014/11/18

仕事

小学校で授業アドバイスを行ってきました。3週間前に引き続き2回目の訪問です。体育の授業研究と前回見た2人の授業の参観でした。

1年生の授業は国語です。前回訪問から日が浅いのですから大きな変化は望めません。というか、期間というよりも、前回の私の指摘を含めやらなければいけないと思うことが頭の中で整理できていないことが問題と感じました。子どもをほめる、受容することをしたり、指示を徹底させようとしたりする場面があるのですが、それが一過性に終わってしまうのです。笑顔をつくることや子どもたちを見ることをしても、次の場面ではそれを忘れてしまいます。授業を進めることで手一杯で、視線が指導書からなかなか離れません。意識することを絞って、まずはそれを徹底することから始めることが必要でしょう。
「かばんのなかにかばがいる」というように言葉の中に隠れた言葉を探すのですが、教科書の問題には、「○○がいる」と「○○がある」となっているものが混じっています。授業者はこのことに触れずに子どもたち取り組ませます。「いる」と「ある」の違いに頓着しない子どもと、意識する子どもがいます。授業者は、「いる」「ある」という言葉を無視し、隠れている言葉だけを発表させていきます。その後で、「いる」と「ある」の違いについて考えさせますが、そうであれば、教科書をそのまま使ってはいけません。意識しなかった子どもは、最初は正解だと思っていたのに、あとから不正解になってしまい、釈然としないことになります。言葉だけを書いたワークシートか黒板で取り組ませるとよかったでしょう。
授業の構成が、教師の都合で考えられています。子どもの目線で課題や活動を見直す必要があります。教材研究では、子どもはどう思うか、子どもはどんな反応をするかを想像するようにしてほしいと思います。

3年生の国語は、同じ音の言葉を漢字で書くことで状況を明確にできることの学習でした。前回見たように、授業規律や指示の出し方には素晴らしいものがあります。
子どもの発表場面では、しっかりと受容して何人も指名するのですが、その言葉を他の子どもにつなぐことはまだできません。授業者が納得すればそれでよいと子どもが思っています。友だちに伝えようとするのではなく、先生にわかってもらおうとしています。
私たちが見た場面は、同じ読みをする漢字を区別がつくように伝える場面でした。「はっぱの葉」「はごいたの羽」に続いて「ひにあたるのひ」と答えた子どもがいました。授業者は「火」も「陽」も使えるから「ひにあたるではわかりません」と優しく言いました。しかし、言い方が優しくても否定は否定です。発言した子どもは場面が変わるまで下を向いていました。こういう場合は、授業者が判断するのではなく、「どう、どんな漢字かわかるかな?」と他の子どもたちに問い返し、これではわからないことを指摘させてから「区別がつかないって。どう言えば、区別ができるかな?」と本人に修正させるのです。そうすれば、決して否定された気持ちにはなりません。
授業の前半では、「人形に、はながついている」という表記では「花」のことか「鼻」のことかよくわからないが、漢字を使えば区別がはっきりつくことを学習しています。今度はどのように表現すれば、区別がつくかを考えます。「顔にある鼻」「髪の毛に花をつける」といった言葉を子どもたちから出させました。ねらいが、漢字を使うよさから、どの漢字なのかの伝え方、情報を付加することで正しく伝えることに変わっていきました。漢字は音だけでなく意味があるのでよく伝わることと、情報を付け加えて正しく伝えることの2つのことが同じ「人形のはな」を使って学習しています。ねらいの違いが明確になっていいなかったので、子どもたちは今何を学習しているのかよくわからなかったように思いました。授業者としては、このあと同じ読みの漢字を調べさせて、次時に正しい漢字を入れるクイズをつくらせるので、そのための布石と考えていたようですが、それならそれで、そのことをはっきりさせて見通しを持たせた方がよかったと思います。
同じ読みの漢字調べは、教科書についている漢字の一覧を使っても、漢字字典を使ってもよかったのですが、ほとんどの子どもは漢字字典を使っていませんでした。せっかくですから、試しに1回漢字字典を全体で使ってから課題に取り組ませてもよかっと思います。漢字字典はどのようなことに役に立つか、そのよさを共有したいところでした。活動の後、いくつ見つけたか数を確認し、たくさん見つけた子どもに拍手をします。しかし、活動の前に目標は明確にされていません。中には、1つの読みに対して異なる漢字をたくさん見つけようとした子どももいるでしょう。いろいろな観点で評価することを含め、目標や評価の基準を明確にしてから活動させたいところでした。
2年目の先生ですが、基本がかなりできています。だからこそ、課題もたくさん浮かび上がります。前向きに一つひとつ課題をクリアしていってほしいと思います。

