日記

中学校長会で講演

公開日
2014/12/03
更新日
2014/12/03

仕事

市立中学校の校長会で「みんなが元気になる学校づくり」と題した講演を行いました。校長がどのような動きや仕掛けをすると学校が元気になるかということを具体的な事例をもとにお話しさせていただきました。

あたりまえのことですが、校長の仕事の第一は学校として何を目指していくのかをできるだけ具体的にすることです。「自ら進んで学ぶ子」というような抽象的な表現ではなく、「わからないときに、教えてと聞ける子」というような具体的に評価しやすい行動で表現することが大切です。また、こういう目指す子どもの姿が校内の誰に聞いてもぶれることがないことも大切です。機会を見ては校長が発信し続けることを意識してほしいと思います。
学校ホームページは校長が発信するための大きな武器となります。外向きだけでなく先生方に対しても校長が目指すものを伝える有効な手段です。目指す子どもの具体的な姿や学校のよい取り組みを発信することは、先生方にどのような子どもを育ててほしいかを伝えると同時に、こういうことをしてほしいというよい意味でのプレッシャーを与えることになります。

学校がよい方向に変わる条件として、「戦略性がある」「授業を大切にしている」「管理職・主任が授業をたくさん見ている」「同僚性がある」が挙げられます。何を変えるか、どこから始めるかというゴールとステップが明確であること。子どもたちが過ごす時間の大半を占める授業を大切にし、そこで生活指導や人間関係づくりをすること。学校の授業の実態を把握し、具体的な場面で先生方に寄り添って指導すること。先生方を孤立させないように、互いに支え合い、相談し合い、一緒に考え合える人間関係をつくること。こういうことが大切です。
特に若手を育てるためには、以前のように「自分で盗みなさい」ではうまくいきません。管理職や主任の働きかけが大切になります。個別に対応するのか、小グループで育てるのか。小グループは若手だけなのか、ベテランも加えるのか。いくつかのやり方がありますが、どれが正解というわけではありません。学校規模や人事構成によって適切な方法は違ってくるのです。大切にしてほしいことは、メンタルケアです。一緒に考える仲間、寄り添ってくれる先輩、見守ってくれる管理職の存在が必要です。そして、言葉で言ってもなかなか伝わりませんから、実際の場面を見せてあげることも必要です。グループで指導案を検討し、授業研究を行うといった方法は、主体的に考えた授業を客観的に見ることができるので有効な方法の一つです。また、先生方もある意味子どもと同じです。成果を認めてほめることが大切です。しかし、必ずしも結果がすぐに出てくるわけではありません。取り組もうとしている意欲を認めてはげますことも校長の大切な仕事です。
ベテランを変えることはとても難しいと感じている方が多いと思います。確かに、長年やってきたことを変えさえようとしても抵抗があります。しかし、ちょっとしたきっかけで大きく変わるのもベテランです。自信を持っているベテランばかりではありません。ベテランであるが故に、授業はうまくなければいけない、指導ができなければいけないというプレッシャーがあります。自分の課題を指摘されることに若者以上に過敏な方もたくさんいるのです。ベテランには直接指導するのではなく、他の先生の授業を見せることが効果的です。他の先生の授業の課題に気づくことで、自分の授業を振り返ることができるからです。また、ベテランに変わってほしい時は、まずベテランのよいところを認めてほめることが大切です。その上で、新しいことに挑戦しましょうと次のステップを提示するのです。「新しいこと」「挑戦」という言葉を使って、欠点の改善ではなくレベルアップという肯定的なイメージで前向きになってもらうのです。「上手くいかなければまた以前のようにやれば大丈夫ですから」と失うものがないことを伝えておくのもよいでしょう。もともと、若手と違って基本的な力はあるのですから、新しいやり方を上手く取り入れることができれば素早く変化するのです。

こういった学校の取り組みを支える要は教務主任です。校長が直接指導するとある意味命令になってしまいます。そこで教務主任の出番です。教務主任が上手く機能するためには、校長が目指しているものをきちんと伝えることが大切です。言葉で伝えるだけでなく、一緒に学校を回り、授業を見ながら感想を言い合うといったことも理解してもらう一つの方法です。そして、教務主任には若手に寄り添う、支えることを求めます。学級の問題や授業に関してこうしなさいと指導するのではなく、どうしたらいいだろうか一緒に考える姿勢を持ってもらうのです。規模の大きい中学校などでは、この役割の一部を学年主任に求めることになるかもしれません。校長は、教務主任や学年主任に対して、どのような役割を求めているかをしっかり伝えることが必要です。

時間の関係で地域とのかかわりについてあまりお話はできませんでしたが、学校のことをまずよく知ってもらうことと、相談する姿勢が大切であることをお伝えしました。「○○してください」「手伝ってください」とお願いするのではなく、「○○について困っています」といった本当のことを伝え、どうすればいいのか一緒に考えてくださいと相談するのです。学校に対する要望については、真摯に受け止めていることを伝えることが大切です。結論に時間がかかるのであれば、いつまでに出すと伝える。要望に応えられなければその理由をていねいに説明する。こういうことが学校に対する信頼につながり、一緒に子どもを育てるという関係を構築することになるのです。

どなたもとても熱心に話を聞いていただけました。明日から早速やってみたいことが見つかったという言葉をいただけたことをとてもうれしく思いました。みなさんにとっても何か一つでも得るものがあったのであれば幸いです。