授業研究は5年生の体育の授業でした。短距離走でリレーのタッチの練習が活動の中心でした。
子どもたちは走って集合ができます。授業規律がきちんとしているようですが、話をしている時に顔が上がらない子どもがいることが気になります。授業者は一連の指示をしても確認をしません。ちゃんと聞かなくてもまわりを見て行動すれば何とかなるのでしょう。そのせいもあってか、単純な集合の時には走って移動するのですが、何かを取ってくるというように移動以外にいくつかの指示が組み合わさると走らない子どもが目につきます。子どもが指示を実行することで手一杯になっているのでしょう。指示した後に「今から何をするか、言ってくれるかな?」と指名をし、もし言えなければ他の子どもに説明させてから、もう一度確認するといったことが必要になります。頭の中に次の行動がはっきり意識できていれば、走って移動することに気がつくと思います。
3秒と時間決めて、自分がゴールできそうなギリギリまでスタート位置を下げて走る。腕を大きく振って走る。足を高く上げて走るといった、バリエーション豊富なウォームアップをします。子どもたちは意欲的に取り組みますが、友だちの走っているところを見ている子どもはあまりいません。活動そのものが目的化しているので、その目標や評価がはっきせず、自分の順番でない時の役割がはっきりしていないのです。授業者は、「○○さん腕の振りがいいよ」と評価していますが、本人は全力疾走しているので、なかなか伝わりません。観点を明確にして子ども同士で評価し合うことでちゃんと伝わりますし、自分が走る時にもポイントを意識できます。また授業者は、どうしても走っている子どもに目がいきますので、待っている時の子どもの様子まではなかなか把握できていません。順番を待っている時の様子も評価したいところです。
バトンタッチの練習はチームごとに前の走者がどこまで近づいたらスタートすればよいかを見つける活動です。スタートする目安のマークを調整しながら互いの速度をバトンゾーンの中で合わせる練習をします。子どもたちはスタートの位置ばかりに気がいっています。絶対的な速度差があるため、ギリギリまで待っても瞬間的に置いて行かれ、上手くタッチできないペアもあります。腕を振って走るので、後ろの走者が手を伸ばしているのに腕が逃げてタッチできないペアもあります。しかし、なかなか修正することができません。友だちの走りに意見を言う子どもと何も言わずにぼうっとしている子どもがいます。見ている時の役割が明確ではないのです。
授業者はチームの中に入って指導をしたりしていますが、全体の課題に気づけていません。活動を一度止め、困っていることを共有させて、どうすればいいか考える時間を与える必要があったと思います。上手くいっていないペアと上手くいっているペアを比較させたりして、どこを改善したらいいか意見を出し合うといった活動です。また、一連のウォームアップとバトンタッチの練習との関連をはっきりさせておくとよかったでしょう。その場で高速で足踏みをしてダッシュすることが、遅い相手にスピードを合わせてもすぐにトップスピードにもっていけることにつながるとを知っていれば、自分たちで修正することができます。走る順番は子どもたちで決めていましたが、どういう順番にすればいいのかも共有しておく必要があったでしょう。子どもたちが考えるための材料を意識しておくことが大切なのです。
最後に目標タイムを意識してチームごとに順番に走ります。タイムは結果なので、何に注意すればいいのかの確認が必要です。子どもたちはこの日練習したタッチ以外はあまり意識していなかったようです。走り終わった子どもたちがリラックスしています。中には、マーク用のコーンで遊んでいる子どももいます。友だちのチームの走りを見ていません。こういった場面では、他のチームのタイムアップのためにどんなアドバイスをすればいいのかを考えさせるといったことが必要なのです。コーナーで体が外に振られている。トップスピードでのタッチを意識すぎて、タッチが終わった時にはすぐにコーナーが近づいてしまい、大きく膨らんでしまっている。改善点がたくさん見つかるはずです。こういう子ども同士がかかわり合えるような課題を、見ている子どもに与えることが体育では大切なのです。

全体に対しては、考えるための材料、知識を意識することを中心にアドバイスさせていただきました。その知識を「教えるのか」「調べさせるのか」「復習するのか」と、考えるための足場をどのようにしてつくるのかを考えておくことが必要です。また、活動中に子どもの差が広がっていきます。途中で困っていることを共有して、全体で解決する時間を取ることも有効です。スモールステップを意識しながら、少し高いところに足場をそろえるのです。

この2回の訪問では若手の授業しか見なかったので、私のアドバイスがこの学校全体に対して有効なものであったかは確信が持てません。しかし、多くの先生方がしっかり聞いてくださっていました。何か1つでも参考になるものがあれば幸いです。
今回も若手の授業からたくさんのことを考え学ぶことができました。ありがとうございました。